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第二章 開かれる女の子への道(クリスティーナ編)
【第31話】 クリスティーナお嬢様の入学準備(12/15)
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クリスティーナの覚悟は決まった。
従順に女性化されていくふりをして、心では男の自分を保つ。
そのためには、まずしっかりとジェニーの言うことを聞かなければならない。
風呂あがり。髪を乾かした後、早速お肌の手入れから指導される。
「ダメだよ。お姉ちゃん。そんなに顔をゴシゴシ洗っては。お肌がビックリしちゃうでしょ。ちゃんとあらかじめ、泡立ててから顔になじませるように優しく洗うのよ」
最初からダメ出しが入る。美肌を維持することは必要最低条件だ。
クリスティーナは、素直に言う通りにする。
「こ、こう?」
ためらいがちに、ジェニーの評価を伺う。
「うん、まあまあね。ちゃんと洗えたら、適度なぬるま湯でよーく泡を落とすの。洗い残しがあると、吹き出物とかができちゃうからね」
「……」
「タオルで顔を丁寧に拭いたら、こっちの化粧水を顔になじませるの。あたしがやってみせるから、同じようにやってみて」
「う、うん」
クリスティーナは見よう見真似でスキンケア―の一つ一つを学んでいく。乳液をなじませて、完成だ。
女の子は毎日こんな面倒ことやっているのか。
どうりで、お風呂が長いわけだ。クリスティーナは納得する。
ブラのつけ方も本格的に指導される。胸の外側の肉を寄せることで、よりきれいなバストに見える。
「ちゃんと着けないと、垂れちゃうから」
正直、バストがこれ以上大きくなるのは男としてのプライドが許さない。
だけど、ここは言うことを聞くしかない。
女の胸になんかなるのは嫌と思いつつも、鏡に映る少女を見ていると、「もっと胸が大きい方が似合うのに」という気持ちが芽生えてくる。
華やかなショーツとブラの上に、胸元にリボンのついた白のワッピスリーブと、ひざ下まである紺のスカートを穿く。スカートは二重になっており、上は透けて、大人の女性らしさをアピールしている。
「やっぱり大人っぽいドレスも似合うね、お姉ちゃん」
ジェニーの声には実感がこもっている。実際、まだあどけなさが残るクリスティーナの姿は、大人っぽい格好をすることで、可愛らしさと美しさが同居して、女としての魅力も増して見えた。
ピピピピッ。ピピピピッ。
ここで、ジェニーの時計が鳴る。時刻は午後三時を示していた。
「あっ、約束の時間が来たから、あたしはそろそろ行かないと」
ジェニーは名残惜しそうに言う。どうやら、契約によりこの日は三時までしか会えない予定らしかった。
「でも、大丈夫よ。イリスさんがしっかり面倒を見てくれるから」
脱衣所の外には、クリスティーナ達よりも少し背の高い女性がいた。
白と黒のメイド服を着て、深々とお辞儀をしている。
アジア人と白人のハーフに見える。この人がイリスだろうか。
「初めまして、ティーナお嬢様。私はお嬢様の担当のイリスと申します。どうかお見知りおきを」
イリスは仰々しく挨拶をする。
「え……あっ、どうも」
クリスティーナは予想外のお嬢様扱いに戸惑いながら、お辞儀を返す。
「じゃあ、お姉ちゃん。あたしはこれで。また来るからね」
そう言って、ジェニーは去って行った。
イリスはクリスティーナの顎の下に人指し指をあてる。
そして、息のかかるほどの距離から目を見て語り掛ける。
「ティーナお嬢様は、とってもおきれいです。素晴らしい美少女になれる素質をお持ちです。ですが、このままでは、BS学園入学なんて夢のまた夢。お嬢様のライバルは沢山いるのです。このままでは、雌奴隷コースまっしぐらですわ」
クリスティーナには何かが足りない。そう言いたげだ。
「その歩き方、手足の動かし方がまだまだ男っぽいです。お化粧もできなさそうですし、それに……」
まだあるの? そう言いたげなクリスティーナに向かって、イリスはさらに加える。
「BS学園に入園するのでしたら、本格的に日本語を勉強しなければなりません。一月でネイティブレベルまでマスターしていただきます」
一月? クリスティーナは準備期間の短さに絶句する。
彼女は孤児院の仲間にドイツ人がいたこともあり、英語とドイツ語のバイリンガルだ。
そういう意味で、語学を短期間で学ぶ素養は十二分にある。
だが、日本語はマンガを読んで、アニメを見て学んだ程度に過ぎない。
ゼロからよりはよっぽどマシだが、自然な日本語とは言い難い。
一月は至難の業だ。
やるしかないか。
クリスティーナは決意を新たにする。絶対にやってやると自らに誓う。
