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154.仲間1 sideアメ
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俺は今、非常に頭を悩ませている。それはもう彼の有名な考える人のブロンズ像の如く。
何故そんな状況になっているのかというと、事の発端は約十分程前に遡る。
宿の食堂で朝食を済ませて、部屋へと帰ってきて直ぐに赤毛が訪ねてきた。
珍しく真剣な顔で「話がある」と言われたが、俺は食後で眠かった。だから後にしてと言おうとしたんだけど…ルカから真面目に聞いてあげてくれと頼まれてしまい、仕方なく聞いてあげる事にしたまでは良かった。
問題はその後。赤毛が話した内容だ。
聞いた瞬間、聞き間違いかと自分の耳を疑っちゃったよ。
だって、まさか「仲間になりたい」だなんて言われると思わないじゃん?
思わず「正気?」って聞き返しちゃったのも仕方ないよね。
とまあ、そんなこんなで現在進行形で絶賛理解不能な赤毛の発言に頭を悩ませてる訳なんだけど。
ちらりとルカを見る。さっきの言葉から察するに、俺より先に赤毛から話を聞いてたっぽいな。
…仲間、ねぇ。
前にルカから少しだけ聞いた事がある。
勇者であるルカの師匠は結構名の知れた勇者だったらしく、その影響でルカの周りには私利私欲にまみれた人間しか寄ってこなかったらしい。
はっきりとは言わなかったけれど、その言葉からはルカが仲間に憧れのようなものを持っている事は他人の感情に疎い俺でも察せた。
…正直なところ、赤毛が旅に着いてこようとそうでなかろうとどうでもいいのが本音だ。
赤毛の事も、うるさいけど悪い人間ではないとは思う。だが、それだけだ。それ以上の興味はないに等しい。
けれど………きっとルカは違う。
少なからず、赤毛に情を持っているし、俺に赤毛の話を聞くように頼むくらいだ。旅を一緒にしても問題ないと思っているのだろう。
………では、俺は一体何をこんなに悩んでいるのだろう?
俺自身の答えは決まっている。
けれど、ルカの事情も少しだけ分からなくもないし、ルカが良いと判断したならばと思うと勝手にすれば良いとも思う。
…何でこんなルカの意見を気にしてるんだろう?
『ルカ・セラキエル』。
この世界に来て最初に話した人間で、魔王の俺に一緒に旅をしようと持ち掛けてきたお人好しで物好きな勇者。
好きか嫌いかと問われれば、多分『嫌いではない』の分類には入ると思う。
微妙な解答だなって?
だってさ、好きも嫌いも『興味』があればこその感情でしょ?だから俺の判断基準は興味が有るか無いか。
でも大抵のことは最初は興味あったけど直ぐに無くなる、っていうのが常だったから。
こんなに持続してるのはルカが初めてかもしれない。
興味はある。けど、それが『好き』なのかは分からない。今のところ嫌いじゃない事は確かだけど、そもそもそこまで昇華させた前例が無いに等しいから明確な判断が出来ない。っていうのが現状なんだよね。
でも…ルカの傍にいると気持ちが落ち着く時がある。
ルカの人柄がそう思わせるのかは分からないけど、悪い気分ではないから深く考えるのは放置してる。
「…質問なんだけどさ」
「な、何?」
数分黙っていた俺が突然口を開いた事に驚いたのか、赤毛が恐る恐る答える。そんなにビビらなくてもいいじゃんね。失礼しちゃう。
「ルカの事どう思ってる?」
「へ? ルカの事?」
そう。
「………お人好しの勇者サマで、アメくんの過保護な保護者?」
「………」
「え、何? オレなんかマズい事言った?」
…まあ、及第点って所かな。
「勝手に着いてくれば良いんじゃない」
「…え?」
「何、なんか文句あるの」
「や、無いです…けど…え?ほんとに良いの?」
信じられないものを見るような眼で見てくる赤毛に、思わずむっとして目潰しの構えを取る。なに、嘘つきだとでも言いたいの?
「いえ、思ってないです!有り難く旅に加わらせて頂きまっす!」
ん、宜しい。…って、ん?
