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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心
【第106話】 つばさの決意
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*ノクターン移転準備につき、つばさ幼少期編を優先して書き進めます。
ご了承ください。m(_ _)m
ーーーー
つばさは白いシーツで膨らんできた胸を隠しながら、明人が帰ってくるのを今か今かと待っていた。
頬は赤く染まっている。
明人だけには見られてもよかったし、むしろ見て欲しかったが、それでも全裸で男性と抱き合うのは気恥ずかしさが強かった。
三十分ほど経っただろうか。
インターフォンでの応対が終わり、明人が重い足取りで戻ってきた。
背中が丸く、どこか元気がない。
その姿を見て、つばさの中で胸騒ぎが加速していく。
「つばさ……その……」
「どうしたの、おじさま」
何か悪いことでもあったのだろうか。
息が詰まりそうなのを堪えて、つばさは明人の暗い顔を覗き込んだ。
「その、急に行かなければならなくなった。遠い場所に……」
つばさは、いても立ってもいられない言わんばかりに、明人の背中から抱き着いた。
丸みを帯び始めている小さな体で優しく愛しの彼を包み込む。
「お願い、連れてって。おじさまの行く場所ならどこだって行くわ」
つばさの暖かい体温が伝わってきて、明人は胸の奥が震えだした。
鼻の奥から何かが込み上げてくる。
「ダメだ。つばさは来てはいけない」
その言葉の真意を、つばさに教えることは今はできない。
明人は胸は引き裂かれそうな痛みに苛まれている。
この痛みは、長年感じたことがなかった。
いや、きっと一度も感じたことはなかっただろう。
付き合った女は多い。
それでも、心臓のバクバクという鼓動は、つばさが別格の女ということを教えてくれる。
年の離れた禁断の恋にもかかわらず、いや、むしろ禁断の恋だからなのだろうか。
自分でも分からない。
まともな神経は、すでに失われているように感じられた。
「どうして? あたしが子供だから? パパとママを説得するわ。あたしの命の恩人のおじさまのところに行きたいって言えば、無下にはできないわ」
「つばさ。ごめん、君を連れてはいけない」
明人は震えを抑えて、冷静な口調を何とか保つ。
トランス島に行かなければならない。
それは決まったことだ。
早紀は自分を、心を持たない性転換マシンに調教するつもりだ。
もう一度つばさに会うことがあれば、恋人ではなく調教師としてだろう。
早紀はそういう女だ。やることなすこと全て有言実行なのだ。
援助資金で縛られている自分に、逃れるすべはない。
タダより怖いものはない、とはよく言ったものだ。
「どうして……おじさま、あたしじゃダメなの? あたしには、おじさまが全てなの。おじさまがいないと生きていけないの。どんな大変なことがあっても、おじさまがいれば乗り越えられるわ。だからお願い、連れて行って。地獄だろうと、おじさまがいれば怖くないわ」
明人の背中が湿っていく。
それは、つばさの流した純粋な涙なのだろう。
男女といじめられ、理解者と言えば明人だけだった。
明人だけは、本当の自分、女の自分を認めてくれた。
優しい言葉を沢山かけてくれた。
楽しい時間を与えてくれた。
そして何よりも、命に係わるふわふわ病から救ってくれた。
そんな彼のことを好きになるのは自然なことだ。
「なぁ、つばさ。もし、オレが別人になったらどうする? それでも一緒に来たいか?」
あいまいな明人の質問に、つばさは即答する。
「ついていくわ。理由はわからないけど、おじさまの心がおじさまである限り、あたしはおじさまのことが好きよ」
まっすぐな返答に、明人の心がずきずき痛む。
つばさを女にしてやると誓ったのは事実だ。
彼女の人生を捻じ曲げたのは、ほかならぬ明人自身だ。
それなのに、どこまでも純粋な愛を与えてくれるつばさのことを、いつの間にか明人は好きになっていた。
それは、一条香織の息子、いや娘だからではない。
つばさへの仕打ちの罪悪感を癒してくれたのも、つばさだったのだ。
つばさを体の隅々まで女に変えてしまいたい。
それは、早紀の手によるものが一番だろう。
悪魔の所業としか言えないレベルの医療技術を、早紀は持っている。
彼女であれば、つばさの女体化を限りなく進めることができるだろう。
「つばさ、ごめん。やっぱり無理だ。今は連れていけない」
その言葉を聞いて、つばさの涙腺が決壊する。
「どうして……あたしが男だから? 心は女でも、体はまだ男だから?」
「違う。そうじゃない」
「じゃあどうして……」
つばさは明人を両腕でギュッと抱きしめる。
離れたくない。
離したくない。
