炎のように

碧月 晶

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229.暖かいもの

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気持ち悪くて、不快で、怖い
あの感覚を思い出したくなくて

「…っ、……!落ち…け!……!!」

何も見えない世界で、誰かが俺の上に覆い被さってきた。

何も映らない視界で、誰なのか分からない不安と
思い出してしまった記憶と混同して
ただただ怖かった。

「ア…!俺…!………だ!」

途切れ途切れに聞こえる誰かの声はハッキリと聞こえなくて
聞こうとしても、頭の中でアイツの声が邪魔をする。


やだ
いやだ
たすけて
助けて


ヴァン…


『ヴァン…どこ…?…ヴァン…』


もう自分が声を出しているのかさえ分からない。
もしかしたら、何も発していないのかもしれない。
でも、必死に口をそう動かした。

目を開けているはずなのに、何も見えない。


こわい
こわいよ
ヴァンどこ?


『ヴァン…』


どこにいるの?


そう形作ろうとした口は、突然暖かいものに包まれた。
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