俺は時を超える。この状況を変えるために…いや、3年前の君に会うために……。~追憶〜

もこ

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その線には触れたくない

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バイトのシフトは週5日で入れている。今日は、日曜日。本来ならバイトは入ってないが、「ちょっと手伝って。」と朝からオーナーの中田さんに電話で声をかけられた。

「ツリーですか。」
「そ、クリスマス近いし。本当は先週出したかったんだけどね。」
クリスマス仕様に飾りつけられた店の小物たちに目が奪われる。一昨日のバイトの時にはなかった。このオーナーは40歳前後といったところ。私生活は一切話さないから、結婚しているのか子どもはいるのか全然分からない。

「ほら、結構でかいでしょ?だからさ、田崎君呼んだんだよね。よろしく。店を開ける11時までには終わらせてね。僕は仕込みに入るから。」
オーナーは厨房に消えて行った。オーナーは俺よりも10㎝以上背が低い。俺の背よりも若干高いツリーとオーナメントを見ながら、やるしかないかとため息をついた。

『まずは電飾だな。』
電飾のコードを解きほぐしながら、一昨日の事に思いを馳せた。俺は午前中だけで講義が終わり、帰ろうと校内を歩き始めたが、自然と足は学食に向かっていた。食べるつもりはなかったのに。

『今日は何食べるの?』
B棟から聞こえた女の声にふと左を向くと、望と彼女を中心として5人が入り口から出てくるところだった。思わず立ち止まる。

『久しぶりに唐揚げ食べたいな。』
『お前、3日前にも食べてたじゃん!』
『えっ!?そうだっけ?』
『そうよ。』
『美久ちゃんのいう事に間違いはない。で?やっぱり……。』
賑やかに話をしながら過ぎていく小集団を見送りながら、俺は動けないでいた。

『どうしてなんだ?』
電飾のコードを巻き付けながら、自分に問いかけた。望の姿を見ると、嬉しくなる時もあれば一昨日のように動けなくなる時がある。そんな時は決まって昼間見た光景が、寝るまで頭から離れない。

『きっと、望の明るさにやられているのかもな。』
いろんな色が輝くオーナメントの球を取り出しながら、自分で結論づけた。自分の周りにはいないタイプ。明るく大らかで物怖じしない。一度学食で一緒に昼食をとってから、望がこちらに気がつくと、気軽に挨拶をしてくるようになった。

『駿也さん!おはようございますっ!』
初めて声をかけられた時にはびっくりした。身体中に電流が駆け抜けて行ったような痺れが広がった。

『おはよう。』
俺はうまく表情を作ることができているだろうか?この鼓動が聞こえてしまってないだろうか?そんな思いでいっぱいだった。それからだ。自然と姿を追っている事に気づいたのは……。

リボンと綿を取り付ける。赤い大きなリボンが市販で売っているツリーとは一味違う。天辺につける星もデカくてこのツリーに合ってる。
『こんなものか……。』

今夜ここで過ごすカップルは一足早いクリスマスディナーを楽しむ気分になるに違いない。
『カップルか……。』
出来上がったツリーを眺めながら、やはり、望とあの背低い女の子の姿が頭に浮かんでいた。




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