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第一章 開かれる女の子への道(葵編)
【第4話】 狩る者と狩られる者
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「気が付いたかしら?」
葵の耳元で知らない女性の声がする。
そこは真っ白な部屋だった。どこかはよく分からない。
たしか島に着いて、大の字でビーチに寝そべって、そのままうとうとと。
それ以降の記憶がない。
とっても幸せな気分に浸りながら、気が付いたら眠りに落ちていた。
葵は必死に思い出そうとするが、それ以上何も浮かばない。
眠気が去って、頭がクリアになっていくと、徐々に状況が頭に入ってくる。
やはりそこは知らない場所だった。
清潔感のある大きな病院の一室と、言ったらいいのだろうか。
心電図や点滴など、多くの機械に取り囲まれていた。
怪我をした覚えはない。だが、気を失って倒れて病院に搬送された可能性ならある。
とりあえず周りを確認しないと。
葵はそう考え、起き上がろうとして、違和感を覚える。
体が動かない。目は動かせるが、寝返りすら打てそうにない。
手足が動かないのだ。
無理もない。
錠のようなもので、手足をベッドに固定されていたからだ。
「初めまして、あおいちゃん。BS学園にようこそ。心から歓迎するわ」
白衣の女性は葵を見下しながら、歓迎とはとても言えない黒い笑みを浮かべている。
どこかの女医さんだろうか。ネームプレートには『速水早紀』と書かれていた。
「これは一体何の冗談ですか?」
状況に理解が追い付かない。
だけど、「BS学園にようこそ」と言われたのだから、拉致されたわけではないだろう。
「いいえ、全てカリキュラムどうりよ。心配しなくても大丈夫。あなたはここで女の子に生まれ変わるの。BS学園が誇る最高の性転換システムでね」
カリキュラムのとおり? 性転換システムってどういうこと?
難関校に入学したつもりの葵には、言葉の意味がよく分からない。
「ここはBS学園ですよね。BSとはBenevolent Sanctuary。日本語では『善良なる聖域』という意味で、社会のリーダーを養成すべく……」
葵はBS学園について熱く語りだす。何度も読んで陶酔した、BS学園の謳い文句を。
そんな熱意に満ちた葵の言葉を、早紀は興味なさげに遮った。
「えぇえぇ。そうよ。あなたの理解で、間違いないわ。確かにここはエリート養成学校よ。だけど、Benevolent Sanctuaryは表向きの名前なの。本当は『美少女専門学園』の略なのよ」
「そ、そんな。だって、毎年ハー〇―ドに学生を五人以上……」
「そうね。あたしが直に手をかけた美少女を嫁がせるんですもの。男のスペックも相応に高くないと許されないわ」
「オレも、そのエリートになるべく選ばれたんじゃ……」
「いいえ。彼らは貴女と違って、普通コースの生徒よ。学費は免除されないし、それなりに高い授業料を払ってもらっているわ」
「特進生は授業料免除でお小遣いまで出るって言うのは……」
「あなたが特進生だから特別に支給されるの。合格したのは、彼等よりももっと難易度の高い審査よ。正式名称は強制"性転換"部の特別洗脳コースだったかしら。毎年世界から三人しか選ばれない最難関。だからおめでとうなのよ」
何を言われているか信じられない、いや、信じたくない葵の口はふさがらない。
「オレは一般コースに、ちゃんと筆記試験で合格したんじゃないんですか?」
それを聞いて早紀は、カルテのような書類を一度見返した。
「5教科1000点満点中945点かぁ。確かにいい線行っているわ。でも、950点以上を合格にするという当学園の規定には、残念ながら満たないの。補欠には入るかしら」
早紀は写真選考時、葵をなかなか見つけられなかった理由に苦笑いする。
特進生の選考は、本人の意思に関係なく、全世界の出生データ、遺伝子データ、写真データ、動画などを秘密裏に入手した上で行われる。
そして美少女になる逸材に決定されれば、その子はあらゆる手段を使って、入学するように仕向けられるのだ。
まさか一般コースに入れる学力の子の中に、絶世の美少女になるべき逸材がいるとは思っていなかった。
悪魔の根城に自分から飛び込んでくる美少女の素材がいるとは、早紀も想定外だった。
灯台下暗しとはよく言ったものだ。
女の子のように細くすらっと伸びた手足を見る限り、おそらく筋力はない。
だが、内申書を見る限り、体の柔軟性は女の子の域で、運動神経もよさそうだ。
レオタードを着せて、新体操なんてやらせれば、優美にこなせるかもしれない。
その際もっこりした股間が問題になるかもしれないが、小さめだし、男の娘が好きな人たちには、むしろご褒美だろう。
もっとも、早紀は葵を男の子のままにしておくつもりは毛頭ない。
完全性転換システムを莫大な予算をつぎ込んで完成させたのだ。
ランニングコストだってバカにならない。
その被験者にふさわしい存在は、葵以外にいるはずがない。
早紀は心の底から、葵の美少女としての素質にほれ込んでいた。
「早速だけど、あおいちゃんにはまた夢を見てもらうわ。またすぐに眠くなるから大丈夫よ。次にあなたが目を覚ました時、どれだけ女の子の心に染まっているか、とっても楽しみだわ」
早紀はそう言って、葵にヘッドギアを装着する。
葵はバタバタと抵抗しようとしたが、手足が縛られている状態ではどうすることもできない。
ヘッドギアからは、安らかな眠りを誘引するゆったりとした音楽が流れてくる。