自分の運命の人と、いつまでも一緒にいたい。
つばさが泣き止むまで、明人は優しく髪を撫で続ける。
背中の真ん中まで伸びた美しい黒髪だ。
つばさの嗚咽が治まったところで、明人は優しく声をかけた。
「なあ、つばさ。つばさが本当の女の子、それも妊娠できる女の子になる方法があるって言ったら、信じるか?」
その言葉につばさは目をぱちくりさせた。
そんなこと、可能性すら考えたことがなかった。
不可能だと最初から切り捨てていた。
「できるの?」
つばさの声が明るくなる。
「あぁ……だけど、一つものすごく難しい条件があるんだ」
つばさは、明人の慎重な言葉に遠慮なく食らいつく。
「教えて。どんな条件だって乗り越えてみせるわ」
「それは世界一の美少女になることだ。男、女関係なく、世界一の美少女になれる、そんな男の娘だったら、可能性があるかもしれない」
そう言って、明人はとある学校のパンフレットをつばさに渡した。
「BS学園? Benevolent Sanctuary? どこかで聞いたことあるわ。たしか物凄く頭のいい学校よね」
「そうだな。ここだけの話なんだがBS学園には特進生コースがあって、三人の生徒だけは特別なんだ」
「どういうこと?」
「勉強は一切関係ない。女性としての美を極められる可能性のある美少年が、世界中から厳選されて、そのトップ3だけが入学できる」
明人はBS学園の不都合な情報を削ったうえで、熱心に語りだした。
そして、最後にこう付け足した。
「オレはつばさが、その最高の美少女になれる逸材だと思ってる。つばさほど美しい女の子はこの世にいない。オレが保証する。だけど、どんなに可愛いつばさでも、女を磨いて学園から認められなければ入学できない」
「あたしに、その学園に入学してほしいと?」
「あぁ。オレもつばさとずっと一緒にいたい。だけど、今はもっと女を磨くべき時だ。そして競争に勝って、厳選された三人の中の頂点に立てば、つばさは身籠れる本当の女性になれるんだ」
身籠れる女。
つばさは、その言葉を聞いて、思わず自分のお腹を撫でる。
ずっとおじさまの子供をお腹に宿したいと思っていた。
おじさまとの赤ちゃんを妊娠したいと何度願ったことか。
「あたし……できるかしら」
「つばさならできる。つばさしかできない。なぁ、つばさ」
「何、おじさま」
「………しよう。約束する」
つばさの耳元で明人はささやく。
その言葉につばさは涙を浮かべて頷いた。
「えぇ約束よ。絶対よ。あたしなるわ。本当の女に。おじさまにもっと愛してもらえるよう、頑張るわ」
ご了承ください。m(_ _)m
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つばさは白いシーツで膨らんできた胸を隠しながら、明人が帰ってくるのを今か今かと待っていた。
頬は赤く染まっている。
明人だけには見られてもよかったし、むしろ見て欲しかったが、それでも全裸で男性と抱き合うのは気恥ずかしさが強かった。
三十分ほど経っただろうか。
インターフォンでの応対が終わり、明人が重い足取りで戻ってきた。
背中が丸く、どこか元気がない。
その姿を見て、つばさの中で胸騒ぎが加速していく。
「つばさ……その……」
「どうしたの、おじさま」
何か悪いことでもあったのだろうか。
息が詰まりそうなのを堪えて、つばさは明人の暗い顔を覗き込んだ。
「その、急に行かなければならなくなった。遠い場所に……」
つばさは、いても立ってもいられない言わんばかりに、明人の背中から抱き着いた。
丸みを帯び始めている小さな体で優しく愛しの彼を包み込む。
「お願い、連れてって。おじさまの行く場所ならどこだって行くわ」
つばさの暖かい体温が伝わってきて、明人は胸の奥が震えだした。
鼻の奥から何かが込み上げてくる。
「ダメだ。つばさは来てはいけない」
その言葉の真意を、つばさに教えることは今はできない。
明人は胸は引き裂かれそうな痛みに苛まれている。
この痛みは、長年感じたことがなかった。
いや、きっと一度も感じたことはなかっただろう。
付き合った女は多い。
それでも、心臓のバクバクという鼓動は、つばさが別格の女ということを教えてくれる。
年の離れた禁断の恋にもかかわらず、いや、むしろ禁断の恋だからなのだろうか。
自分でも分からない。
まともな神経は、すでに失われているように感じられた。
「どうして? あたしが子供だから? パパとママを説得するわ。あたしの命の恩人のおじさまのところに行きたいって言えば、無下にはできないわ」
「つばさ。ごめん、君を連れてはいけない」
明人は震えを抑えて、冷静な口調を何とか保つ。
トランス島に行かなければならない。
それは決まったことだ。
早紀は自分を、心を持たない性転換マシンに調教するつもりだ。
もう一度つばさに会うことがあれば、恋人ではなく調教師としてだろう。
