俺が送ったメールは瞬時に既読になる。けど、アイツからの返事は一切ないんだ。……俺はいつまで待っていればいい? 〜明日のその先〜

もこ

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4:3年と3か月前

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「ちょっとだけ、ここで休憩。昼食べるだろ?」
「えっ? お昼ですか?」
駿也と顔を見合わせる。「K」の部屋には洸一さんの姿はなかった。今の時刻は……壁にかかった時計は11時半を指していた。少しだけお腹が空いてきたような気もする。

「洸一が朝イチで作ってたんだ、カレー。サラダもある。手作りのオニオンドレッシング付き。俺が作った。」
満面の笑みで得意そうに話す奏さんは幸せそうだ。そのうちにパソコンが乗ってる机の左側の壁が音もなく開いて大きなお盆を抱えた洸一さんが入ってきた。

「できた? 俺サラダ取ってくるよ。」
「ああ、頼む。」
カレーの美味しそうな香りが充満する。小さなテーブルに2つ、パソコンが乗っている机に2つカレーが並べられた。

「はい、これがサラダ。そしてドレッシング。」
生野菜に賽の目に小さく切ったトマトとハムが乗せられたサラダ。手作りのオニオンドレッシングも美味そうだ。

「「いただきます。」」
俺と駿也はテーブルで、奏さんと洸一さんは机でそれぞれ食べ始めた。オニオンドレッシングをかけてサラダを一口食べてみる。細かく切った玉ねぎがたくさん野菜に降りかかり、酸味が効いたドレッシングと生野菜の相性は抜群だった。

「美味しい! 手作りのオニオンドレッシングなんて初めてです。すごいですね! 奏さん!」
「電子レンジでできるんだぜ? 簡単。な? 洸一。」
「ああ、上手くなった。」
洸一さんに褒められて、奏さんがますます得意気な顔をした。

「駿也、次は3年3か月だな?」
「はい、予定通りでお願いします。」
洸一さんが振り向きざまに声をかけ、すぐに何やらキーボードを叩き始めた。

「こら洸一、行儀悪いぞ。」
奏さんに窘められ、洸一さんがすぐにキーボードから手を離したが、その一瞬で唯一ある窓の外の空が変化したのが分かった。色が薄くなった。そして……雲も……。

「空が変わった。」
「だろ? 4階にある部屋全部は、繋がった先の風景が窓に映し出されるらしい。俺も最近知った。」
駿也がスプーンで掬ったカレーを口に運びながら教えてくれた。

『へぇ、これから行く所は晴れか……。』
もう何を見ても、何を聞いても動じずに、受け入れている自分がいた。3年と3か月前。この人たちが行くというのなら行くのだろう。3年と3か月前のどこに行くのかな?

「どこに行くの?」
駿也に聞いてみる。駿也なら分かっているはず。
「俺が望のところからいなくなった日……高2の欅葉祭の日だ。欅央高校。」

『え? あの日? どうしてあの日に行くんだ? あの日にどんな意味があるんだろ?』
俺は3年と3か月前に思いを馳せながら、無意識に食事を続けていた。





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