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第5章 学園編、試験に夏休み。夏休み前半戦
少年の悪戯、ちゃんとキスしたからな!
幼い少年の顔は、凄く楽しそうに微笑んでいた。少年の無邪気な顔をしながら、カプリスが俺たちに爆弾を落とした。
「囚われの姫から王子様たちにキスをしないと、その鳥籠から出られないからね☆」
にこっと音がするように、カプリスが満面の笑みを浮かべる。
少年の顔をしているが、悪だくみをしている大人のように、悪戯な雰囲気を纏っている。何よりも、語尾が面白がって上がっているのが隠しきれていないからな!!
「えっ?」
「「……はっ?」」
戸惑う俺たちをよそに、いつの間にか部屋に大勢集まっていた羊の執事たちが、メェーメェーと盛り上がっていた。
いや、まず男同士のキスって、一体誰得なんだ?
このカオスな状況は、どうすればいい?
「カプリス様!ナイスなのデス!!やはり、姫と王子のキスは物語に必須なのデス!!」
「こっちは準備万端なのデス!さあ、早くキスするのデス!!」
キスっ!キスっ!と羊の執事たちからコールが上がる。俺だけ、罰ゲーム感が凄いんだが??なんだ、まだ幻想の試練は終わっていなかったのか??
俺は恐る恐る、俺と手を繋いで立っているソルとアトリを仰ぎ見た。2人とも顔を見合わせて、戸惑いの表情を浮かべている。
そうだよな……。
可愛い女の子ならまだしも、俺にキスをされるのなんて嫌だよな……。
だけど、鳥籠を抜け出すにはそれしか方法がないようだ。俺は腹を括ることにした。
2人には一瞬だけ我慢してもらおう。
「ソル、アトリ……」
恥ずかしさから、2人を呼ぶ声が小さくなってしまう。俺が名前を呼んだことに、ソルもアトリも気が付いてくれない。どうしよう、こんなこと一刻も早く終わらせたいのに……。
俺はそっと、ソルとアトリへの距離を縮めた。
2人もこの状況に混乱しているようで、俺が後ろから近づいたことにさえ気が付いていない様子だ。鳥籠の外へ威嚇するように視線を向けている。
ヒールを履いても2人の背にちょっとだけ足りないとか、何か悔しい……。俺は、かかとを上げてつま先立ちをした。
「……大丈夫。ヒズミ、キスなんてしなくて良い。オレがあの羊たちを抹さ__っ?!! 」
ソルの少し怒った声が、途中で不自然に途切れる。
羊の執事たちを睨んで話すソルの横顔に、俺は勢いよく唇を押し当てた。ソルの柔らかな右頬の感触が、唇に当たる。チュッという軽い音が出たのが恥ずかしい。
俺は琥珀色の美しい瞳と目が合う前に、すぐにソルから離れた。そして、勢いのままアトリへとさっと近づく。
「……そうです、ヒズミ。あんな羊たちは私が全員氷漬けに___っ?!! 」
今度は、冷たく低い声音になっていたアトリの言葉も、不自然に途切れる。
羊の執事へ手を向け魔法を放とうとしていたアトリの横顔に、唇を押し当てた。やっぱり、アトリの左頬も柔らかい。可愛らしくチュッと音が鳴った。
イケメンの頬というのは、皆が総じて肌がきめ細やかで柔らかいのだろうか……。
そんな現実逃避をしつつ、俺は2人からさっと距離を取った。もう、恥ずかしさと気まずさから2人の顔が見れない。本当は顔を手で隠したいんだけど、2人に両手を繋がれているため、隠しようがなかった。
無言のままの2人の視線が、俺の頭に突き刺さる。
ううっ、ごめんよ2人とも……。
でも、このダンジョンから抜け出すためだから!!
真っ赤になっているであろう俺の顔を、少しでも見せまいと俯かせて、俺は2人に懇願する。
「ソル、アトリ。嫌だったろうけど、ごめん。俺だって、恥ずかしかったんだからな……。そう、あんまり見ないでくれ……。」
家族以外に、キスをしたことなんて1度もない。ましてや、同性のキラキラ輝くイケメンになんて……。2人が無駄にイケメンだからか、俺には嫌悪感なんて無かったけど。
突然俺が、ほっぺちゅーしたことを2人は怒るだろうか……。
俺、めちゃくちゃ頑張ったのに2人に怒られたら、泣きそうかもしれない。ぐすん。
「嫌なはずない!!すっごく嬉しいよ!……ご褒美過ぎて気が狂いそう……。待って、ヒズミ!ウルウルな目で見つめないで……!!」
「私もとても嬉しいですよ!……でも、ヒズミはそんな顔でこっちを見上げちゃだめです!……ご褒美という名の、新手の拷問ですか?」
なんか、ソルとアトリが取り乱しまくっている。……まあ、嬉しいと言ってくれるから、俺のほっぺちゅーは2人に嫌悪感とかを与えなかったようだ。ちょっと、ほっとした。
わたわたと慌てふためく2人の後ろで、鳥籠の外に立っていたカプリスが、ぷくっと不満気に頬を膨らませていた。
「え~~っ!ほっぺにキスとか、ヒズミは幼児なの?……う~ん。でも、確かにどこにキスするかは指定してないしなー……。盲点だったなー。まあ、約束したからには、しょうがないか。」
不服そうな目をしつつ、カプリスが指をパチンっと鳴らす。ガチャンっ!という言う大きな鈍い音がすると、床に大きな漆黒の錠が落ちていた。
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