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4「入学式」
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白い雲が棚引く青い空に、咲き乱れる桜。
そんな、とうとう迎えた絶好の入学式日和に俺はというと…
「つ、疲れた…」
すでに疲労困憊状態にあった。
え?何をそんなに疲れているのかって?
時は先ほど終えたばかりの入学式に遡る。
まず、入学式はオペラとかを観るような大ホールで行われた。
この時点でその規模の大きさに驚かされたが、平静を装い、俺たち新入生は各々好きな席についた。
そして時間になり式が始まると学園長が現れ、何分間か話をすると次は生徒会長が現れた。
すると黄色い声がどこからか上がり、燃えるような赤い髪をした生徒会長はまるで慣れているかのように手を振り返した。
その様はアイドルのコンサート会場のようで、ここは本当に男子校か?と思ったが、ま、まぁそれは今は置いておくとして。話を続けよう。
アイドル然とした生徒会長が新入生を歓迎する旨のスピーチを適度な時間で終えて降壇すると、次はいよいよ新入生代表が挨拶する番となる。
ちなみに言っておくが、その新入生代表は俺である。
え?まさか新入生代表の挨拶をしたから疲れたのかって? 答えはノーだ。
自慢じゃないが、俺は前世の高校入学式でも主席合格者として新入生代表を務めた経験がある。不本意ながらな。
だから少し緊張はしたものの、別段疲れたりはしなかった。
では一体、何に疲れたのか?
それは入学式を終え、お次は新入生歓迎パーティーもといゲームでいうところのチュートリアルが行われるパーティー会場へ移動しようとした時だった。
『あのう…』
誰かに呼び止められ、振り向くとそれは小柄な男子生徒で。ネクタイの色から同じ新入生だと分かったが、次の瞬間言われた言葉に俺は一瞬思考が停止した。
『つ、椿様ですよねっ?あのう、僕、中学の時から椿様のファンで…同じ高校に入れて嬉しいです!よ、良ければ握手して下さい!!』
その瞬間、俺の脳内を前世の記憶を思い出すまでの『記憶』が駆け巡った。
今世の俺は稀な全属性持ちで、容姿共に家柄も良いという理由から常に他人からは羨望の的だった。
最初のうちはどこへ行ってもちやほやしてくれる周りにどこか誇らしげな気持ちでいた。
だが成長していくにつれ、段々と分別がつくようになった小学校高学年の頃、気が付いた。俺に向けられていた『それら』は、心からの言葉ではないという事に。
複数の魔力属性を持つ者は、国がその将来を約束している。
でも、それは裏を返せば『国の物』だと言っているも同然で。平たく言えば、国がバックについている事を意味している。
…想像してみて欲しい。そんな人間に何かちょっかいでもかけたりしたら?結果は、面倒臭そうな事態になる事は火を見るより明らかだろう。
なら、周りの人間がとる行動は二つ。俺に媚びへつらうか関わらない事だ。それが一番無難で、賢い選択だろう。
まあ、理由はそれだけではないのだけれど…兎に角、その事を理解してからは誰の言葉も信じられなくなった。
そのうち、誰とも本音で話さなくなり、何かするたびに賛辞の言葉を吐く周りに笑う事さえできなくなっていった。
けれど、今は…
『っ、やっぱり僕なんかが椿様と握手だなんて烏滸がましいですよね…』
言いながら、みるみる眼に涙を溜めていく男子生徒に、ハッと我に返り、慌ててその手を掴む。
『わ、悪い。ちょっと驚いただけだ。その、ありがとう?』
咄嗟に握手に応えたはいいが何と言えば良いのか分からず、取り敢えず愛想笑いをしてお礼を述べると…
『…っ、そそそそそんな、あああああありがとうございます!』
何故か男子生徒も突然呂律を怪しくさせながらお礼を言ってきた。
『見た?今の!』
『見た見た!』
『あの椿様が握手に応えてくれて、しかも笑ってくれるなんて…!』
途端にざわざわとし始めた周囲に、何か変な事をしただろうかと首を傾げていると
『あ、あの…僕も握手していいですか!?』
『あ、おいズルいぞ!』
『お、おれもお願いします!』
次から次へと握手を求める声が上がり、最終的に俺との握手をめぐっての争いが勃発するという謎の展開になった。
見た目は可愛いのに、その見た目にはそぐわない汚い言葉でお互いを罵り合う様は恐怖以外の何物でもなかった。
…え?その後どうなったのかって?
