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31「偶像な崇拝」side 椿
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学園のアイドル───それは即ち読んで字のごとく学園におけるアイドル的な立ち位置の存在の事である(キリッ)。
え?何を当たり前の事を真面目な顔で言っているんだって?
いや、違うんですよ。これにはマリアナ海溝より深ーい理由がありましてね?
何故、今更そんな事を再認識したのか。その理由を説明するためにも時を一週間と三日前に戻して順を追って説明しようと思う。
あの日は月曜日──つまり燈堂先輩と野分先輩のカップリングが成立した翌週の事だった。
休み明けのその日、学園は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
理由は…お察しの通り、光の速さで『燈堂先輩と野分先輩がくっついた』という情報が学園中に流布されたからである。
え?たったそれだけの事で何で学園が地獄絵図になるんだ?ていうか伝達速度速すぎないかって?
それはまあ俺も思ったが、何でも『三年の二大アイドル』が、それも『アイドル同士』でくっついた事が問題だったらしい。
どういう事かというと、燈堂先輩は俺様イケメン生徒会長として、野分先輩は真面目な美人風紀委員長としてそれぞれ人気があり、それぞれの親衛隊が存在している。
そして、何を隠そう、今回燈堂先輩と野分先輩がくっついた事で阿鼻叫喚と化したのが、この『親衛隊』たちである(ついでに言うと、光速で情報を流したのも彼らだ)。
ここまで聞けば、まあ推し活していた対象に恋人が出来たから荒れている。という、ままよくある現象だと思った事だろう。
だがしかし、この『親衛隊』たち、ちょっと『普通』ではなかったようで…。
というのも、『燈堂先輩の親衛隊』と『野分先輩の親衛隊』は、ご本人たちがそうであったように『犬猿の仲』だったそうだ。
出くわせば言い合いは必至、同じ空間にいれば睨み合いは常。というように事あるごとに小競り合いが勃発していた程の仲の悪さはもはや名物だったというね。
しかも、三年生の生徒は殆ど全員このどちらかの『親衛隊』に属しているのだとか。
かくして、今回の出来事により事態は更に悪化し、一・二年生の一部と三年生を二分しての阿鼻叫喚の地獄絵図と発展した訳である。
………いや、何でやねん!
って。うん、あの時は思わず意味が分からなさすぎて慣れない関西弁でツッコんじゃったよね(遠い目)。
やっと一組カップリングを成立させたぞーってルンルンの上機嫌で登校したら既にこの状況だったもんだから、道行く(俺と同じように戸惑っている)人に聞いたら、かくかくしかじかと説明してくれて助かった。
でも、聞いた瞬間『何じゃそら』と思ったと同時に『え?これってもしかして俺のせい?』と気が付いた瞬間、俺の頭の中で恐ろしい可能性が浮上した。
Q.燈堂先輩と野分先輩がくっついたのは何故?→今まで犬猿の仲だったはず→何かきっかけがあった?→そのきっかけは誰が作った?→件の二人に聞く→A.石留椿がお膳立てしたから→俺に敵意が向く=注目を浴びる=ジ☆エンド
…ぎぃやああああああ!!!
この事が親衛隊の皆様にバレたら俺の人生BなL展開にならなくても終わっちゃう!●されちゃう!早急にあの二人の…いや野分先輩の口止めをせねば!
と、そんなこんなで俺はお魚咥えたどら猫を追いかけるサザ●さんの如くダッシュ(実際には競歩)して野分先輩を探し出し、あれこれと理由を付けて俺が関わっている事は内密にして欲しいとお願いした。
幸いにも、野分先輩は最初から言う気は無かった(燈堂先輩に至っては俺がお膳立てした事にすら気が付いていないらしい)ようなので一安心し、これでもう大丈夫…だと思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
ん?次は何が起きたのかって?
あー…その、何て言うか?非常に言い難いと言いますか、あんまり自分で言いたくないというか恥ずかしいというか…。
ゴホン。あー…つまりですね?『石留椿』の『親衛隊』が出てきたらしいんですよ?
