悪役令嬢の兄のやり直し〜侯爵家のゴーストと呼ばれた兄ですが、せめて妹だけは幸せにしたいと思います〜

ゆう

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やり直し

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それからしばらくゾーイは僕に手紙を送ってきた。

僕は心から楽しみにしていたそれをアリサに見せて、返事用の手紙を用意してもらう。

「よかったですね、坊っちゃん。お友達ができたみたいで。」
「うん。彼女、とても素敵な子なんだ。」

そう言うとアリサは温かく安心したような微笑みを浮かべた。

彼女からの手紙には、前世同様この間のお茶会のことや自身の近況が綴られている。懐かしい内容に気づけば小さく微笑んでいると、扉を叩く音がした。

「お兄さま?」
「ティア。どうしたの?」

入ってきたのはティアだった。
どうやら暇を持て余して遊びにきたらしい。

「一緒に遊びませんか?」

おずおずと言った様子でそう言った彼女の頭を撫でる。

「わかった。でも手紙を書くから、10分ほど待ってもらえるかな?」
「お手紙?」
「そう。ゾーイという素敵な女の子からだよ。」

そう言ってゾーイの手紙を見せるとティアの機嫌が急に悪くなった。

「素敵な女の子って、ティアより?」

膨れっ面をした彼女がそんなことを言ってくる。ゾーイと比較されたようで嫌だったのだろうか。

「ティアは僕にとって世界一素敵な妹だよ。彼女は友達なんだ。」

そう言えばティアの機嫌はいくらか直って、「じゃあ、待ってます。」とソファに座った。

そして僕は早速ペンを取り返事を綴る。

内容は前世の時とそう変わりはしないが、そこにティアの話が加わった。今世では少なくとも僕の方から連絡を取らなくなるなんてことは絶対にしない?

そう思いながら完成した手紙をアリサに渡す。

そうして、彼女との文通が始まったことに喜びつつ僕はティアの元へ向かった。



その数日後、彼女から返事が届いた。相変わらず質問がびっしり綴られた手紙にクスッと笑みをこぼす。
こんなにも自分に関心を持ってくれるのは後にも先にも彼女だけだろう。

僕はありのままに彼女に現状を話す。ゾーイならどんな情けない自分を見せても僕を1人の人として見てくれる。
それがわかっているからこそ彼女との手紙のやり取りはとても心安らぐものだった。

そうしてある日の手紙では、彼女は両親の僕に対する扱いに憤り、「私のお家においでよ!」と言ってくれた。前世では、ここで家族の愛情に満たされている彼女に嫉妬し、連絡を途絶えさせてしまったのだった。

でも今回の僕は違う。何なら僕を養子にしかねない彼女の勢いに微笑をもらしながら再びペンを執る。

『怒ってくれてありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。でも僕にはティアもいるし、この家で頑張ってみる。ただそれとは別に、いつかゾーイの家に遊びに行けたら嬉しいです。』

そうしてその手紙をアリサに託した。これで彼女との文通は続いていくはずだ。
もう「あの時彼女の手を取っていれば」なんて後悔は絶対にしない。



そうしてしばらく経った頃、再びゾーイからの手紙が届いた。

『そう…わかったわ。でも辛くなったらいつでも私を頼ってね。それと、うちに遊びに来たいのなら喜んで招待するわ!今度の日曜はいかがかしら?家族みんなで出迎えるからぜひ来てくれると嬉しいわ。』

彼女はさっそく僕を家へ招待してくれるらしい。彼女の気遣いが嬉しくてふっと笑みが溢れた。

でも両親は僕が外に出ることを許してくれるだろうか。そう不安に思った僕はアリサに相談した。

「言ってみなければ分かりませんが…きっと大丈夫ですよ。アリサも一緒にお願いしてみましょう。」 

そう言ってくれた彼女にいくらか勇気づけられて、僕は両親が家に戻ってきたタイミングを見計らって話をしに行った。


「お父様、お母様…お願いがあるのですが。」

僕が話しかけるとあからさまに不快な顔をする2人に、慣れていても胸がズキズキと痛み出す。

「私たちは暇じゃないんだ。さっさとしろ。」

お父様の言葉に僕は顔が強張るのを感じたが、後ろでアリサが肩に手を置いてくれる。そして僕はまっすぐ2人を見て口を開いた。

「友達の家に招待されたので、遊びに行ってもいいでしょうか。」
「友達?外に出していないお前にそんなもの…。」

そう言いかけたお父様だが僕の手の中にある手紙を見てお母様を見た。

「おい、どういうことだ?」
「し、知らないわ。どこにもこの子を出してないもの。どうしてこんなものが…。」

そうして再び僕に向き直ったお父様が鋭く僕を睨み付ける。

「お前、アダムス家の令嬢とどこで知り合った。」
「我が家へのお茶会にいらしていた時に…迷子になっていた彼女を会場まで案内したのです。」

そう言うと、お父様は「はぁ」とため息をついてその手紙をまじまじと見た。

「ダメだ。お前のような出来損ないを外に出すことはできん。本来なら文通もやめさせたいが、今更か…。」
「そ、そんな…。」

すんなり行かないと思っていたとは言え取りつく島もない。それどころか、下手をしたら文通まで禁止されてしまいそうだ。

そうなるよりはと引き下がろうとした僕だが、そこで後ろに控えていたアリサが口を開いた。

「旦那様。差し出がましいかもしれませんが許可いただけないでしょうか?招待を下さったアダムス家のご令嬢はお坊ちゃまの容姿も事情もご存じですわ。アダムス家の方達だけでの集まりのようですし、問題にはならないかと。」
「ふむ…だがそのご令嬢の家族から噂が広がる可能性もあるのでは?」
「そもそも一生家に閉じ込めておくことはできませんわ。坊っちゃんが貴族でいる限り遅かれ早かれ社交界には知られること。それが早まったと思えば良いのでは無いでしょうか。」

そう言うと「貴族でいる限り、か…」とお父様は考え込み出した。

「いいだろう。」

その言葉に僕はパァッと顔をあげる。なんだか早くも廃嫡を検討されている気がするが、それこそ遅かれ早かれやってくる問題だ。

「アダムス家は伯爵家だが勢いのある家門だ。無下にするよりは参加した方がいい。だが、あまり無能をさらすなよ。」
「は、はい。ご許可いただきありがとうございます。」

そうして深く礼をして2人の前を後にした。
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