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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心

【第128話】視線

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「あの娘可愛すぎだろ。あんな娘学園にいたか?」

「一年生の橘あおいちゃんだろ? お前知らないのかよ。美少女ぞろいのB組でも、あの娘は別格だぜ」

 茂みから現れた真っ赤なビキニ姿の美少女を見て、周囲がざわつき始めていた。
 大きな瞳に、優しそうな丸い輪郭、そして潤った唇は、性別を問わず視線をくぎ付けにする。
 じろじろ見ないように心がけていても、つい目線があおいの方を向いてしまう。

「あのぴちぴちした体、最高だな。顔はもちろんだけど、あんなに出るところが出ているとは知らなかった。Dぐらいあるだろ、あの胸」

「おかしいな。貧乳だと思ってたのに、実は隠れ巨乳だったのか」

「巨乳とまではいかないけど、たしかに結構でかいよな。前はそんなでもなかった気が」

「オレはあれくらいのサイズが好きだな。でも、どうせ彼氏がいるんだろ? 男に揉まれて大きくなったのかもな。どいつか分からないけど、羨ましい」

「それが、まだいないらしいぜ。可愛すぎて、みんな尻込みしちゃっているってやつさ」

「マジか。でも、そうだよな。オレたちには高値の花すぎる」

「見ているだけで勃ってきちゃった」

「おまえ、日中それはやばいだろ」

「勃たない方が無理だろ。あんなにあどけない顔しているのに、胸はでかいし、すごく抱き心地よさそうじゃん」

「だよな。それにあれだけ大胆な水着を着ているんだし、男を誘ってるんじゃないか」

「どうだろうな。意外と周りに流されて着ているだけかもしれないぜ」

 男子生徒たちはあおいをちらちら見ていた。
 大抵は声に出さずに目と目で会話をし、場合によっては女子たちに聞こえない声でひそひそと話をしていた。

 不特定多数の視線が、あおいの素肌を舐め回す。
 男の時は感じたことのない圧が、あおいを萎縮させる。

 そんな注目の的のあおいの元に、慶太たち通称ビッグスリーが近づいていく。
 まるで自分の女だとでも言いたげに、他の男を近づけないように気を配りながら、にこやかな顔を保ってあおいとの間合いを狭めていく。
 
 慶太たちにの筋肉質な男の体に囲まれると、あおいの小柄さと肌の白さが際立つ。

(ど、どうしよう。男の子たちに囲まれちゃった。目線が合わせられない……)

 あおいは胸の奥から湧き上がる暖かい感情を理解できない。
 もじもじとしながら、うつむき加減で体を縮こまらせている。

「あっ、やっぱりあおいちゃんだ。おーい」

 そんなあおいの耳に、聞き覚えのある声が届いた。
 あおいが声の方に目を向けると、そこには彼氏と手をつなぎながら、楽しそうに歩く沙羅の姿があった。

「雄二君、ちょっと待っててね」

 そう明るく言って、沙羅はあおいよりさらに大きな胸をぼいんぼいんと弾ませながら、駆け寄ってきた。
 大人っぽい水色のビキニは、深い海の色と空の色に溶け込んでいる。

「その赤の水着、素敵ね。とってもセクシーで似合っているわ。あおいちゃんが選んだの?」

 沙羅の言葉に、あおいはタジタジだ。

「い、いえ。それはここにいるあたしの同級生が……ってあれ?」

 あおいが横を向くが、すでにそこに優花はいなかった。
 いつの間にか慶太の隣に移動して、上目遣いで彼に話しかけていた。
 肉食系女子ゆうかの行動の速さにあっけにとられているあおいに、沙羅は笑いながら耳元で語り掛ける。

「ふふっ。結構積極的なのね、あおいちゃんのお友達。負けていられないわよ」

「い、いや。あたしはそんなんじゃ」

 もじもじと肩をすぼめているあおいに、沙羅は優しい声で続けた。

「大丈夫よ。分かっているわ。それはそれとして、あんまり恥ずかしがらない方がいいわよ。これ以上男の子たちの好奇の視線を集めたくなければね」

ーーーー
参考)次の話で、四人の特進生も出てきます。久しぶりの登場なので、簡単な紹介を載せておきます。

・沙羅(♂→♀:性転換済み)
 あおい1年時の、3年生の特進生で代表。雄二と言う彼氏がいる。
 特別授業ではあおいと同組。

・理沙(♂→♀:性転換済み)
 あおい1年時の、3年生の特進生。
 特別授業ではあおいと同組。

・千鶴(♂→♀:性転換済み)
 丁寧語で話す。
 特別授業ではつばさと同組。

・ケイティー(♂→♀:性転換済み)
 彼氏は太一。
 特別授業ではつばさと同組。
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