意味が分からんって? 奇遇ですね。俺もですよ。
何か、話を纏めるとこういう事だそうです。
①燈堂先輩と野分先輩がくっついた事で、受け入れられない親衛隊たちが咽び泣いている
②それだけでは飽き足らず、益々親衛隊同士の仲が悪くなっている
③そこへ『石留椿』の親衛隊が乱入(←この時点で既に意味不明)
④燈堂先輩と野分先輩がくっついた事を認められない者たちを狙って、『石留椿』の親衛隊に入らないか(端的に言えば推し変しない?)と勧誘(←おい、ちょっと待て)
⑤それを見たそれぞれの親衛隊(ガチ勢)が『出来立ての親衛隊風情が何しとるんじゃゴラァ!』とキレる(←そりゃそうだ)
⑥結果、そこかしこで言い合いする者、嘆く者、勧誘する者が入り乱れるカオスな状況が出来上がった
…はい、お分かり頂けただろうか?
そういえば友広が言ってたけど俺にも親衛隊がいたんだっけ~とか一瞬思考が宇宙へ行きかけたけど、けどその前に!
俺の親衛隊、なに余計な事してくれちゃってんの!?
只でさえ地獄絵図なのに、なに火に油注ぐ真似しちゃってんの!?もはや地獄通り越してカオスだよカオス!
なので、俺は考えた。この状況をどうにか出来る方法を。
考えて、考えて、考えて。そして───俺は一旦思考を放棄する事に決めた。
何故って? 理由は簡単だ。中間試験が始まったからである。
俺に親衛隊がいようがいなかろうが、その前に俺は学生なのである。よって、学生
の本分を果たすべく、中間試験に集中する事に決めたのだ。決して現実逃避ではないのである。
因みにだが、中間試験は(カップリング成立作戦を遂行しながら試験勉強も並行して行っていたので)難なく解く事が出来たのでそこの所の心配は要らない。
と、まあ、ここまでが先週の話なのだが…着いてこられているだろうか?あ、着いてこれてる?え、マジで?本当に?
じゃあ、遠慮なくその翌週──今週の話に参るとしましょう。
一旦思考を放棄して五日間に及ぶ中間試験を終えて、自堕落に過ごした土日の後、なんやかんやで迎えた今週の水曜日。
俺の気持ちはというと期待半分不安半分といった感じだった。
というのも、中間試験の結果──特に上位十名の名前が今日、職員室前の掲示板に表示されるからである。
ゲームでは『主人公』の頭は良いという設定だったので当然のように一位だったが、現実は勿論そういう訳にはいかない。
一位を取れたかどうかは分からないが、出来得る限りの努力はしたつもりだ。
だから、別に一位を取れなくても全く構わないが、それでも上位に入れたかどうかは気になる所なので『期待半分』という訳だ。
では、『不安半分』の方は何なのかというと、それはずばり燈堂先輩と野分先輩の試験結果である。
実は、三年生である二人にとって今回の中間試験は最後の筆記試験になる。
というのも、聖カーニア学園では中間試験は『筆記』、期末試験は『魔法実技』で試験される事になっているからだ。
ゲームでは、この二人は一年、二年の期末試験では毎回同率一位という成績を収めていたが、中間試験だけは燈堂先輩がいつも僅差で勝っていたという設定だった。
しかし、燈堂先輩と野分先輩の関係性に変化があった今ならば、もしかしたら違う結末になるかもしれないが、もしそれが悪い結果だった場合、苦心してくっつけた二人が別れるなんて事になったら……ああ、ダメだ!どうしてもネガティブな可能性が捨てきれないっ。
なんて、思っていた俺だったが、それは要らぬ心配だったとその日の昼休みに直ぐに知る事になった。
何と、職員室前の掲示板に表示された三年生部門の上位十名の内、二人の名前が同率一位で並んでいたのである。
この事に気が付いたのは俺だけではなかったようで、それを見た周囲の生徒たちも驚いているようだった。
そして、その中で誰よりも驚いている様子だったのが野分先輩で。その傍らには誇らしげに野分先輩の肩を抱いている燈堂先輩もいた。
とうとう野分先輩は一位を取った。それも恋人となった燈堂先輩と肩を並べる形で。
寄り添い合い、二人で嬉しそうに笑う合う姿を見て、周囲の人間──特に各親衛隊の面々は思った事だろう。自分たちもいがみ合う時代は終わったのだ、と。
それぞれの親衛隊のリーダーと思しき生徒が二人、燈堂先輩と野分先輩の後ろで密かに固い握手を交わしていた。
良かった良かった、どうなる事かと思ったけどこれで一件落着だな。
と、安堵していたその時だった。俺の背後でひそひそとした会話が聞こえたのは。
「…今回の獲得数は?」
「…予定数よりは下でしたが、それなりに獲得できたと思います」
「…上々です。この調子で椿様の親衛隊をもっと大きくするのですっ」
「…全ては椿様のためにっ」
………ん?んんん?ホワット?今なんて?
