暗闇を超えてきた君が僕を離してくれない

もこ

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僕は君の初恋の人? 君は憧れのお兄さん?

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 総務部でも齋藤さんに会わずに済んだ。計画通り。ちょうど留守を預かっていたらしい日山さんに、コピー用紙を1締め出してもらってすぐに立ち去ることができた。

 ああやって間近で見ると、夕べ嶺さんと並んで歩いていたのが日山さんだと断定できない。長いストレートの髪を後ろで結んで大きな飾りをつけている。紺色が来ているスーツに似合う。

『昨日の女の人は白っぽい服だったし、ヒラヒラのスカートだったよな。それに髪がもっと短かったような……。』

 昨日の日山さんの服装がどうだったのかなんて分からない。会社では見かけなかったし。でも姿は良く似てた……?

「おい、クラリスの伝票全部こっちによこして。」
「あ、はい。」

 目の前の伊東さんの声に手が止まっていたことに気づく。いけない、仕事中だ。伊東さんに書類を渡して仕事に集中しようとした。

 でも今日の僕の分はほとんど済んでいた。あとはファイルに保存して部長に見てもらうだけ。

「部長、終了しました。確認をお願いします。」
「分かった。」

 難しい顔をしてパソコンの画面に向き合っていた部長から返事をもらい、時計を確認する。終業まであと15分というところ。余裕で終われそうな気がする。

「失礼しまーーす。」

 陽気な声が響き、ドアが開いた。その場にいたみんなが一斉に声のする方を見た。嶺さんだ。

「お、嶺どうした? 今日は飲みには行かんよ?」
「へへっ。分かってるって。今日はかわいこちゃんをお誘いに。」

 伊東さんと嶺さんの会話を聞いて、部長も鈴木さんもこちらを見るのが分かった。顔から火が噴き出しそうだ。

「か、か、かわいこちゃんではありません!」

 やはり僕を見ていた伊東さんが、嶺さんに視線を移して話しかけた。

「お前な、なんで渡良瀬に絡むんだよ?」

「いやーー、今朝雨だっただろ? 2人で相合い傘して会社に来たんだ。いいだろ?」

「あ、あ、相合い傘なんてしてませんっ!」

 恥ずかしいったらありゃしない。次に何を言われるかと、ドキドキする自分がいた。

「ははははっ! そうそう、たまたま雨が降り出して、傘を持ってなかった俺が入り込んだだけだよな? そしてお礼に駅前のラーメン屋で奢るだけ。部長! 連れていっていいですか?」

 部長を見ると、パソコンの画面に視線を戻していた部長が、こちらを見ようともせずに手をヒラヒラと振っていた。帰っていいらしい。

「ありがとうございます! じゃ、行こうか。」

 行くしかない。パソコンの電源を落とし、机の下からブリーフケースを取り出した。そして、鈴木さんの「いいわねーー。」の呟きと、伊東さんの「渡良瀬を潰すなよ。」の声に送られながら経理部の部屋を後にした。

  

 

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