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92.親心 sideルカ
しおりを挟む「お姫様は寝ちゃった?」
漸く扱えるようになったのか、手綱を引いてテオが横に並ぶ。
「ああ」
テオからアメの寝顔を隠すようにそれとなくフードを被り直させる。
…ん?姫?まさかアメの事か?
アメに聞かれていたら間違いなく殺されていたであろう呼び名。命拾いしたなと心底思う。
「聞かれてなきゃ大丈夫でしょ」
「人が嫌がる事はするものじゃない」
「はいはい。さすがご立派な勇者サマは言う事が違うねえ」
おどけたようにテオは大袈裟に肩をすくめてみせる。
「でもさ、どっからどう見てもお姫様を守るナイトにしか見えないぜ?」
「アメは男だ」
「いやそれは分かってるよ。そうじゃなくて例えだよ。た・と・え」
ちっちっちっと指を動かすテオを一瞥して、視線を戻す。
「私はナイトではない。だが、私はこの子ととある約束をした」
「その約束にアメくんを甘やかすってのも入ってんの?」
「いや」
「じゃあアンタの独断って訳だ」
腕の中で寝息を立てる存在。知らず、目を細めた。
「そうだな。私の意思で勝手にしている」
「何?そんなに美味しい条件だったの?」
興味津々といった様子で身を乗り出すテオに苦笑する。
魅力的な儲け話だとでも思ったのだろう。期待外れで申し訳ない。
「金銭ではないんだ。ただ…私の我が儘にこの子が付き合ってくれているだけだ」
これは私とアメだけの関係だ。儲けられるとか、そういう損得の話ではない。
テオの言う『甘やかす』という私の勝手な行為がもしアメのためになっているのなら、そして私に甘えてくれているのなら嬉しく思う。
「は?金じゃない?分っかんないなぁ。一文も得にならないのにそこまでしてやれるとか」
「そうか?」
「そんなもんは親ぐらいなもんだろ」
そうなのか…。
感慨深げに顎に手を当てて考え込むルカは、隣で怪訝な顔をしているテオに気が付いていなかった。
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