不穏なワードが盛り沢山な会話が聞こえ、思わず声がした方を急いで振り返る。
だが、職員室前の掲示板を見ようとしている生徒でごった返していて。先程の会話を誰がしていたかは分からなかった。
「石留君!」
「石留椿!」
呼ばれ、視線を向けると、こちらに向かって来ている野分先輩と燈堂先輩がいた。
「一位、おめでとう。凄いじゃないか」
「え。ああ、ありがとうございます」
傍まで来た野分先輩にお祝いの言葉を貰った事で、そういえば俺も中間試験一位だったわと漸く思い出す。
「? どうした。あまり嬉しそうじゃないな」
「どうかしたのか?」
「へ?あ、いや、別にそんな事ないですよ。ちゃんと嬉しがってます」
咄嗟に笑って誤魔化すと、二人は一瞬だけ目を合わせると同時に俺に視線を向けた。
「そうか。なら良いんだが…もし何か心配事があるなら私がいつでも相談に乗ろう」
そう言って、優しく微笑んでくれた野分先輩に、俺は感動で動悸がし始めた。
「ありがとうございます」
「特別に俺に相談する権利も与えてやろう」
「あ、それは間に合ってるので結構です」
「何!?」
「ふ、はははっ。振られたな、恭介」
「笑うな、正宗!」
あ、名前呼び。
…そっか、そんなに進展したんだな。いや、本当に良かった良かった。
「…石留君?」
試験結果も最良だったし。あ、そうだ。まだ二人が一位だった事、祝ってないや。
「おい、どうした?」
「お───」
お二人とも、一位、おめでとうございます。
そう言おうとしたはずだったのに、ぐらりと視界が揺れて。次の瞬間にはバツンと電気が消えたように視界が暗転した。
「石留君!しっかりしろ!」
激しくなっていく動悸と薄れゆく意識の中、野分先輩の声が遠ざかっていった。
え?何を当たり前の事を真面目な顔で言っているんだって?
いや、違うんですよ。これにはマリアナ海溝より深ーい理由がありましてね?
何故、今更そんな事を再認識したのか。その理由を説明するためにも時を一週間と三日前に戻して順を追って説明しようと思う。
あの日は月曜日──つまり燈堂先輩と野分先輩のカップリングが成立した翌週の事だった。
休み明けのその日、学園は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
理由は…お察しの通り、光の速さで『燈堂先輩と野分先輩がくっついた』という情報が学園中に流布されたからである。
え?たったそれだけの事で何で学園が地獄絵図になるんだ?ていうか伝達速度速すぎないかって?
それはまあ俺も思ったが、何でも『三年の二大アイドル』が、それも『アイドル同士』でくっついた事が問題だったらしい。
どういう事かというと、燈堂先輩は俺様イケメン生徒会長として、野分先輩は真面目な美人風紀委員長としてそれぞれ人気があり、それぞれの親衛隊が存在している。
そして、何を隠そう、今回燈堂先輩と野分先輩がくっついた事で阿鼻叫喚と化したのが、この『親衛隊』たちである(ついでに言うと、光速で情報を流したのも彼らだ)。
ここまで聞けば、まあ推し活していた対象に恋人が出来たから荒れている。という、ままよくある現象だと思った事だろう。
だがしかし、この『親衛隊』たち、ちょっと『普通』ではなかったようで…。
というのも、『燈堂先輩の親衛隊』と『野分先輩の親衛隊』は、ご本人たちがそうであったように『犬猿の仲』だったそうだ。
出くわせば言い合いは必至、同じ空間にいれば睨み合いは常。というように事あるごとに小競り合いが勃発していた程の仲の悪さはもはや名物だったというね。
しかも、三年生の生徒は殆ど全員このどちらかの『親衛隊』に属しているのだとか。
かくして、今回の出来事により事態は更に悪化し、一・二年生の一部と三年生を二分しての阿鼻叫喚の地獄絵図と発展した訳である。
………いや、何でやねん!
