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本編
忘れた頃に
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そうして数日。
俺はベネディクトと会う機会が無かったことにホッとしつつ、しばらくは屋敷の中で過ごした。あの噂も風化してくれていることを祈るしかない。
噂を広めた当の先輩はクビになったようで、翌日には屋敷を追い出されていた。追い出された理由が理由なだけに、他所でも同じ仕事に就くのは難しくなったそうだ。
今思うと、俺個人としてはあの先輩にやられたことよりアルフレッドにやられたことの方がよほど迷惑なのだが・・・
そうこうしているうちに、以前話にあったパーティーの日程が近づいてきた。心なしか屋敷の中が慌ただしい。
(そういえば、未だ帰ってこない"元アルフレッドの服"も本来このパーティー用に仕立てんだっけか。)
貴族たちのパーティーというのは興味があるが、ついあの服の一件での仕置きを連想してしまい苦い思いになる。
「ギルバートくん。テーブルセッティングを手伝ってもらえますか?」
「はい、わかりました。」
ハワードさんの指示のもと、俺もパーティーの準備に駆り出される。
メイン会場となるホールのセッティングが終わると、アルフレッドが呼んでいるから部屋へ行くようにとメイドから伝言を受け取った。
いつもなら「茶を持ってこい」とか「掃除しろ」とか用件まで言ってくるのに、今日は「部屋へ来い」とだけだ。
一体何の用だろうかと思いつつ部屋のドアをノックする。
「ギルバートです。」
「ああ、入れ。」
とりあえず中に誰がいるのかわからないので最初は執事然とした態度を取る。そしてアルフレッド以外 誰もいないことを確認してフッと力を抜いた。
「それで、何の用だ?」
「ほら、お前の服だ。」
「あっ!この服・・・」
それはかつて買い取らされたあの服だった。
「あれ?少し小さくなってる?」
「お前のサイズに合わせた。」
「なんでそんなこと・・・」
「今度のパーティー、お前もこれを着て出ろ。」
「は?いやいや。執事がこんないい服着てたらおかしいだろ。」
「そう思って装飾は減らしてある。」
「あ、ほんとだ・・・」
(まあこれなら質が良すぎる執事服と見えなくも・・・いや、やっぱ無理があるな・・・)
自分がこんな良いものを着て行ったところでどうするのだのいう困惑顔でアルフレッドを見れば、フッと力を抜いたような笑みが返ってきた。
「一度汚した服とはいえ、せっかく買い取ったんだ。着る機会があった方がいいだろ?」
「ぐっ・・・そのことは・・・」
「着る度に思い出せるだろ?」
「なっ・・・」
(もしかしてそれが目的か・・・?)
少し感謝しかけた自分がバカらしくなる。アルフレッドが親切心でサイズを直すなんてことをするはずがなかった。
「普段の執事服でいい。」
「ダメだ。これを着ろ。」
不貞腐れ気味に普段の制服でいいと言えば、アルフレッドに「主人命令だ」と有無を言わさず却下される。
「はあ・・・わかったよ・・・」
俺は渋々承諾して、複雑な心境で服を受け取った。
あんなことを言われると、この服を見るたびにあの日のことを思い出してしまう。
一度でいいから着てみたいと思っていた服を手に入れたのにも関わらず、俺は浮かない気持ちで仕事に戻った。
俺はベネディクトと会う機会が無かったことにホッとしつつ、しばらくは屋敷の中で過ごした。あの噂も風化してくれていることを祈るしかない。
噂を広めた当の先輩はクビになったようで、翌日には屋敷を追い出されていた。追い出された理由が理由なだけに、他所でも同じ仕事に就くのは難しくなったそうだ。
今思うと、俺個人としてはあの先輩にやられたことよりアルフレッドにやられたことの方がよほど迷惑なのだが・・・
そうこうしているうちに、以前話にあったパーティーの日程が近づいてきた。心なしか屋敷の中が慌ただしい。
(そういえば、未だ帰ってこない"元アルフレッドの服"も本来このパーティー用に仕立てんだっけか。)
貴族たちのパーティーというのは興味があるが、ついあの服の一件での仕置きを連想してしまい苦い思いになる。
「ギルバートくん。テーブルセッティングを手伝ってもらえますか?」
「はい、わかりました。」
ハワードさんの指示のもと、俺もパーティーの準備に駆り出される。
メイン会場となるホールのセッティングが終わると、アルフレッドが呼んでいるから部屋へ行くようにとメイドから伝言を受け取った。
いつもなら「茶を持ってこい」とか「掃除しろ」とか用件まで言ってくるのに、今日は「部屋へ来い」とだけだ。
一体何の用だろうかと思いつつ部屋のドアをノックする。
「ギルバートです。」
「ああ、入れ。」
とりあえず中に誰がいるのかわからないので最初は執事然とした態度を取る。そしてアルフレッド以外 誰もいないことを確認してフッと力を抜いた。
「それで、何の用だ?」
「ほら、お前の服だ。」
「あっ!この服・・・」
それはかつて買い取らされたあの服だった。
「あれ?少し小さくなってる?」
「お前のサイズに合わせた。」
「なんでそんなこと・・・」
「今度のパーティー、お前もこれを着て出ろ。」
「は?いやいや。執事がこんないい服着てたらおかしいだろ。」
「そう思って装飾は減らしてある。」
「あ、ほんとだ・・・」
(まあこれなら質が良すぎる執事服と見えなくも・・・いや、やっぱ無理があるな・・・)
自分がこんな良いものを着て行ったところでどうするのだのいう困惑顔でアルフレッドを見れば、フッと力を抜いたような笑みが返ってきた。
「一度汚した服とはいえ、せっかく買い取ったんだ。着る機会があった方がいいだろ?」
「ぐっ・・・そのことは・・・」
「着る度に思い出せるだろ?」
「なっ・・・」
(もしかしてそれが目的か・・・?)
少し感謝しかけた自分がバカらしくなる。アルフレッドが親切心でサイズを直すなんてことをするはずがなかった。
「普段の執事服でいい。」
「ダメだ。これを着ろ。」
不貞腐れ気味に普段の制服でいいと言えば、アルフレッドに「主人命令だ」と有無を言わさず却下される。
「はあ・・・わかったよ・・・」
俺は渋々承諾して、複雑な心境で服を受け取った。
あんなことを言われると、この服を見るたびにあの日のことを思い出してしまう。
一度でいいから着てみたいと思っていた服を手に入れたのにも関わらず、俺は浮かない気持ちで仕事に戻った。
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