王立ギルドに就職しましたが、お仕事はS級冒険者で王子様へのご奉仕エステだそうです

湊零

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第27話 誰でもいい? *

「どうしらいっ、へ……?」

 言葉を紡ごうにも指を咥えたままでは上手く喋ることができない。

 ──アベルさん、どうしちゃったんだろう。なんだか今日はイジワルだ。
 ──私が田舎者だから、からかわれてる?

 薄く細められ、狡猾さを感じる眼差し。
 今の姿が、彼の本性なのだろうか。
 しかし、優しい眼差しで仕事を手伝ってくれて、リッカを気遣ってくれる彼が悪人だとは思えない。

「僕はそろそろ限界だけど、まだリッカちゃんの言うことを聞くぐらいの理性は残っているつもりだよ」

 交わる視線から逃れるように俯いた時、それが目に入ってしまった。
 アベルの、膨らんだショートパンツを。
 張り詰めていて、窮屈そうで、押さえつけられているようで。

 ──ぁ。

 はしたない、と思いつつも喉が鳴り、下腹部がじんわりと疼くのを感じた。
 反射的に、欲しいと思ってしまったのだ。

 口に出さなかったのは、アベルが指がリッカの舌を押さえつけてくれていたからだ。

 ──よかった。
 ──……よかった?

 自身の感情がまるで把握できない。
 ライライムのアロマとアベルの愛撫によって、リッカの身体は完全に出来上がってしまっている。
 アベルもまた、リッカに興奮している。

 ならば、なんの問題もないではないか。

 今が仕事中というのが心にしこりが残るけれど、もとはといえば誘ってきたのはアベルの方だ。
 サンダルシアの王子様に迫られるなんて、夢のような贅沢。
 リッカ自身、一人で慰めてしまうくらいには労働で抑圧された日々を送っている。
 たまには、全てから解放されたいと思っても、ばちは当たらないのではないか。

 ──欲しい。

 余計な言い訳なんていらない。
 リッカにも、性欲はある。今までだって夜遊びせず真面目に過ごしてきた。
 これ以上我慢する必要が、あるのだろうか。
 
 誰でもいいから、欲しい。
 火照った身体の熱を鎮めてほしい。
 塞がないと欲望が止めどなく溢れてしまう、この隙間を埋めてほしい。 
 これ以上お預けされるなんて、頭がおかしくなりそうだ。

「ぁ、あぁ」

 アベルの手がスカート捲りパニエの中に潜り込む。
 ぐずぐずに濡れた下着を脱がされると恥ずかしく、けれど、どこか解放されていくような心地もする。

「施術中なのに、こんなに糸を引くほど濡らしてるなんて、リッカちゃんは悪い子だね」

 ぐちょぐちょの下着を脱がされ、アベルに熟れた秘部を晒してしまう。

 死ぬほど恥ずかしいのに、に進めるのだと、いよいよ胸が高鳴ってしまう。

「わ、たし……は」
「なにかな? して欲しいことがあるなら、おねだりしてみて」

 アベルがリッカの口から濡れた指先を引き抜いて、唾液を舐め取るようにぺろりと舌を這わせる。
 何を考えているのか分からないけれど、おかげで幾分か呼吸が楽になった。
 しかし、いざ紡いでしまえ、と喉に出かかった言葉が続かない。

 ──あれ、どうして。

 早く楽になってしまいたいのに。
 誰でもいいから、早くこの火照った熱を鎮めてほしいのに。

 ──まって。

 夢か現かも曖昧になっていく意識。
 荒ぶる波のような感情に流されそうになりながら、それでもリッカはまだ、岩礁を話さずに掴んでいる己の意識を自覚した。

 ──違う。

 息も絶え絶えになりながら、なんとか深呼吸する。
 誰とでもいいわけじゃない。
 見て見ぬフリをしてきた気持ちに向き合って、拾い上げる。

 ──私は。
 ──私は、本当は。

「沈黙は、肯定とみなしていいんだね」

 リッカに向けて言い放ったアベルの声音は、どこか独り言のように虚空に溶けた。
 すぐさま視線をリッカに戻すと、もう耐えられないとばかりに、半立ちの姿勢のまま、硬く膨らんだ施術用のショートパンツに手をかける。
 何でもいいから声を出したかったけど、身体は甘く痺れたままで、囁くような掠れ声しか出なかった。

「僕は卑怯じゃないからハッキリ言うよ。こんな情けない格好だけど、、別にいいよね」

 ──?

「僕は、リッカちゃんのことが好きだよ」

「え……?」
「もちろん、身分とか関係なく、一人の女の子として、ね?」

 まるで演劇の役者のような告白。
 リッカは突然のことに頭が真っ白になる。

「あ──」

 ──ベルくん? 

 呼吸さえ忘れて、掠れた声でやっと聞き返そうと開く唇に、影が落ちる。
 アベルの手が頬に添えられ、顔が近づいていてく。

 ──本気、なの?

 彼がなにをする気なのか、さすがに分かる。
 これ以上は、もう火遊びでは済まされない。

 ──だめ。
 ──受け入れちゃったら、私……っ。

 逃げたいのに、身体はくらくらとして動かせない。
 きゅっと瞳を閉じて、わずかに顔を逸らすことしかできない。
 そのまま為す術もなく、唇と唇の隙間が、わずか紙一枚にも満たないほどに近づいた、その時だった。

 突然、部屋の空気が波打つように激しく揺れた。
 
 続いて、耳をつんざくような、布が引裂かれる音。
 リッカの視線の先、アベルの背後。
 天蓋から吊るされた厚手のカーテンが、派手な音を立てて留め具が外れ、床へ投げ出されていく。

「ははっ、相変わらず馬鹿力なんだから」

 涼しい顔で一切の動揺を見せないアベルの顔に、一筋の汗が伝う。

「三十二秒。待たせ過ぎだよ、ヘタレ兄さ──」

 言葉は、唸るような風切り音と、鈍い叩打音にかき消された。
 ふわり、とでも言うようにアベルの身体が宙に浮いた。
 一瞬の後、彼は受け身も取れないまま勢いよく背中から吹き飛び、床に叩きつけられた。
 衝撃でベッドの柱が軋み、ライライムのアロマを焚いていた燭台が倒れ、灯っていた火も消える。

「──か、いん?」

 開け放たれた扉を潜って姿を現したのは、手首に浮き出た血管がはち切れそうなほど硬く拳を握りしめた、アベルの兄。

 カイン・サンダルシアだった。
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