「…何」
隣から視線を感じて、顔をそちらへと向けるとルカが何とも言えない生暖かい眼をしていた。
「ありがとう、アメ」
「何が」
「何だろうな。だが、何となく言いたくなったんだ」
「何それ」
変なの。
何故そんな状況になっているのかというと、事の発端は約十分程前に遡る。
宿の食堂で朝食を済ませて、部屋へと帰ってきて直ぐに赤毛が訪ねてきた。
珍しく真剣な顔で「話がある」と言われたが、俺は食後で眠かった。だから後にしてと言おうとしたんだけど…ルカから真面目に聞いてあげてくれと頼まれてしまい、仕方なく聞いてあげる事にしたまでは良かった。
問題はその後。赤毛が話した内容だ。
聞いた瞬間、聞き間違いかと自分の耳を疑っちゃったよ。
だって、まさか「仲間になりたい」だなんて言われると思わないじゃん?
思わず「正気?」って聞き返しちゃったのも仕方ないよね。
とまあ、そんなこんなで現在進行形で絶賛理解不能な赤毛の発言に頭を悩ませてる訳なんだけど。
ちらりとルカを見る。さっきの言葉から察するに、俺より先に赤毛から話を聞いてたっぽいな。
…仲間、ねぇ。
前にルカから少しだけ聞いた事がある。
勇者であるルカの師匠は結構名の知れた勇者だったらしく、その影響でルカの周りには私利私欲にまみれた人間しか寄ってこなかったらしい。
はっきりとは言わなかったけれど、その言葉からはルカが仲間に憧れのようなものを持っている事は他人の感情に疎い俺でも察せた。
…正直なところ、赤毛が旅に着いてこようとそうでなかろうとどうでもいいのが本音だ。
赤毛の事も、うるさいけど悪い人間ではないとは思う。だが、それだけだ。それ以上の興味はないに等しい。
けれど………きっとルカは違う。
少なからず、赤毛に情を持っているし、俺に赤毛の話を聞くように頼むくらいだ。旅を一緒にしても問題ないと思っているのだろう。
………では、俺は一体何をこんなに悩んでいるのだろう?
俺自身の答えは決まっている。
けれど、ルカの事情も少しだけ分からなくもないし、ルカが良いと判断したならばと思うと勝手にすれば良いとも思う。
…何でこんなルカの意見を気にしてるんだろう?
『ルカ・セラキエル』。
この世界に来て最初に話した人間で、魔王の俺に一緒に旅をしようと持ち掛けてきたお人好しで物好きな勇者。
好きか嫌いかと問われれば、多分『嫌いではない』の分類には入ると思う。
微妙な解答だなって?
だってさ、好きも嫌いも『興味』があればこその感情でしょ?だから俺の判断基準は興味が有るか無いか。
でも大抵のことは最初は興味あったけど直ぐに無くなる、っていうのが常だったから。
こんなに持続してるのはルカが初めてかもしれない。
興味はある。けど、それが『好き』なのかは分からない。今のところ嫌いじゃない事は確かだけど、そもそもそこまで昇華させた前例が無いに等しいから明確な判断が出来ない。っていうのが現状なんだよね。
でも…ルカの傍にいると気持ちが落ち着く時がある。
ルカの人柄がそう思わせるのかは分からないけど、悪い気分ではないから深く考えるのは放置してる。
「…質問なんだけどさ」
「な、何?」
数分黙っていた俺が突然口を開いた事に驚いたのか、赤毛が恐る恐る答える。そんなにビビらなくてもいいじゃんね。失礼しちゃう。
「ルカの事どう思ってる?」
「へ? ルカの事?」
そう。
「………お人好しの勇者サマで、アメくんの過保護な保護者?」
「………」
「え、何? オレなんかマズい事言った?」
…まあ、及第点って所かな。
「勝手に着いてくれば良いんじゃない」
「…え?」
「何、なんか文句あるの」
「や、無いです…けど…え?ほんとに良いの?」
信じられないものを見るような眼で見てくる赤毛に、思わずむっとして目潰しの構えを取る。なに、嘘つきだとでも言いたいの?
「いえ、思ってないです!有り難く旅に加わらせて頂きまっす!」
ん、宜しい。…って、ん?
「…何」
隣から視線を感じて、顔をそちらへと向けるとルカが何とも言えない生暖かい眼をしていた。
「ありがとう、アメ」
「何が」
「何だろうな。だが、何となく言いたくなったんだ」
「何それ」
変なの。
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