無添加ラブ

もこ

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「J」

1

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「だからさあ、マスター聞いてよー。」
「アキラさん、まだ2杯目なのに酔ったんですか?」
僕はマスターがいるカウンターで愚痴っていた。

「だって、似た男がいたんだよっ? でもさ、年下だったわけ。どういうこと?」
2杯目のギムレットは一口飲んだだけ。でも頭がグラグラ揺れていた。僕はそんなにお酒に弱い方じゃない。一体どうしたんだろ。

「お相手は40歳ぐらいって言ってませんでした?」
「そう!」
あの時若く見積もって、25くらいだったとしても、今は絶対にアラフォーのはず。いいオジサンになっているはずなんだ。

『なんか、小寺さんって可愛いっスね。』
昼間言われた言葉が頭から離れない。……生意気な奴。僕より年下のくせに。

「この店は若い子ばっかりなんだよな……。オジサン来ないかな。」
「そんな事言われても……。」
マスターが苦笑いしているのが分かる。今日は早い時間だからか、店には若いカップルが1組しかいなかった。奥のテーブル席で見つめ合ってる。僕は、カウンターに頭を乗せてそのカップルを見ている間に、スッと眠ってしまっていた。


チリン

「いらっしゃいませ。」
ドアが開いて生暖かい風が入り込んできた。6月になってだいぶ蒸し暑くなっている。梅雨だというのにここ最近、雨が降らない。

「ロックで。」
誰かがお腹に響く声でマスターにウィスキーを注文すると、僕の右側に座る気配がした。

「洸一さん、お久しぶりですね。」
「ああ。」

こんな声は僕の好みじゃない。でも、僕の求めている声は……13年近く経って、もう思い出せなくなっていた。

『そんなに見つめないでもらえます?』

見つめてなかったっていうのっ! あの声が忘れられない。テノールと言うには低すぎて、バリトンではない……。結構心地よい声だった。

「洸一さんは学生ですか?」
「……。」

マスターの問いかけに答えない。相変わらず愛想がない。この人、学生には見えないけど、社会人にも見えないだろ。僕は意識がハッキリしていくのを感じていた。

「久しぶり。」
そう話しかけて頭を起こし、右を見る。僕と1つ椅子を隔てて、こういちさんが座っていた。こういちさんはこちらをチラッと見ると、出されたばかりのウィスキーに口をつけた。

「ずっと来てなかった?」
「……いや。」

「こういちさんは、月に一度ほど顔を出してくださってるんですよ。そういえば、2人が一緒になるのは久しぶりですね。」
こういちさんに代わってマスターが説明してくれた。

「……行く?」
僕の言葉に、ウィスキーをグッと飲み干すと、こういちさんが席を立った。





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