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3:駿也と良太
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「それで?」
俺たちは、コンビニの向かいのカフェに入って話を続けていた。大学祭の模擬店で駿也の事を見かけてからの事を全部話した。
「無理矢理……キスを……。」
俺が去年の欅藝祭での出来事を話すと、駿也が椅子を後ろに引いて立ち上がりかけた。
「……その後は?」
駿也が鋭い目で見つめてくる。何だか怖い。
「雅人と伸一がやってきて、良太を引き剥がしてくれた。」
「……そっか。」
駿也が椅子の位置を元通りにして、温くなったコーヒーを飲み干した。
「そろそろ時間になる。行こう。」
もう交番へ行く時間だ。俺たちは、2人で同時に立ち上がり、駅前の交番まで歩いて行った。
「……。」
自転車を引きながら隣を歩く駿也を横目で見る。駿也は今まで見たことがないような険しい顔をしていた。
「はい、ご苦労様です。こちらにどうぞ。」
交番に行くと、さっきのお巡りさんが待っていた。指示された椅子に2人並んで腰掛ける。
「さっきの奴は?」
駿也が口を開いた。狭い交番には良太の姿はなかった。
「本署から応援を頼んで連行してもらいました。」
本署? 連行? また、あの時のように暴れたのか?
「と、いうと?」
俺が一人で考えている間に、駿也が先を促してくれた。
「いやね、ここに連れてきてからすぐに、所持品を調べようとしたんですがね……。」
何だろう? 歯切れが悪い。まだ、30代と思われるお巡りさんは少し考えているようだった。
「ま、いいでしょう。それより事情を詳しく教えていただけますか? 遠藤良太さんからは、今回のことは何もまだ聞いていなかったので……。」
え? さっきのことを聞くために連れてったんじゃなかったの? どういうわけ?
さっぱり今の状況が分からなかったが、俺はコンビニを出てからあったことを、かいつまんで話した。
「どうして逃げたのですか? 友だちだったのでしょう?」
「そ、それは……。」
駿也には言えても、赤の他人に話すには少しだけ抵抗があった。何て言おうか考える。
「以前、同じようなことがあったのだそうです。その時は、他の友だちが途中で止めたとか……。」
駿也が代わりに答えてくれた。
「それは本当ですか?」
俺の方を見たお巡りさんに、無言で頷く。お巡りさんは何か考えているようだった。
「ストーカー規制法に引っかかるな……。親告罪になりますが、訴えますか?」
「……。」
少しだけ迷って、俺は首を横に振った。良太の顔を見る勇気はないけど、逮捕してほしいという訳ではない。
「そうですか。では、もう二度と佐々川さんに同じようなことをしないように、キツく言っておきますね。」
「ありがとうございます。」
今できることは、精一杯やった気がする。俺は、お巡りさんにお礼を言うと、駿也と一緒に席を立ち、交番を後にした。
「望……今日は俺のマンションに来ないか? 泊まって?」
俺の自転車を取りにコンビニに向かう。しばらく黙ったままだった駿也が、静かな声で話しかけてきた。
「いいの?」
もう11時を回った。俺も肩の力が抜けて、とても疲れていた。
「ああ。今日は……離れたくない。」
駿也の言葉が少しだけ引っかかって横目で見る。駿也は前を向いて、何かを睨んでいるような表情をしていた。
俺たちは、コンビニの向かいのカフェに入って話を続けていた。大学祭の模擬店で駿也の事を見かけてからの事を全部話した。
「無理矢理……キスを……。」
俺が去年の欅藝祭での出来事を話すと、駿也が椅子を後ろに引いて立ち上がりかけた。
「……その後は?」
駿也が鋭い目で見つめてくる。何だか怖い。
「雅人と伸一がやってきて、良太を引き剥がしてくれた。」
「……そっか。」
駿也が椅子の位置を元通りにして、温くなったコーヒーを飲み干した。
「そろそろ時間になる。行こう。」
もう交番へ行く時間だ。俺たちは、2人で同時に立ち上がり、駅前の交番まで歩いて行った。
「……。」
自転車を引きながら隣を歩く駿也を横目で見る。駿也は今まで見たことがないような険しい顔をしていた。
「はい、ご苦労様です。こちらにどうぞ。」
交番に行くと、さっきのお巡りさんが待っていた。指示された椅子に2人並んで腰掛ける。
「さっきの奴は?」
駿也が口を開いた。狭い交番には良太の姿はなかった。
「本署から応援を頼んで連行してもらいました。」
本署? 連行? また、あの時のように暴れたのか?
「と、いうと?」
俺が一人で考えている間に、駿也が先を促してくれた。
「いやね、ここに連れてきてからすぐに、所持品を調べようとしたんですがね……。」
何だろう? 歯切れが悪い。まだ、30代と思われるお巡りさんは少し考えているようだった。
「ま、いいでしょう。それより事情を詳しく教えていただけますか? 遠藤良太さんからは、今回のことは何もまだ聞いていなかったので……。」
え? さっきのことを聞くために連れてったんじゃなかったの? どういうわけ?
さっぱり今の状況が分からなかったが、俺はコンビニを出てからあったことを、かいつまんで話した。
「どうして逃げたのですか? 友だちだったのでしょう?」
「そ、それは……。」
駿也には言えても、赤の他人に話すには少しだけ抵抗があった。何て言おうか考える。
「以前、同じようなことがあったのだそうです。その時は、他の友だちが途中で止めたとか……。」
駿也が代わりに答えてくれた。
「それは本当ですか?」
俺の方を見たお巡りさんに、無言で頷く。お巡りさんは何か考えているようだった。
「ストーカー規制法に引っかかるな……。親告罪になりますが、訴えますか?」
「……。」
少しだけ迷って、俺は首を横に振った。良太の顔を見る勇気はないけど、逮捕してほしいという訳ではない。
「そうですか。では、もう二度と佐々川さんに同じようなことをしないように、キツく言っておきますね。」
「ありがとうございます。」
今できることは、精一杯やった気がする。俺は、お巡りさんにお礼を言うと、駿也と一緒に席を立ち、交番を後にした。
「望……今日は俺のマンションに来ないか? 泊まって?」
俺の自転車を取りにコンビニに向かう。しばらく黙ったままだった駿也が、静かな声で話しかけてきた。
「いいの?」
もう11時を回った。俺も肩の力が抜けて、とても疲れていた。
「ああ。今日は……離れたくない。」
駿也の言葉が少しだけ引っかかって横目で見る。駿也は前を向いて、何かを睨んでいるような表情をしていた。
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