やがて大量のα波が葵の脳内を満たし、それと同調するように彼女はうとうとと舟をこぎ、そして眠りについた。
葵の耳元で知らない女性の声がする。
そこは真っ白な部屋だった。どこかはよく分からない。
たしか島に着いて、大の字でビーチに寝そべって、そのままうとうとと。
それ以降の記憶がない。
とっても幸せな気分に浸りながら、気が付いたら眠りに落ちていた。
葵は必死に思い出そうとするが、それ以上何も浮かばない。
眠気が去って、頭がクリアになっていくと、徐々に状況が頭に入ってくる。
やはりそこは知らない場所だった。
清潔感のある大きな病院の一室と、言ったらいいのだろうか。
心電図や点滴など、多くの機械に取り囲まれていた。
怪我をした覚えはない。だが、気を失って倒れて病院に搬送された可能性ならある。
とりあえず周りを確認しないと。
葵はそう考え、起き上がろうとして、違和感を覚える。
体が動かない。目は動かせるが、寝返りすら打てそうにない。
手足が動かないのだ。
無理もない。
錠のようなもので、手足をベッドに固定されていたからだ。
「初めまして、あおいちゃん。BS学園にようこそ。心から歓迎するわ」
白衣の女性は葵を見下しながら、歓迎とはとても言えない黒い笑みを浮かべている。
どこかの女医さんだろうか。ネームプレートには『速水早紀』と書かれていた。
「これは一体何の冗談ですか?」
状況に理解が追い付かない。
だけど、「BS学園にようこそ」と言われたのだから、拉致されたわけではないだろう。
「いいえ、全てカリキュラムどうりよ。心配しなくても大丈夫。あなたはここで女の子に生まれ変わるの。BS学園が誇る最高の性転換システムでね」
カリキュラムのとおり? 性転換システムってどういうこと?
難関校に入学したつもりの葵には、言葉の意味がよく分からない。
「ここはBS学園ですよね。BSとはBenevolent Sanctuary。日本語では『善良なる聖域』という意味で、社会のリーダーを養成すべく……」
葵はBS学園について熱く語りだす。何度も読んで陶酔した、BS学園の謳い文句を。
そんな熱意に満ちた葵の言葉を、早紀は興味なさげに遮った。
「えぇえぇ。そうよ。あなたの理解で、間違いないわ。確かにここはエリート養成学校よ。だけど、Benevolent Sanctuaryは表向きの名前なの。本当は『美少女専門学園』の略なのよ」
「そ、そんな。だって、毎年ハー〇―ドに学生を五人以上……」
「そうね。あたしが直に手をかけた美少女を嫁がせるんですもの。男のスペックも相応に高くないと許されないわ」
「オレも、そのエリートになるべく選ばれたんじゃ……」
「いいえ。彼らは貴女と違って、普通コースの生徒よ。学費は免除されないし、それなりに高い授業料を払ってもらっているわ」
「特進生は授業料免除でお小遣いまで出るって言うのは……」
「あなたが特進生だから特別に支給されるの。合格したのは、彼等よりももっと難易度の高い審査よ。正式名称は強制"性転換"部の特別洗脳コースだったかしら。毎年世界から三人しか選ばれない最難関。だからおめでとうなのよ」
何を言われているか信じられない、いや、信じたくない葵の口はふさがらない。
「オレは一般コースに、ちゃんと筆記試験で合格したんじゃないんですか?」
それを聞いて早紀は、カルテのような書類を一度見返した。
「5教科1000点満点中945点かぁ。確かにいい線行っているわ。でも、950点以上を合格にするという当学園の規定には、残念ながら満たないの。補欠には入るかしら」
早紀は写真選考時、葵をなかなか見つけられなかった理由に苦笑いする。
特進生の選考は、本人の意思に関係なく、全世界の出生データ、遺伝子データ、写真データ、動画などを秘密裏に入手した上で行われる。
そして美少女になる逸材に決定されれば、その子はあらゆる手段を使って、入学するように仕向けられるのだ。
まさか一般コースに入れる学力の子の中に、絶世の美少女になるべき逸材がいるとは思っていなかった。
悪魔の根城に自分から飛び込んでくる美少女の素材がいるとは、早紀も想定外だった。
灯台下暗しとはよく言ったものだ。
女の子のように細くすらっと伸びた手足を見る限り、おそらく筋力はない。
だが、内申書を見る限り、体の柔軟性は女の子の域で、運動神経もよさそうだ。
レオタードを着せて、新体操なんてやらせれば、優美にこなせるかもしれない。
その際もっこりした股間が問題になるかもしれないが、小さめだし、男の娘が好きな人たちには、むしろご褒美だろう。
もっとも、早紀は葵を男の子のままにしておくつもりは毛頭ない。
完全性転換システムを莫大な予算をつぎ込んで完成させたのだ。
ランニングコストだってバカにならない。
その被験者にふさわしい存在は、葵以外にいるはずがない。
早紀は心の底から、葵の美少女としての素質にほれ込んでいた。
「早速だけど、あおいちゃんにはまた夢を見てもらうわ。またすぐに眠くなるから大丈夫よ。次にあなたが目を覚ました時、どれだけ女の子の心に染まっているか、とっても楽しみだわ」
早紀はそう言って、葵にヘッドギアを装着する。
葵はバタバタと抵抗しようとしたが、手足が縛られている状態ではどうすることもできない。
ヘッドギアからは、安らかな眠りを誘引するゆったりとした音楽が流れてくる。
やがて大量のα波が葵の脳内を満たし、それと同調するように彼女はうとうとと舟をこぎ、そして眠りについた。
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