姫達は何を想う。

鈴花

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「さちの城」前編

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心臓が、爆発しそうな鼓動をずっと鳴らし続けている。
シンデレラに聞こえるんじゃないかと言うくらい、大きな音で。

…お茶??なんで、どうして?
私には特に優れた特技とかは何もない。
容姿だってド平凡だし頭脳も平均、才能もなければお金もない。
17年間生きてきて特別なパーティーに呼ばれもしなかったし、シンデレラや白雪姫みたいなスーパースターだって、テレビや古い絵本でしかみたことがない。
つまりは今、この時が初対面。
こんな、姫の称号以外何も良いところの無い私と、お茶……ですって…?

じっと私の様子を見ていたシンデレラは、再び口を開いて、聞くまでもない返事を求めた。

「―――さぁ、いかが?」


あの有名な「カボチャの馬車」に揺られて、数十分。
もうすぐ正午になろうとしている中、あり得ない現状が今、私の前で起きている。
「紅茶は、どれもお好きなものをお取りになって。砂糖もミルクもありますわよ。」
「いッ、いえいえ!!私なんかにそんなお気遣い、勿体ないだすッ……」
………噛ん、だ。
今すぐ叫びたい。
よりによって、この人の目の前で、盛大に噛んだ。
だがしかし、シンデレラは聖母のような微笑みで受け流してくれた。

……聞かれたことには代わり無いけど。

 それにしても、ヤッパリ変だ。
こんな私に一体何の用だろうか。
服装も使用人姿のまんまですごくみっともないし、靴もボロボロ。

本にはこの事も記されているんだろうけど、シンデレラにはシンデレラとしての物語があるわけだから、私のにはゲストとしてだって出られない。
本にはどう書かれてるんだろう。

ふと顔を上げると、バッチリシンデレラと目が合った。その事により、忘れていた極度の緊張が舞い戻ってきた。

(ヤバイヤバイやばい!!胃がッ…胃がねじ切れそうッ………)

一瞬目が合っただけでも見えたのはやはり、美しい微笑みだった。すごいなぁ、言い方悪くしちゃうと超余裕そう(私と違って)。


「―――こんなのがとてもそうとは思えないけど……ね」

「え?」

ん?とうとう痛み出したお腹を擦りながら悶絶していたせいか、シンデレラの放った一言を聞き取ることができなかった。しまった、なにか大切なことを言っていたとしたらどうしよう…!

「あら、着いたようね」

しかし、何事もないかのようにシンデレラがそう言ったから聞き間違えかと思った。
少しだけ引っ掛かっているものがあるものの、次の光景で私はそれが頭からすぽんと抜けてしまった。

「…?!えっ……あ、あれって、まさかッ………!」
「ええ、お城…ですわ。」

 この国の人間に、「お城」、と投げ掛けて必ず思い付くものは、きっと一つしか無いだろう。
レンガ造りで建てられ、何百年も姫達に受け継がれ続けているもの。

ーー「さちの城」、そう呼ばれている、超豪華な城だ。

中のようすは他言禁止で入った者にしか分からないが、その全貌から大体は分かる。
とりあえずでかいし、綺麗だ。

ここに入れると言う事はすなわち、国民的大スターになることは大前提。つまり、この城に入れる事は『姫』となった者として最高の事なのである。

名前の由来は誰も知らない。「さち」という人が初代の姫だからと言う人もいれば、誰かの物語に出てくる姫の城から取られた名前と言う人もいる。

…聞いてみても、良いんだろうか。正直興味もあるし……

「…あっ、あの、少し……っていうか……ひ、一つだけ質問…しても、良いでしょうか…?」

私がそう言うと、シンデレラは顔色ひとつ変えずに答えてくれた。

「ええ、よろしくてよ。」 
「そ、それじゃああの……『さち城』って、どうしてそう言う名前なんでしょうか?」

俯きがちではあるが、単刀直入に聞いてみる。でも、シンデレラもわからない可能性も無くはないのだ。
知らないと突き返される可能性もあるし、実際のところどうなのだろう…。

「…………」

…あれ。聞こえてたよね?やっぱり、知らないのかな……?
ーーーそう思ってちらりとシンデレラの顔を見てみると、先程の彼女とは打って変わった表情をしていた。

「……!?…っ、……えっと、あのっ………」

目は見開きがちで、口はほんの少しだけ開いていて、顔色はみるみるうちに悪くなっている。

っわ、私触れちゃいけないことに触れちゃったの…?!

「ごめんなさい!」そういうつもりで息を吸い込むと、カボチャの馬車がキィッと音をたてて停車した。

「到着いたしました」

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