【一話完結】一分で読めるショートショート集

タイムトリップ

未来の地球、時は3000年。科学技術の進歩により、人々は過去へタイムトリップするツアーを楽しむことができるようになった。主人公のタケシもその一人だった。彼は「2024年の日本」というテーマのツアーに参加し、胸を躍らせていた。

タイムトリップの装置に乗り込み、タケシは一瞬のうちに2024年の日本へと到着した。まず目に飛び込んできたのは、東京のスカイツリーだった。高さ634メートルのこのタワーは、当時の日本の象徴的な建物であり、タケシはその壮大さに圧倒された。しかし、未来の時代には空中に浮かぶ都市が当たり前になっているため、スカイツリーの高さにそれほど感動は覚えなかった。

次に訪れたのは、浅草の浅草寺だった。古き良き日本の文化が色濃く残るこの場所は、2024年でも観光客で賑わっていた。タケシは浅草寺の門前で香ばしい匂いのするおせんべいや、甘くてふんわりとした人形焼きを楽しんだが、彼の時代では食べ物は全て栄養素が完璧に計算された合成食品が主流であり、手作りの味に特別な魅力を感じることはなかった。

「こんなものか」とタケシは呟いた。

夜になると、タケシは新宿の歌舞伎町に向かった。ここは夜の街として賑わっており、ネオンの光がまばゆいほどに輝いていた。タケシはロボットレストランでのショーを見学し、未来のテクノロジーの原点とも言えるロボットたちのパフォーマンスに一瞬感心したが、未来のロボットたちの驚異的なパフォーマンスと比べると、やはり物足りなさを感じた。

そして、タケシが次に訪れたのは、伝統的な茶道の体験会場だった。ここでは、茶室でお茶を点てる体験ができた。未来の3000年の世界では、急速な効率化の波に飲まれ、茶道のような伝統的な儀式はほとんど姿を消していた。タケシは茶道の一つ一つの所作に魅了され、その奥深さと美しさに心を打たれた。しかし同時に、茶を点てるために多くの時間と労力を費やすことに困惑した。

「これは素晴らしい…でも、なんでこんなに時間をかけるんだ？」とタケシは思った。

2024年の日本を一通り見て回ったタケシは、再びタイムトリップの装置に乗り込み、未来の自分の時代へと戻ることにした。彼は今回の旅を振り返り、深い感慨に浸った。

「昔の日本は素晴らしい場所がたくさんあったけど、今と比べると不便だな。でも、茶道のような素晴らしい文化があったことを知れてよかった。」

タケシはそう呟きながら、未来の自分の時代へと戻っていった。彼の心には、2024年の日本での思い出が鮮やかに刻まれていた。