騒ぎを聞きつけた先生方によって何とか収まった。だが、先生が来るまでの間、目の当たりにした恐怖は暫く記憶から消えそうにない。
そんな、とうとう迎えた絶好の入学式日和に俺はというと…
「つ、疲れた…」
すでに疲労困憊状態にあった。
え?何をそんなに疲れているのかって?
時は先ほど終えたばかりの入学式に遡る。
まず、入学式はオペラとかを観るような大ホールで行われた。
この時点でその規模の大きさに驚かされたが、平静を装い、俺たち新入生は各々好きな席についた。
そして時間になり式が始まると学園長が現れ、何分間か話をすると次は生徒会長が現れた。
すると黄色い声がどこからか上がり、燃えるような赤い髪をした生徒会長はまるで慣れているかのように手を振り返した。
その様はアイドルのコンサート会場のようで、ここは本当に男子校か?と思ったが、ま、まぁそれは今は置いておくとして。話を続けよう。
アイドル然とした生徒会長が新入生を歓迎する旨のスピーチを適度な時間で終えて降壇すると、次はいよいよ新入生代表が挨拶する番となる。
ちなみに言っておくが、その新入生代表は俺である。
え?まさか新入生代表の挨拶をしたから疲れたのかって? 答えはノーだ。
自慢じゃないが、俺は前世の高校入学式でも主席合格者として新入生代表を務めた経験がある。不本意ながらな。
だから少し緊張はしたものの、別段疲れたりはしなかった。
では一体、何に疲れたのか?
それは入学式を終え、お次は新入生歓迎パーティーもといゲームでいうところのチュートリアルが行われるパーティー会場へ移動しようとした時だった。
『あのう…』
誰かに呼び止められ、振り向くとそれは小柄な男子生徒で。ネクタイの色から同じ新入生だと分かったが、次の瞬間言われた言葉に俺は一瞬思考が停止した。
『つ、椿様ですよねっ?あのう、僕、中学の時から椿様のファンで…同じ高校に入れて嬉しいです!よ、良ければ握手して下さい!!』
その瞬間、俺の脳内を前世の記憶を思い出すまでの『記憶』が駆け巡った。
今世の俺は稀な全属性持ちで、容姿共に家柄も良いという理由から常に他人からは羨望の的だった。
最初のうちはどこへ行ってもちやほやしてくれる周りにどこか誇らしげな気持ちでいた。
だが成長していくにつれ、段々と分別がつくようになった小学校高学年の頃、気が付いた。俺に向けられていた『それら』は、心からの言葉ではないという事に。
複数の魔力属性を持つ者は、国がその将来を約束している。
でも、それは裏を返せば『国の物』だと言っているも同然で。平たく言えば、国がバックについている事を意味している。
…想像してみて欲しい。そんな人間に何かちょっかいでもかけたりしたら?結果は、面倒臭そうな事態になる事は火を見るより明らかだろう。
なら、周りの人間がとる行動は二つ。俺に媚びへつらうか関わらない事だ。それが一番無難で、賢い選択だろう。
まあ、理由はそれだけではないのだけれど…兎に角、その事を理解してからは誰の言葉も信じられなくなった。
そのうち、誰とも本音で話さなくなり、何かするたびに賛辞の言葉を吐く周りに笑う事さえできなくなっていった。
けれど、今は…
『っ、やっぱり僕なんかが椿様と握手だなんて烏滸がましいですよね…』
言いながら、みるみる眼に涙を溜めていく男子生徒に、ハッと我に返り、慌ててその手を掴む。
『わ、悪い。ちょっと驚いただけだ。その、ありがとう?』
咄嗟に握手に応えたはいいが何と言えば良いのか分からず、取り敢えず愛想笑いをしてお礼を述べると…
『…っ、そそそそそんな、あああああありがとうございます!』
何故か男子生徒も突然呂律を怪しくさせながらお礼を言ってきた。
『見た?今の!』
『見た見た!』
『あの椿様が握手に応えてくれて、しかも笑ってくれるなんて…!』
途端にざわざわとし始めた周囲に、何か変な事をしただろうかと首を傾げていると
『あ、あの…僕も握手していいですか!?』
『あ、おいズルいぞ!』
『お、おれもお願いします!』
次から次へと握手を求める声が上がり、最終的に俺との握手をめぐっての争いが勃発するという謎の展開になった。
見た目は可愛いのに、その見た目にはそぐわない汚い言葉でお互いを罵り合う様は恐怖以外の何物でもなかった。
…え?その後どうなったのかって?
騒ぎを聞きつけた先生方によって何とか収まった。だが、先生が来るまでの間、目の当たりにした恐怖は暫く記憶から消えそうにない。
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