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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心
【第26話】 再教育(26)つばさ
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■末舛つばさサイド(9)(過去)
翔が初めてヘッドギアで洗脳治療を受けてから、一カ月が過ぎた。
「おじさん、稲妻シュート!!」
「負けないぞ、翔君!」
この日の翔は公園ではしゃぎ回っていた。
サッカーボールを楽しそうに蹴りまわしている。
黒服たちが周囲をがっちりガードしている早紀所有の公園だから、万が一にも見つかる心配はない。
元々とても活発な子なのだろう。
家でジッとしているのは耐えられない性分のようだ。
明人も可愛らしい翔と遊ぶのは楽しく感じる。
ヤンチャすぎるところもあるが、飛びっきりの笑顔を見せられると許してしまう。
それでも明人の決意は変わらない。
翔を何が何でも女の子に変えてやる。
一条香織以上の美少女に育て上げてやる、と企んでいる。
もちろん、表向きにはそんな素振りを一切見せない。
「いっぱい遊んだね」
「うん。おじさん、ありがとう」
ここ最近、翔はパパとママを求めなくなった。
おそらく末舛夫妻と明人から愛情を受けているからなのだろう。
夫妻のことは、まだ顕在意識で認識はしていないだろうが。
遊びが終わると、洗脳タイムが始まる。
夕方の二時間。翔が気を失うまで続けられている。
「さて、ヘッドギアトレーニングをはじめようか」
「やったぁ。これ、気持ちよくて大好きなの」
翔は一種の洗脳中毒になっていた。
サッカーが上手くなると信じているからでもあるが、純粋に心地よかったのだ。
「じゃあ早速いこうか」
ヘッドギアからゆったりとした音楽が流れ、翔は舟を漕いで、やがてトランス状態に入った。
「今日もお人形さんで遊ぼうね」
「うん……」
いつもとあまり変わらない薄い反応だ。
だが、毎日翔を事細やかに観察している明人には分かる。
最初とは比べ物にならないくらい、瞳孔が開いていることを。
サッカーボールを見つめる時と同じくらい、物欲しそうな目で見つめていることを。
しかし、洗脳状態が解けた翔は、全く人形に興味を示さない。
これは、どういうことなのだろう。
まぁいい、効果があることは確かだ。
そう、明人は自分に言い聞かせた。
「つばさちゃん。このお人形さん、どう思う?」
質問系の語り掛けに、翔はぽわんとした笑顔で答えた。
「かわいい……好き……なの」
その素朴な反応に、明人は小躍りした。
翔は自分の言葉で人形が好きと言ったのだ。
小さいけれども、確実な変化の兆しだった。
それからの日々、明人は翔の潜在意識の女性化に努めた。
青よりも赤やピンク、花やクラシックの音楽を好きになるように、快楽物質の濃度を調整して、翔の好みを少しずつ捻じ曲げる試みを加えた。
効いているかはわからないが、効果を実感する例は増えている。
例えば、トランス状態に入ると、翔は女の子のお人形を愛おしそうに見つめるようになった。
まるで自分の子供のように、優しく髪をなでてあげるようになった。
ドレスの着せ替えにも興味を示すようになった。
「つばさちゃん。このドレスはどこが好きなの?」
「フリル……かわいい……リボンと一緒だと……もっと」
自分にそっくりな人形を両手で抱き締めながら、嬉しそうな顔をする。
その反応は、まるで生まれたての幼女のようだ。
やはり、翔は変わり始めている。
昼間はサッカーに夢中な少年だが、きっと何かがこの子の中で起こっているのだ。
それが一体何なのかは分からない。
そんな明人の疑問への答えは、ある日突然もたらされた。
たまたま夜起きた時、おもちゃ箱の前で背中を丸めて遊んでいる翔を発見したのだ。
「翔君。何をやっているの?」
自然な問いかけに翔は、答えない。
よく見ると、小さな手にはお人形が握られていた。
ちょうど、黄色いドレスから、和服に着せ替えている最中だった。
昼間は全く人形に興味を示さないのに、どういう風の吹き回しだろう。
「何してるのかな? 翔君」
