チート魔王はつまらない。

碧月 晶

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131.事情 sideアメ

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ルカが地上に出た頃、アメ達は洞窟を進んでいた。

ルカの読み通りアメは早々に洞窟を抜けた先に大きな地下空間がある事に気が付いていた。

スタスタと前を行くアメの後をキョロキョロと落ち着かない様子で着いていくテオ。

「どしたの」

そんなにソワソワして。我慢できないならその辺ですれば良いと思うよ。まあその場合は置いて行くけど。

「トイレに行きたい訳じゃないから大丈夫。だからお願い、置いてかないで」
「じゃあ何」
「いや、何かさっきからカサカサ音がしてるような気がしてさ」

ああ、なるほど。それでビクついてたのね。

確かに、さっきから遠巻きに見てる奴らならいるよ。

「大丈夫でしょ」
「そんな楽観的な…」

だって俺、魔王だし。

あと、魔力で威嚇してるからね。まあ、赤毛たちの周りは避けて充満させてるから気付く訳ないんだけど。最初からこうしてれば良かった。

因みにルカの居場所も探してる。全然見つからないけど。

…それより気になるのは、さっきから魔力がどこかにどんどん吸われていっている事だ。おかげで落ちた時も翼を形成出来なかった。いや、出来たけれどヒト二人分連れて飛び上がれるだけの力は溜められなかった。

「ねえ、スイカ頭ってさ」
「え、それもしかしてニールの事?」

それ以外に誰がいるの?

「ははっ、確かに。言われてみりゃスイカだわ。完全に」

中身割ったら赤いしね。

「エグッ!いきなりそういう事言うの止めて!?」
「却下」
「何を?何を却下されたの?オレ」
「そんな事より」
「そんな事…」
「言いたくないなら無理やり言わせるまでだけど。あのスイカ頭なんなの」

少し離れた後方から着かず離れずの距離を保って着いて来ているアイツ。やたらと赤毛に突っかかってくるけど。

「前文がすっげえ恐ろしかった気がすんだけど…」

気のせいじゃない?

「あー…オレさ、ニールの親父さんが頭はってる盗賊ギルドにオレも入ってたんだよ。でも、オレ落ちこぼれでさ。出来るのは鍵開けと足音を消す事くらい。こそ泥かっての。ほんと、何で入れたのか今でも不思議だわ」

盗賊とコソ泥ってあんまり差ないような気がするけど。

「まあ、そのギルドも一年ちょっと前に抜けたんだけどな」
「何で抜けたの」
「二年くらい前かな、アンディの兄貴が危なかった所をかばってくれたんだよ。けどその時の怪我が原因で……。ニールはあの人の事を特に慕ってたからオレを恨むのも無理ないな。帰ってきたら居なくなっててショックだったろうし」
「ふーん」
「あれ?聞いといて興味なさげ?」

って事は…

「ちょっと、そこのスイカ頭」
「スイカ頭って何だよ!」

後ろから着いて来ていたスイカ頭の視線が俺に向けられる。

「大会が始まる前に会った時って、何て言ってたっけ」
「はあ?何てって…てめ、聞いてなかったのかよ!」

まあね。それどころじゃなかったから。

「道理でおかしいと思った…。コイツに伝えとけって言っただろうが!」

そだっけ。確かパートナーがどうのこうの言ってたような…

「パートナー?」
「だから、コイツのパートナーはお前だろ」
「違うけど」
「は?」
「ねぇ?」
「あー違う違う。アメくんのパートナーはオレじゃなくてルカって勇者サマだよ」

俺は納得してないけどね。けど俺の事をそうだと豪語するのはルカだけだし、勘違いするのも当たり前だよね。

「………え、はぁ!?」

全部自分の盛大な勘違いだったと気付いたらしいスイカ頭。

勿論、指差して嘲笑っといてあげたよ?

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