出戻り勇者にいじめ返されるモブになってしまった

ゆう

文字の大きさ
16 / 59
本編

絡まれる

しおりを挟む
その後、金をもらって大喜びの俺は、「次回もよろしくな!」と言って帰ろうとした。

「ああ、次回はハンデを減らすからな。」

「げっ、今日と同じじゃダメなのかよ。」

「ああ、それじゃあ結果が見えてる、だろ?よかったじゃないか。流石に片手の勇者よりは強かったんだから。もっと上にチャレンジしてみろよ。」

たしかに上は目指したいが自分の体を賭けるほどではない。でも金を払ってるのはあいつだ。俺はハンデが減りすぎませんようにと祈ることしかできない。

「わかった・・・。でもあんまり減らさないでくれ・・・」

「ふ、わかってる。勝敗を見ながら調整していくさ。」

そのセリフにあと何回やる気なんだと思ったが、それも自分次第かと思い直してため息を吐く。こんな橋渡りはしたくないのだが、主な収入源がこれしかない今は続ける以外の選択肢がない。



そうして、俺達はそれからも度々決闘を続けた。

慣れとは怖いもので、次第にこの決闘が日常の一部となりつつあった。もちろん、負けた時の行為までは慣れることはなかったが・・・

あれからの勝負はハンデを調整しながら行われた。俺が勝てば次はハンデを減らし、負ければ増やす。そうする事で、毎回勝敗がわからないくらい拮抗した戦いができるようになった。

次第にこの戦いが楽しくなっていった俺は、あいつの元に足繁く通うようになった。

だが、そんな俺を快く思わない奴らが出始めていたようだ。


俺は週に一度は傭兵の仕事がないかと酒場を訪れる。そしてこの日も同様に酒場へとやってきていた。


「おい、ギルバートじゃねぇか。まだ懲りずに依頼を探しにきてるのかよ。」

声がした方を振り返れば、がっしりとした大男が立っていた。以前、大々的に行われた決闘の後に絡んできたやつだ。確か名前はビルだかビリーだったか・・・

「悪いか?」

「ふん、いい加減諦めたらどうだ?もうお前に依頼するやつなんかいねぇよ。」

「ビリーには関係ないだろ。」

「ビルだよ!!チッ、もういいじゃねえか。傭兵なんかやらなくても勇者様に面倒見てもらってるんだろ?」

「は?」

「お前が足繁く勇者様の家に通ってる事、知ってるんだぜ。あんなボロ負けしておいてよく取り入ったもんだよ。一体どんな風に泣きついたんだ?」

「なっ!そんなこと、してねぇよ。」

「本当か?じゃあどんな手を使ったんだよ。勇者様の支援がなかったら今も普通に生活できてるわけねぇだろ。」

「それは・・・」

「ふっ、やっぱりな。」

泣きついてなどいない。でもあいつから言い出したこととは言え、何を見返りに支援を受けているかと言われたら、という回答になってしまう。

そんなことは口が裂けても言えない。

押し黙った俺をビルは肯定したと受け取ったようだ。

「ふん、勇者様のお情けで食い繋いでるとは。俺ならいっそ死を選ぶけどな。」

その言葉に、周りからも嘲笑めいた笑い声が聞こえてくる。

「っ!」

腹が立つがこいつの言う通りだ。形はどうあれ、アルフレッドから支援を受けていて、それがなければのたれ死んでいた可能性が高い。俺は言い返す言葉が見つからずに唇を噛んだ。

「なあ、俺にも泣きついてみろよ。そうしたらちょっとは優しくしてやるぜ?」

「誰がそんなこと・・・!」

「そうかよ。」


ビルは周りに目配せしたかと思うと、4、5人の取り巻きたちが俺の周りを取り囲む。

「痛い目みて大人しくなったと思ったらまたデカい顔してるみたいだからな。思い出させてやるよ。」

「何を・・・ぐっ!」

取り巻きたちは俺を取り押さえようとし、そのうちの1人が殴ってくる。俺はそいつを殴り返すも今度は別のやつに蹴り飛ばされた。

そうして複数人に殴りかかられながらなんとか応戦を続ける。だが多勢に無勢で、掴みかかってくるやつらを捌ききれなかった俺は、とうとう地面に膝をついた。極め付けはビルが放った一撃で、重たいパンチをもろにみぞおちに喰らった俺は、咳き込みながら倒れ込んだ。

「ガハッ・・・」


間髪入れずに頭を踏みつけられ、地面に押さえつけられる。

「ほら、勇者様にしたように泣きついてみろよ。」

「誰が・・・」

口ごたえしようとすると、取り巻きたちに再び蹴り飛ばされる。

「ぐっ」

視界の片隅で、受付の女性が慌てて外に出るのが見えた。

「ほら、じゃあ"調子に乗ってごめんない。助けてください"って言ってみろ。そうしたら許してやる。」

「・・・お前らに許されなきゃいけないようなことをした覚えはない。」

「ふんっ、いつもお前ばっかり良い思いをしてよ。お前が落ちぶれてやっと俺らに良い依頼が回ってくるようになったと思ったら、お前は勇者様に取り入ってた。全く処世術に長けてて羨ましいこった。」

「あいつに取り入ってなんかいないし、依頼が少なかったのはお前たちの仕事が雑だからで・・・がっ!」

言い終わらないうちにまた蹴られた。依然として頭は踏みつけられたままで、手も後ろで押さえつけられているので身動きが取れない。

「はっ、こうしてるとあの決闘を思い出すな。立ち上がることもできずによ。お前はそうしているのがお似合いだぜ。」

ビルは安物のワインを俺の頭に注いでくる。

「酒なんか久々だろ?恵んでやるよ。床にこぼれた分、全部舐めとったら解放してやる。」

俺は身じろぎして拘束から逃れようとするが、5人がかりで押さえつけられびくともしない。


「ほら、早くし・・・」


バタン!!!!


ビルが言葉を言い終える前に酒場のドアが勢いよく開いた。

入ってきた人間を見やればそれはアルフレッドだった。後ろに先程出ていった受付の女性もいる。

(呼びに言ってくれたのか・・・)

アルフレッドが来て安心するなんて変な感じだ。そう思ってあいつを見る。

最初は少し驚いた顔をして俺を見ていたアルフレッドだったが、真顔に戻り低い声でビルに話しかけた。

「何をしてる。」

整っている顔のせいで冷たい印象を与えるあいつだが、今日は特に冷徹そうに見える。

「ゆ、勇者様。これは・・・」

「足を退けろ。」

「は、はいっ!」

やっと解放された俺はよろよろと立ち上がる。アルフレッドが普段からは想像できないほど優しく俺の背中を支えた。

「何でこうなったか知らないが、ギルバートに言いたいことがあるなら一対一で決闘でもしたらどうだ?俺とこいつみたいにな。」


そう言ってフンッと鼻を鳴らしたアルフレッドは俺を支えながら酒場を後にした。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。 男前受け

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

処理中です...