チート魔王はつまらない。

碧月 晶

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106.通信 sideアメ

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俺は今不機嫌である。

非っっ常に、不機嫌である。

 
え?どれくらい不機嫌かって?

 
そうだね。誰でも良いからあと50回くらいは洗面器めり込ませたいってくらいには不機嫌だよ。

 


「………ばーか。あほ。カス。ちび」

 
いかん。イライラし過ぎて語彙力が落ちてる。

 
「………、疲れた」

 
デッカイ溜め息を一つ。ルカは鼻血出してのびた赤毛連れて出てっちゃったし。何か無性にルカの背中に飛びつきたい気分。何でだろう。

 
どっこいしょとベッドから身体を起こす。苛立ち続けるのも結構疲れるんだよね。別の事考えよ。

 
「あ。そうだ」

 
手の平の魔法陣から水を出す。楕円形状になったそれを宙に浮かせて、念を送ると水面に波紋が出来て人影が映った。

 
水面越しの相手と目が合う。

 
「やっほーノヴァ。元気?」
『ま、魔王様!!??』

 
驚愕顔したノヴァが水面に……いや多分向こうは窓なのかな。窓枠が見える。

ノヴァの背景から察するにどうやらノヴァの部屋の窓と繋がったみたいだね。


『お、お久しぶりで御座います魔王様』
「ん。久しぶり」
『ど、どうされたのですか?えっと…これ水鏡、ですよね?』
「多分?」

 
何となーくいけるかなぁと思ってやってみたら出来ちゃったんだよね。だから明確には分かんない。ま、こうして話せてるんだから細かい事は良いよね。終り良ければ全て良しだよ。

 
『…左様でございますか。それで、私に用とは何でしょうか』
「あ、そうそう。あれなんだけどさ。見える?」
『…剣、ですか?』
「そう。今レールにいるんだけど、ここのドワーフのおじさんが『訳あり』だからってタダでくれた奴」
『訳あり…ですか。それが如何されたのですか?』
「最初にこれ見た時にさ、何か変な気配感じたんだよね。悪いものには感じなかったけど、ちょっと気になるからそっちで調べてくれない?」
『分かりました。では、この水鏡を通してこちらの魔具をお送り致します』
「何それ」

 
水面越しだからかな。よく見えない。とりあえず黒色って事は分かる。

 
『投影の魔具でございます。魔力を流し込めば触れた対象物の情報を細部まで読み取り、強度は劣りますが精巧な複製を作り出す事が出来ます。ただ…魔王様のお手を煩わせてしまいますので…』
「いいってそんな事。気にしないよ。それより早く送って」


ルカが戻って来ちゃうじゃん。


『は、はいっ』

 
水の中からシャボン玉みたいな膜に包まれた黒い物体が現れる。触れるとパチンとはじけた。

 
「これ使えば良いの」
『はい。魔力を流して触れて頂ければ』
「ふーん」

 
手の平サイズのちっさい黒い箱。ちょっとカメラに形似てるかも。

 
「はい、出来たよ。これもう一回突っ込めばいいの?」
『はい。お願い致します』

 
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