相変わらず無視するように翔は沈黙を通す。
もう一度、問いかけようとしたときに、翔は初めて答えた。
「翔って誰のこと? ぼくはつばさだよ」
翔が初めてヘッドギアで洗脳治療を受けてから、一カ月が過ぎた。
「おじさん、稲妻シュート!!」
「負けないぞ、翔君!」
この日の翔は公園ではしゃぎ回っていた。
サッカーボールを楽しそうに蹴りまわしている。
黒服たちが周囲をがっちりガードしている早紀所有の公園だから、万が一にも見つかる心配はない。
元々とても活発な子なのだろう。
家でジッとしているのは耐えられない性分のようだ。
明人も可愛らしい翔と遊ぶのは楽しく感じる。
ヤンチャすぎるところもあるが、飛びっきりの笑顔を見せられると許してしまう。
それでも明人の決意は変わらない。
翔を何が何でも女の子に変えてやる。
一条香織以上の美少女に育て上げてやる、と企んでいる。
もちろん、表向きにはそんな素振りを一切見せない。
「いっぱい遊んだね」
「うん。おじさん、ありがとう」
ここ最近、翔はパパとママを求めなくなった。
おそらく末舛夫妻と明人から愛情を受けているからなのだろう。
夫妻のことは、まだ顕在意識で認識はしていないだろうが。
遊びが終わると、洗脳タイムが始まる。
夕方の二時間。翔が気を失うまで続けられている。
「さて、ヘッドギアトレーニングをはじめようか」
「やったぁ。これ、気持ちよくて大好きなの」
翔は一種の洗脳中毒になっていた。
サッカーが上手くなると信じているからでもあるが、純粋に心地よかったのだ。
「じゃあ早速いこうか」
ヘッドギアからゆったりとした音楽が流れ、翔は舟を漕いで、やがてトランス状態に入った。
「今日もお人形さんで遊ぼうね」
「うん……」
いつもとあまり変わらない薄い反応だ。
だが、毎日翔を事細やかに観察している明人には分かる。
最初とは比べ物にならないくらい、瞳孔が開いていることを。
サッカーボールを見つめる時と同じくらい、物欲しそうな目で見つめていることを。
しかし、洗脳状態が解けた翔は、全く人形に興味を示さない。
これは、どういうことなのだろう。
まぁいい、効果があることは確かだ。
そう、明人は自分に言い聞かせた。
「つばさちゃん。このお人形さん、どう思う?」
質問系の語り掛けに、翔はぽわんとした笑顔で答えた。
「かわいい……好き……なの」
その素朴な反応に、明人は小躍りした。
翔は自分の言葉で人形が好きと言ったのだ。
小さいけれども、確実な変化の兆しだった。
それからの日々、明人は翔の潜在意識の女性化に努めた。
青よりも赤やピンク、花やクラシックの音楽を好きになるように、快楽物質の濃度を調整して、翔の好みを少しずつ捻じ曲げる試みを加えた。
効いているかはわからないが、効果を実感する例は増えている。
例えば、トランス状態に入ると、翔は女の子のお人形を愛おしそうに見つめるようになった。
まるで自分の子供のように、優しく髪をなでてあげるようになった。
ドレスの着せ替えにも興味を示すようになった。
「つばさちゃん。このドレスはどこが好きなの?」
「フリル……かわいい……リボンと一緒だと……もっと」
自分にそっくりな人形を両手で抱き締めながら、嬉しそうな顔をする。
その反応は、まるで生まれたての幼女のようだ。
やはり、翔は変わり始めている。
昼間はサッカーに夢中な少年だが、きっと何かがこの子の中で起こっているのだ。
それが一体何なのかは分からない。
そんな明人の疑問への答えは、ある日突然もたらされた。
たまたま夜起きた時、おもちゃ箱の前で背中を丸めて遊んでいる翔を発見したのだ。
「翔君。何をやっているの?」
自然な問いかけに翔は、答えない。
よく見ると、小さな手にはお人形が握られていた。
ちょうど、黄色いドレスから、和服に着せ替えている最中だった。
昼間は全く人形に興味を示さないのに、どういう風の吹き回しだろう。
「何してるのかな? 翔君」
相変わらず無視するように翔は沈黙を通す。
もう一度、問いかけようとしたときに、翔は初めて答えた。
「翔って誰のこと? ぼくはつばさだよ」
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