早紀はそういう女だ。やることなすこと全て有言実行なのだ。
援助資金で縛られている自分に、逃れるすべはない。
タダより怖いものはない、とはよく言ったものだ。
「どうして……おじさま、あたしじゃダメなの? あたしには、おじさまが全てなの。おじさまがいないと生きていけないの。どんな大変なことがあっても、おじさまがいれば乗り越えられるわ。だからお願い、連れて行って。地獄だろうと、おじさまがいれば怖くないわ」
明人の背中が湿っていく。
それは、つばさの流した純粋な涙なのだろう。
男女といじめられ、理解者と言えば明人だけだった。
明人だけは、本当の自分、女の自分を認めてくれた。
優しい言葉を沢山かけてくれた。
楽しい時間を与えてくれた。
そして何よりも、命に係わるふわふわ病から救ってくれた。
そんな彼のことを好きになるのは自然なことだ。
「なぁ、つばさ。もし、オレが別人になったらどうする? それでも一緒に来たいか?」
あいまいな明人の質問に、つばさは即答する。
「ついていくわ。理由はわからないけど、おじさまの心がおじさまである限り、あたしはおじさまのことが好きよ」
まっすぐな返答に、明人の心がずきずき痛む。
つばさを女にしてやると誓ったのは事実だ。
彼女の人生を捻じ曲げたのは、ほかならぬ明人自身だ。
それなのに、どこまでも純粋な愛を与えてくれるつばさのことを、いつの間にか明人は好きになっていた。
それは、一条香織の息子、いや娘だからではない。
つばさへの仕打ちの罪悪感を癒してくれたのも、つばさだったのだ。
つばさを体の隅々まで女に変えてしまいたい。
それは、早紀の手によるものが一番だろう。
悪魔の所業としか言えないレベルの医療技術を、早紀は持っている。
彼女であれば、つばさの女体化を限りなく進めることができるだろう。
「つばさ、ごめん。やっぱり無理だ。今は連れていけない」
その言葉を聞いて、つばさの涙腺が決壊する。
「どうして……あたしが男だから? 心は女でも、体はまだ男だから?」
「違う。そうじゃない」
「じゃあどうして……」
つばさは明人を両腕でギュッと抱きしめる。
離れたくない。
離したくない。
自分の運命の人と、いつまでも一緒にいたい。
つばさが泣き止むまで、明人は優しく髪を撫で続ける。
背中の真ん中まで伸びた美しい黒髪だ。
つばさの嗚咽が治まったところで、明人は優しく声をかけた。
「なあ、つばさ。つばさが本当の女の子、それも妊娠できる女の子になる方法があるって言ったら、信じるか?」
その言葉につばさは目をぱちくりさせた。
そんなこと、可能性すら考えたことがなかった。
不可能だと最初から切り捨てていた。
「できるの?」
つばさの声が明るくなる。
「あぁ……だけど、一つものすごく難しい条件があるんだ」
つばさは、明人の慎重な言葉に遠慮なく食らいつく。
「教えて。どんな条件だって乗り越えてみせるわ」
「それは世界一の美少女になることだ。男、女関係なく、世界一の美少女になれる、そんな男の娘だったら、可能性があるかもしれない」
そう言って、明人はとある学校のパンフレットをつばさに渡した。
「BS学園? Benevolent Sanctuary? どこかで聞いたことあるわ。たしか物凄く頭のいい学校よね」
「そうだな。ここだけの話なんだがBS学園には特進生コースがあって、三人の生徒だけは特別なんだ」
「どういうこと?」
「勉強は一切関係ない。女性としての美を極められる可能性のある美少年が、世界中から厳選されて、そのトップ3だけが入学できる」
明人はBS学園の不都合な情報を削ったうえで、熱心に語りだした。
そして、最後にこう付け足した。
「オレはつばさが、その最高の美少女になれる逸材だと思ってる。つばさほど美しい女の子はこの世にいない。オレが保証する。だけど、どんなに可愛いつばさでも、女を磨いて学園から認められなければ入学できない」
「あたしに、その学園に入学してほしいと?」
「あぁ。オレもつばさとずっと一緒にいたい。だけど、今はもっと女を磨くべき時だ。そして競争に勝って、厳選された三人の中の頂点に立てば、つばさは身籠れる本当の女性になれるんだ」
身籠れる女。
つばさは、その言葉を聞いて、思わず自分のお腹を撫でる。
ずっとおじさまの子供をお腹に宿したいと思っていた。
おじさまとの赤ちゃんを妊娠したいと何度願ったことか。
「あたし……できるかしら」
「つばさならできる。つばさしかできない。なぁ、つばさ」
「何、おじさま」
「………しよう。約束する」
つばさの耳元で明人はささやく。
その言葉につばさは涙を浮かべて頷いた。
「えぇ約束よ。絶対よ。あたしなるわ。本当の女に。おじさまにもっと愛してもらえるよう、頑張るわ」
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