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第一章 開かれる女の子への道(葵編)
【第12話】 優しすぎる心(前)
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「違う。これは僕じゃない!」
地下実験室から、悲鳴に近い声が聞こえてくる。
葵は、仮想現実の自分のビデオを見せつけられて、ショックを受けていた。
折角VRの世界から解放されたのに、待っていたのはさらなる悪夢だった。
『ぼく、女の子。女の子なの。えへへ』
スクリーンの中の幼い葵は、とろけた顔で自分は女の子だと繰り返している。
まるで壊れたラジオに続くそのセリフを聞きたくないとばかり、葵は両耳をふさぐ。
映像中の葵は、ピンクの女服を着せられているというのに、まんざらでもない笑みを浮かべている。
実は仮想現実内では精神が幼児化していたため、洗脳を受けやすい状態になっていた。
そのことを葵は知らないし、いずれにせよ、葵本人であることにかわりはない。
「違う。こんなの僕じゃない。勝手に言わされていただけで、僕の意思じゃない!」
葵は青ざめていた。
こんな自分の姿、認めるわけにはいかない。
僕は洗脳なんかに負けたりはしない。
絶対に女になんて染められない。
葵はそう思いたかった。
だが、記憶があやふやなために、心の底から自分の言葉を否定できないでいた。
起きた時素っ裸だったことはたしかにショックだったが、すぐに立ち直れた。
恥ずかしい格好を晒していたとはいえ、自分の意思で服を脱いだわけではないからだ。
相手に強制されているのだから、悪いのは相手で、自分に責任はない。
だが、動画に映る自分は何度も「僕、女の子」というセリフを繰り返している。
催眠か洗脳の影響下にあるとはいえ、明らかに自分の声で話している。
音声データだけだったら、自白と取られても仕方がないだろう。
追い打ちをかけるように、早紀は冷たく言い放つ。
「これは紛れもないあなたよ」
「ち、ちがう。これは決して僕じゃ……」
葵は耐えられず、目を逸らそうとする。そんな彼女の顎を早紀は掴むと、強引にスクリーンの方に向けた。
「ちゃんと見なさい。『僕、女の子なの』って言ってるじゃない。これが本当のあなたよ。あなたの本心はもう女の子になりたがっているの」
「ち、ちがう……」
早紀は、すっかりシュンとしてしまった葵の拘束を解く。
葵に暴れる気力はもうなさそうだ。
先程の「あなたの本心はもう女の子になりたがっている」というのは"まだ"真実ではない。
だが、嘘も百回言えば本当になる。
何度も刷り込むことで、葵はそのうち本当に自ら女の子になりたいと思い始めるはずなのだ。
心の弱った状態で暗示をかけ続ければ、いつしかそれは葵の中で真実になっていく。
「あなたは女の子になりたいのよ」
葵の肩を掴み、目の奥をのぞき込んで、早紀は語り掛ける。
その言葉に得体のしれない恐ろしさを感じ、葵の中でぞわぞわとした寒気が湧いてくる。
自分の心の底まで見通したような語り口に、魂のコアの部分から揺さぶられているのだ。
「そう、あなたは本当は女の子になりたいの」
何度も繰り返されるその言葉は、葵の耳路の奥にこびりついて、頭の中で幾重にも反響していた。
地下実験室から、悲鳴に近い声が聞こえてくる。
葵は、仮想現実の自分のビデオを見せつけられて、ショックを受けていた。
折角VRの世界から解放されたのに、待っていたのはさらなる悪夢だった。
『ぼく、女の子。女の子なの。えへへ』
スクリーンの中の幼い葵は、とろけた顔で自分は女の子だと繰り返している。
まるで壊れたラジオに続くそのセリフを聞きたくないとばかり、葵は両耳をふさぐ。
映像中の葵は、ピンクの女服を着せられているというのに、まんざらでもない笑みを浮かべている。
実は仮想現実内では精神が幼児化していたため、洗脳を受けやすい状態になっていた。
そのことを葵は知らないし、いずれにせよ、葵本人であることにかわりはない。
「違う。こんなの僕じゃない。勝手に言わされていただけで、僕の意思じゃない!」
葵は青ざめていた。
こんな自分の姿、認めるわけにはいかない。
僕は洗脳なんかに負けたりはしない。
絶対に女になんて染められない。
葵はそう思いたかった。
だが、記憶があやふやなために、心の底から自分の言葉を否定できないでいた。
起きた時素っ裸だったことはたしかにショックだったが、すぐに立ち直れた。
恥ずかしい格好を晒していたとはいえ、自分の意思で服を脱いだわけではないからだ。
相手に強制されているのだから、悪いのは相手で、自分に責任はない。
だが、動画に映る自分は何度も「僕、女の子」というセリフを繰り返している。
催眠か洗脳の影響下にあるとはいえ、明らかに自分の声で話している。
音声データだけだったら、自白と取られても仕方がないだろう。
追い打ちをかけるように、早紀は冷たく言い放つ。
「これは紛れもないあなたよ」
「ち、ちがう。これは決して僕じゃ……」
葵は耐えられず、目を逸らそうとする。そんな彼女の顎を早紀は掴むと、強引にスクリーンの方に向けた。
「ちゃんと見なさい。『僕、女の子なの』って言ってるじゃない。これが本当のあなたよ。あなたの本心はもう女の子になりたがっているの」
「ち、ちがう……」
早紀は、すっかりシュンとしてしまった葵の拘束を解く。
葵に暴れる気力はもうなさそうだ。
先程の「あなたの本心はもう女の子になりたがっている」というのは"まだ"真実ではない。
だが、嘘も百回言えば本当になる。
何度も刷り込むことで、葵はそのうち本当に自ら女の子になりたいと思い始めるはずなのだ。
心の弱った状態で暗示をかけ続ければ、いつしかそれは葵の中で真実になっていく。
「あなたは女の子になりたいのよ」
葵の肩を掴み、目の奥をのぞき込んで、早紀は語り掛ける。
その言葉に得体のしれない恐ろしさを感じ、葵の中でぞわぞわとした寒気が湧いてくる。
自分の心の底まで見通したような語り口に、魂のコアの部分から揺さぶられているのだ。
「そう、あなたは本当は女の子になりたいの」
何度も繰り返されるその言葉は、葵の耳路の奥にこびりついて、頭の中で幾重にも反響していた。
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