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もう1つの本屋
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『はぁーっ、重い。』
これで3回目。これを運んだらようやく終了。モールの台車を借りて、搬入口から3階の店の裏までダンボールに詰まった本を運んでいた。沢山積んでもいいけど、商品が潰れたりしたら台無しだ。僕と池谷さんで何度も往復していた。
エレベーターのボタンを押す。さっき池谷さんが乗って行ったからか、3階に止まったままだったエレベーターがゆっくりと降りてきていた。
『池谷さんはまだだったか。』
空のエレベーターに台車を押して入り込む。「閉」のボタンを押そうとした時、後ろから声が聞こえた。
「待って! 乗りますっ!」
咄嗟に「開」のボタンを押して声の主を待つ。慌てて飛び込んできたのは「OHTA」のモスグリーンのエプロンに身を包んだ男の子だった。
「はぁ、ありがとうございます。」
「!」
頭を下げて、こちらを見た顔……。僕は目が離せなかった。
『似ている……。』
少しだけ大人になりかけた顔。まだまだ幼さを残しているけど、左目の下にホクロ……。
「君、バイトの子?」
僕より少しだけ背が高いけど、まだ170㎝には届いてないだろう。どう見ても高校生っぽい。
「ええ。あなたも?」
口元に目が吸い寄せられる。口元も似ているような気がする。
「いや、僕は社員。駅前の本社から来た……。」
「えっ? 男だったんスか?」
その言葉でムッとした。ボタンを押し忘れていたことに気づいて「3」のボタンを押す。いくらなんでも声で分かるだろうに……。
「あれ? まずい事言いました? 気にしてたとか……。すみません。でも、カッコいいですよ。そのサラサラの髪。似合います。」
屈託のない笑顔で話しかけてくるソイツに、少しだけ気持ちが和らいだのを感じた。
「何をしに一階に降りてきてたの?」
僕と色違いのエプロンをつけた彼の胸の辺りを眺めながら話しかける。胸元には「生田」という名札。生田くんっていうんだ。
「えっ? 手伝いに決まってるじゃないですか! さっき池谷さんという人に頼まれたんですよ。下にもう一人いるから手伝ってもらえるか、って。」
階段で降りたからすれ違いになるところでした、と付け加えた彼の笑顔にとても惹きつけられた。
『笑顔も……似ているかな。』
この子が僕の探している相手だなんて、絶対にない。100%の確率でない。でも、何となく、何となくなんだけれど、どうしても重なって見えてくる。
「あ、俺、押します。」
3階に着くと、台車を生田くんが押してくれて、とても楽だった。
「お名前聞いてもいいですか?」
「僕? 僕は小寺。小寺陽介。」
あっという間に書店裏のバックヤードに着いた。さっきから運び続けた荷物がズラリと並べられている。池谷さんはいない。たぶん中で店長と話をしているんだろう。
運んできた荷物を2人で交互に降ろして、これで全部終了だ。
「ありがとう。」
降ろし終わって台車を片付けてこようと取手を握ると、生田くんの手が重なった。
「あ、小寺さん、俺返しておくんで中に入ってください。池谷さんが待ってます。」
触れた手を慌てて引っ込めると、生田くんは「じゃ、また!」と言いながら台車を押して歩き出した。僕はその背中から目が離せなかった。
『アザ……アザもある……。』
生田くんの右手には、ぼくの記憶の中にある、あの人のものと同じようなアザが付いていた。
これで3回目。これを運んだらようやく終了。モールの台車を借りて、搬入口から3階の店の裏までダンボールに詰まった本を運んでいた。沢山積んでもいいけど、商品が潰れたりしたら台無しだ。僕と池谷さんで何度も往復していた。
エレベーターのボタンを押す。さっき池谷さんが乗って行ったからか、3階に止まったままだったエレベーターがゆっくりと降りてきていた。
『池谷さんはまだだったか。』
空のエレベーターに台車を押して入り込む。「閉」のボタンを押そうとした時、後ろから声が聞こえた。
「待って! 乗りますっ!」
咄嗟に「開」のボタンを押して声の主を待つ。慌てて飛び込んできたのは「OHTA」のモスグリーンのエプロンに身を包んだ男の子だった。
「はぁ、ありがとうございます。」
「!」
頭を下げて、こちらを見た顔……。僕は目が離せなかった。
『似ている……。』
少しだけ大人になりかけた顔。まだまだ幼さを残しているけど、左目の下にホクロ……。
「君、バイトの子?」
僕より少しだけ背が高いけど、まだ170㎝には届いてないだろう。どう見ても高校生っぽい。
「ええ。あなたも?」
口元に目が吸い寄せられる。口元も似ているような気がする。
「いや、僕は社員。駅前の本社から来た……。」
「えっ? 男だったんスか?」
その言葉でムッとした。ボタンを押し忘れていたことに気づいて「3」のボタンを押す。いくらなんでも声で分かるだろうに……。
「あれ? まずい事言いました? 気にしてたとか……。すみません。でも、カッコいいですよ。そのサラサラの髪。似合います。」
屈託のない笑顔で話しかけてくるソイツに、少しだけ気持ちが和らいだのを感じた。
「何をしに一階に降りてきてたの?」
僕と色違いのエプロンをつけた彼の胸の辺りを眺めながら話しかける。胸元には「生田」という名札。生田くんっていうんだ。
「えっ? 手伝いに決まってるじゃないですか! さっき池谷さんという人に頼まれたんですよ。下にもう一人いるから手伝ってもらえるか、って。」
階段で降りたからすれ違いになるところでした、と付け加えた彼の笑顔にとても惹きつけられた。
『笑顔も……似ているかな。』
この子が僕の探している相手だなんて、絶対にない。100%の確率でない。でも、何となく、何となくなんだけれど、どうしても重なって見えてくる。
「あ、俺、押します。」
3階に着くと、台車を生田くんが押してくれて、とても楽だった。
「お名前聞いてもいいですか?」
「僕? 僕は小寺。小寺陽介。」
あっという間に書店裏のバックヤードに着いた。さっきから運び続けた荷物がズラリと並べられている。池谷さんはいない。たぶん中で店長と話をしているんだろう。
運んできた荷物を2人で交互に降ろして、これで全部終了だ。
「ありがとう。」
降ろし終わって台車を片付けてこようと取手を握ると、生田くんの手が重なった。
「あ、小寺さん、俺返しておくんで中に入ってください。池谷さんが待ってます。」
触れた手を慌てて引っ込めると、生田くんは「じゃ、また!」と言いながら台車を押して歩き出した。僕はその背中から目が離せなかった。
『アザ……アザもある……。』
生田くんの右手には、ぼくの記憶の中にある、あの人のものと同じようなアザが付いていた。
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