俺は時を超える。この状況を変えるために…いや、3年前の君に会うために……。~追憶〜

もこ

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君と唐揚げ

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9月も終わりだというのに暑すぎる。俺は冷房の効いたB棟に入り、1番近くの教室のドアを開けた。午後にはもう一つ講義を取っている。昼食は大抵1人。弁当持参で大学に来るのは俺ぐらい。大学で知り合った友だちはほとんど学食に行く。

母親の仕事について行って高校生活の全てをイギリスで過ごした俺は、忙しい母親を手伝って食事を作るのが日課になっていた。おかげで一通りの料理はできる。

今も家族の弁当を作る。母親は海外派遣から戻って小学校の教頭になり、今まで以上に忙しくなった。学食も悪くはないが、どうせ親父と次兄の弁当を作るんだ。自分の分も作った方が絶対にいい。母親は学校給食、長兄は……一緒に住んでいない。

教室の1番後ろの端の席に座って、弁当を広げた。
『駿也くんのお弁当って美味しいよね。私、負けそう…。』
2か月前まで付き合っていた彼女の事を思い浮かべる。……何が負けそうだ。料理に勝ち負けなんか持ち込むな。美味しく食べればそれでいいだろうに。

料理なんかした事がほとんどないというその子は、頑張って弁当を作ってきてたが、そのうちに俺から遠ざかっていった。元々俺から連絡するのは稀だった。…別に構わない。

『いつもそばで笑っていてくれれば、それでいいんだけどな。』
俺が弁当を作るからといって、彼女にまで強要するつもりはない。別に学食で一緒に食べてもいいんだ。でも、彼女たちはみんな体裁を気にする。彼氏が弁当を作るのに、自分が学食メニューというのは許せないらしい。……面倒臭い。中々理想の子とは出会えないもんだ。俺は、弁当箱から竜田揚げを摘んで口に入れた。

「ちょっと待ってて!」
いきなり大声が聞こえてきて横を向く。開いた扉から小柄な男が入ってきた。ジーンズに黒のTシャツ。ロゴは…海外の映画会社か?短い髪の毛が少しだけウェーブがかり、まるで…黒のトイプードルじゃないか?

「ここいらへんなんだけど…。」
だんだんと近づいてくる。ふと前を見ると、俺の斜め前の机の棚に大学ノートと黒い筆箱が入っていた。

「あ、あった!」
やはりか……。俺のそばに来てノートと筆箱を取った男はふとこちらを向いて笑顔になった。

「ごめんね!お騒がせして。一コマ目の講義の後、忘れてたみたいでさ。」
「いや、いい。」
「唐揚げ食べてるの?美味そう!俺、唐揚げ大好きなんだよね。お昼は俺も唐揚げにしよっと。」
いや、竜田揚げだけどな。ま、細かい事は別にいいか。話そうとした言葉は口の中で消えていった。

「じゃ、またね!」
俺がまだ何も話せないうちに、そいつは風のように消えていった。

『慌ただしい奴だな。』
一コマ目といったら、般教か。1年だな。俺より一つ下。何学部だ?……気がつくと、会ったばかりのそいつの事を考えていた。




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