Estrella

碧月 晶

文字の大きさ
上 下
132 / 179

9

しおりを挟む

「………」


…何だよ、その目は。
言いたい事があるならハッキリ言ったらどうなんだ。

つーか視線がな、痛い。超痛ぇ
目から何か出てんじゃねえのってくらいに。


「お待たせ~、お茶入ったよー。…なんで二人して見つめ合ってるの?」
「ちゃう。どこ見とんねん」


右に同じく。
お前の目は節穴か。


今だけは揃った意見を癪(しゃく)に思いながら、やっと視線を外せると

テーブルの上に置かれたものに目を向ける。


「今ね、緑茶にハマってて。那月君緑茶好き?」
「別に嫌いじゃない」


寧ろ口にする機会は多いな。
ああいう家だからかは分からないが、悠貴さんがよく淹れてくれる。


「そっか、良かった」


コポコポと急須(きゅうす)から湯飲みに手際よく注いでいく。


「はい。お茶請けもあるからね!」
「あ、ああ…」


返事をしながら、とりあえず湯飲みに口を付ける。


「…うまい」


その美味しさに、思わず感想が口をついて出てしまった。


「ふふ、ありがと~。お煎餅も食べて食べて!ここの美味しんだよ」


おお、確かにこれは旨(うま)いな。


醤油の焦がし風味とこの程よく歯応えのある食感

そこへまた緑茶を流し込むと、何杯でも何枚でもいけそうだ。





「…おい、何イチャコラしとんねん」


………………………あ。


如何にも不機嫌ですという声に、俺は漸くソイツの存在を忘れていた事を思い出したのだった。
しおりを挟む

処理中です...