って。うん、あの時は思わず意味が分からなさすぎて慣れない関西弁でツッコんじゃったよね(遠い目)。
やっと一組カップリングを成立させたぞーってルンルンの上機嫌で登校したら既にこの状況だったもんだから、道行く(俺と同じように戸惑っている)人に聞いたら、かくかくしかじかと説明してくれて助かった。
でも、聞いた瞬間『何じゃそら』と思ったと同時に『え?これってもしかして俺のせい?』と気が付いた瞬間、俺の頭の中で恐ろしい可能性が浮上した。
Q.燈堂先輩と野分先輩がくっついたのは何故?→今まで犬猿の仲だったはず→何かきっかけがあった?→そのきっかけは誰が作った?→件の二人に聞く→A.石留椿がお膳立てしたから→俺に敵意が向く=注目を浴びる=ジ☆エンド
…ぎぃやああああああ!!!
この事が親衛隊の皆様にバレたら俺の人生BなL展開にならなくても終わっちゃう!●されちゃう!早急にあの二人の…いや野分先輩の口止めをせねば!
と、そんなこんなで俺はお魚咥えたどら猫を追いかけるサザ●さんの如くダッシュ(実際には競歩)して野分先輩を探し出し、あれこれと理由を付けて俺が関わっている事は内密にして欲しいとお願いした。
幸いにも、野分先輩は最初から言う気は無かった(燈堂先輩に至っては俺がお膳立てした事にすら気が付いていないらしい)ようなので一安心し、これでもう大丈夫…だと思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
ん?次は何が起きたのかって?
あー…その、何て言うか?非常に言い難いと言いますか、あんまり自分で言いたくないというか恥ずかしいというか…。
ゴホン。あー…つまりですね?『石留椿』の『親衛隊』が出てきたらしいんですよ?
意味が分からんって? 奇遇ですね。俺もですよ。
何か、話を纏めるとこういう事だそうです。
①燈堂先輩と野分先輩がくっついた事で、受け入れられない親衛隊たちが咽び泣いている
②それだけでは飽き足らず、益々親衛隊同士の仲が悪くなっている
③そこへ『石留椿』の親衛隊が乱入(←この時点で既に意味不明)
④燈堂先輩と野分先輩がくっついた事を認められない者たちを狙って、『石留椿』の親衛隊に入らないか(端的に言えば推し変しない?)と勧誘(←おい、ちょっと待て)
⑤それを見たそれぞれの親衛隊(ガチ勢)が『出来立ての親衛隊風情が何しとるんじゃゴラァ!』とキレる(←そりゃそうだ)
⑥結果、そこかしこで言い合いする者、嘆く者、勧誘する者が入り乱れるカオスな状況が出来上がった
…はい、お分かり頂けただろうか?
そういえば友広が言ってたけど俺にも親衛隊がいたんだっけ~とか一瞬思考が宇宙へ行きかけたけど、けどその前に!
俺の親衛隊、なに余計な事してくれちゃってんの!?
只でさえ地獄絵図なのに、なに火に油注ぐ真似しちゃってんの!?もはや地獄通り越してカオスだよカオス!
なので、俺は考えた。この状況をどうにか出来る方法を。
考えて、考えて、考えて。そして───俺は一旦思考を放棄する事に決めた。
何故って? 理由は簡単だ。中間試験が始まったからである。
俺に親衛隊がいようがいなかろうが、その前に俺は学生なのである。よって、学生
の本分を果たすべく、中間試験に集中する事に決めたのだ。決して現実逃避ではないのである。
因みにだが、中間試験は(カップリング成立作戦を遂行しながら試験勉強も並行して行っていたので)難なく解く事が出来たのでそこの所の心配は要らない。
と、まあ、ここまでが先週の話なのだが…着いてこられているだろうか?あ、着いてこれてる?え、マジで?本当に?