だが、その決意が貧弱なものに過ぎなかったことを、クリスティーナは恐怖をもって思い知ることになるのだった。
従順に女性化されていくふりをして、心では男の自分を保つ。
そのためには、まずしっかりとジェニーの言うことを聞かなければならない。
風呂あがり。髪を乾かした後、早速お肌の手入れから指導される。
「ダメだよ。お姉ちゃん。そんなに顔をゴシゴシ洗っては。お肌がビックリしちゃうでしょ。ちゃんとあらかじめ、泡立ててから顔になじませるように優しく洗うのよ」
最初からダメ出しが入る。美肌を維持することは必要最低条件だ。
クリスティーナは、素直に言う通りにする。
「こ、こう?」
ためらいがちに、ジェニーの評価を伺う。
「うん、まあまあね。ちゃんと洗えたら、適度なぬるま湯でよーく泡を落とすの。洗い残しがあると、吹き出物とかができちゃうからね」
「……」
「タオルで顔を丁寧に拭いたら、こっちの化粧水を顔になじませるの。あたしがやってみせるから、同じようにやってみて」
「う、うん」
クリスティーナは見よう見真似でスキンケア―の一つ一つを学んでいく。乳液をなじませて、完成だ。
女の子は毎日こんな面倒ことやっているのか。
どうりで、お風呂が長いわけだ。クリスティーナは納得する。
ブラのつけ方も本格的に指導される。胸の外側の肉を寄せることで、よりきれいなバストに見える。
「ちゃんと着けないと、垂れちゃうから」
正直、バストがこれ以上大きくなるのは男としてのプライドが許さない。
だけど、ここは言うことを聞くしかない。
女の胸になんかなるのは嫌と思いつつも、鏡に映る少女を見ていると、「もっと胸が大きい方が似合うのに」という気持ちが芽生えてくる。
華やかなショーツとブラの上に、胸元にリボンのついた白のワッピスリーブと、ひざ下まである紺のスカートを穿く。スカートは二重になっており、上は透けて、大人の女性らしさをアピールしている。
「やっぱり大人っぽいドレスも似合うね、お姉ちゃん」
ジェニーの声には実感がこもっている。実際、まだあどけなさが残るクリスティーナの姿は、大人っぽい格好をすることで、可愛らしさと美しさが同居して、女としての魅力も増して見えた。
ピピピピッ。ピピピピッ。
ここで、ジェニーの時計が鳴る。時刻は午後三時を示していた。
「あっ、約束の時間が来たから、あたしはそろそろ行かないと」
ジェニーは名残惜しそうに言う。どうやら、契約によりこの日は三時までしか会えない予定らしかった。
「でも、大丈夫よ。イリスさんがしっかり面倒を見てくれるから」
脱衣所の外には、クリスティーナ達よりも少し背の高い女性がいた。
白と黒のメイド服を着て、深々とお辞儀をしている。
アジア人と白人のハーフに見える。この人がイリスだろうか。
「初めまして、ティーナお嬢様。私はお嬢様の担当のイリスと申します。どうかお見知りおきを」
イリスは仰々しく挨拶をする。
「え……あっ、どうも」
クリスティーナは予想外のお嬢様扱いに戸惑いながら、お辞儀を返す。
「じゃあ、お姉ちゃん。あたしはこれで。また来るからね」
そう言って、ジェニーは去って行った。
イリスはクリスティーナの顎の下に人指し指をあてる。
そして、息のかかるほどの距離から目を見て語り掛ける。
「ティーナお嬢様は、とってもおきれいです。素晴らしい美少女になれる素質をお持ちです。ですが、このままでは、BS学園入学なんて夢のまた夢。お嬢様のライバルは沢山いるのです。このままでは、雌奴隷コースまっしぐらですわ」
クリスティーナには何かが足りない。そう言いたげだ。
「その歩き方、手足の動かし方がまだまだ男っぽいです。お化粧もできなさそうですし、それに……」
まだあるの? そう言いたげなクリスティーナに向かって、イリスはさらに加える。
「BS学園に入園するのでしたら、本格的に日本語を勉強しなければなりません。一月でネイティブレベルまでマスターしていただきます」
一月? クリスティーナは準備期間の短さに絶句する。
彼女は孤児院の仲間にドイツ人がいたこともあり、英語とドイツ語のバイリンガルだ。
そういう意味で、語学を短期間で学ぶ素養は十二分にある。
だが、日本語はマンガを読んで、アニメを見て学んだ程度に過ぎない。
ゼロからよりはよっぽどマシだが、自然な日本語とは言い難い。
一月は至難の業だ。
やるしかないか。
クリスティーナは決意を新たにする。絶対にやってやると自らに誓う。
だが、その決意が貧弱なものに過ぎなかったことを、クリスティーナは恐怖をもって思い知ることになるのだった。
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