じゃあ、遠慮なくその翌週──今週の話に参るとしましょう。
一旦思考を放棄して五日間に及ぶ中間試験を終えて、自堕落に過ごした土日の後、なんやかんやで迎えた今週の水曜日。
俺の気持ちはというと期待半分不安半分といった感じだった。
というのも、中間試験の結果──特に上位十名の名前が今日、職員室前の掲示板に表示されるからである。
ゲームでは『主人公』の頭は良いという設定だったので当然のように一位だったが、現実は勿論そういう訳にはいかない。
一位を取れたかどうかは分からないが、出来得る限りの努力はしたつもりだ。
だから、別に一位を取れなくても全く構わないが、それでも上位に入れたかどうかは気になる所なので『期待半分』という訳だ。
では、『不安半分』の方は何なのかというと、それはずばり燈堂先輩と野分先輩の試験結果である。
実は、三年生である二人にとって今回の中間試験は最後の筆記試験になる。
というのも、聖カーニア学園では中間試験は『筆記』、期末試験は『魔法実技』で試験される事になっているからだ。
ゲームでは、この二人は一年、二年の期末試験では毎回同率一位という成績を収めていたが、中間試験だけは燈堂先輩がいつも僅差で勝っていたという設定だった。
しかし、燈堂先輩と野分先輩の関係性に変化があった今ならば、もしかしたら違う結末になるかもしれないが、もしそれが悪い結果だった場合、苦心してくっつけた二人が別れるなんて事になったら……ああ、ダメだ!どうしてもネガティブな可能性が捨てきれないっ。
なんて、思っていた俺だったが、それは要らぬ心配だったとその日の昼休みに直ぐに知る事になった。
何と、職員室前の掲示板に表示された三年生部門の上位十名の内、二人の名前が同率一位で並んでいたのである。
この事に気が付いたのは俺だけではなかったようで、それを見た周囲の生徒たちも驚いているようだった。
そして、その中で誰よりも驚いている様子だったのが野分先輩で。その傍らには誇らしげに野分先輩の肩を抱いている燈堂先輩もいた。
とうとう野分先輩は一位を取った。それも恋人となった燈堂先輩と肩を並べる形で。
寄り添い合い、二人で嬉しそうに笑う合う姿を見て、周囲の人間──特に各親衛隊の面々は思った事だろう。自分たちもいがみ合う時代は終わったのだ、と。
それぞれの親衛隊のリーダーと思しき生徒が二人、燈堂先輩と野分先輩の後ろで密かに固い握手を交わしていた。
良かった良かった、どうなる事かと思ったけどこれで一件落着だな。
と、安堵していたその時だった。俺の背後でひそひそとした会話が聞こえたのは。
「…今回の獲得数は?」
「…予定数よりは下でしたが、それなりに獲得できたと思います」
「…上々です。この調子で椿様の親衛隊をもっと大きくするのですっ」
「…全ては椿様のためにっ」
………ん?んんん?ホワット?今なんて?
不穏なワードが盛り沢山な会話が聞こえ、思わず声がした方を急いで振り返る。
だが、職員室前の掲示板を見ようとしている生徒でごった返していて。先程の会話を誰がしていたかは分からなかった。
「石留君!」
「石留椿!」
呼ばれ、視線を向けると、こちらに向かって来ている野分先輩と燈堂先輩がいた。
「一位、おめでとう。凄いじゃないか」
「え。ああ、ありがとうございます」
傍まで来た野分先輩にお祝いの言葉を貰った事で、そういえば俺も中間試験一位だったわと漸く思い出す。
「? どうした。あまり嬉しそうじゃないな」
「どうかしたのか?」
「へ?あ、いや、別にそんな事ないですよ。ちゃんと嬉しがってます」
咄嗟に笑って誤魔化すと、二人は一瞬だけ目を合わせると同時に俺に視線を向けた。
「そうか。なら良いんだが…もし何か心配事があるなら私がいつでも相談に乗ろう」
そう言って、優しく微笑んでくれた野分先輩に、俺は感動で動悸がし始めた。
「ありがとうございます」
「特別に俺に相談する権利も与えてやろう」
「あ、それは間に合ってるので結構です」
「何!?」
「ふ、はははっ。振られたな、恭介」
「笑うな、正宗!」
あ、名前呼び。
…そっか、そんなに進展したんだな。いや、本当に良かった良かった。
「…石留君?」
試験結果も最良だったし。あ、そうだ。まだ二人が一位だった事、祝ってないや。
「おい、どうした?」
「お───」
お二人とも、一位、おめでとうございます。
そう言おうとしたはずだったのに、ぐらりと視界が揺れて。次の瞬間にはバツンと電気が消えたように視界が暗転した。
「石留君!しっかりしろ!」
激しくなっていく動悸と薄れゆく意識の中、野分先輩の声が遠ざかっていった。
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