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幽霊屋敷
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シンシアさんが見送りはいらないと頑なに言うので、せめてもと玄関先まで見送った。
お父様はだいぶ彼女と馴染んだようだけど、お母様は始終苦い表情をしていた。
「彼女、きっと平民よ。それなのにあんな風に誤魔化して馴れ馴れしく話しかけてくるなんて・・・」
「そうか?あんなに貴賓があるんだ。元々貴族の出というのは嘘じゃないだろう。」
「貴方まで彼女の肩を持つなんて。」
「肩を持っている訳では・・・どちらにしたってせっかく友好的な人なんだし仲良くしておいて損はないだろう。」
そんな両親達の会話を聞き流しつつ私は自室へと戻った。
(あら?なんだか朝と物の配置が変わっているような・・・)
部屋の中にほんの少し違和感がある。物の場所が変わっているようだけど、お母様でも入ってきたのかしら。
そのことが気になりつつも、今のお母様は機嫌が悪いし聞くのはやめておこうと考えた。私は荷物を片付けてベッドにダイブする。
「はぁ、疲れた・・・」
明日も学校だなんて憂鬱だ。でもどんなに嫌がったって絶対に行けと言われるに違いない。
(こんな人生なら、無くても良かったのに・・・)
自然と涙が出てきた私は、倦怠感に任せるように目を閉じた。眠りに落ちる直前に、小さな女の子の笑い声が聞こえた気がする。
その日、妙にリアルな夢を見た。
それというのも、舞台はこの家で、なぜかシンシアさんがいるのだ。
シンシアさんは裕福な子爵家の娘で、政略結婚でこの家に住む伯爵家に嫁いできたようだ。2人の仲は良くも悪くもなく、生活には支障が無さそうに見えた。
でも一つだけ問題があった。それはシンシアさんに子供ができないこと。
シンシアさん自身も子供を強く望み、営み自体はしていたようだけど、一向に子供を授かる気配はなかった。そのことに苛立ち始めた相手の伯爵は、妾を家に連れてきた。
その妾との間に男の子を授かった伯爵は、シンシアさんよりその妾と子供を大事にし始める。いつしかその3人が家族としての絆を深め、シンシアさんの居場所は無くなっていった。
それでも、それを仕方のないことだと受け入れていたシンシアさんは、妾の子供を我が子のように可愛がった。
そんなある日。
「おくしゃま、これ、あげゆ。」
可愛がっていた妾の子がクッキーを持ってきた。舌足らずな様子が可愛いらしい。シンシアさんもそう思ったのか頭を優しく撫でている。
「まあ、私にくれるの?」
「うん!おいしかったから、あげゆの。これおくさまのぶん。」
「ふふ、優しいのね。ありがとう。では頂こうかしら。」
そしてそのクッキーを食べた。だけどそのすぐ後・・・
「ゴホッ、ガハッ・・・」
シンシアさんが血を吐いて床に倒れた。
「おくしゃま!?」
子供はどうして良いのか分からないというようにあたふたしている。
「夫を・・・伯爵様を・・・呼んで・・・っ!」
「う、うん!よんでくゆ!」
子供は慌てて部屋を出て行った。その間にもシンシアさんは血を吐き続けている。
そうしてしばらくした後、伯爵と妾の女性が連れ立って現れた。そのゆったりとした様子に違和感を覚える。
「まだ生きておったのか。」
「っ!?」
冷たい表情でシンシアさんを見下ろす伯爵の言葉に、すでに声は出ないものの驚愕の表情を浮かべる。
「まだ物の区別も付かない子供が持ってきたものを食べるなんて、お馬鹿ね。」
「お前の実家には子供がままごとで持ってきたおもちゃを謝って食べてしまい死んだと報告しておく。」
「どう・・・して・・・?」
「跡継ぎは生まれたし、お前の家の援助が無くてもやっていける。もはやお前は不要だ。むしろお荷物だ。」
「私たちの幸せのために、早くいなくなってちょうだい?」
「そんな・・・わたし、は・・・」
涙を流して悲しむシンシアさんを気にもかけず、2人は冷めた表情で見下ろすばかりだ。
「毒の量が少なかったのかしら?一命を取り留められても困るし追加で飲ませますか?」
「ああ、そうだな。」
そういった2人はシンシアさんを仰向けにして、手に持っていた小瓶の中身を口に注いだ。
「ゲホッ、やめ・・・」
そうして、懇願も虚しく、シンシアさんは息を引き取った。
お父様はだいぶ彼女と馴染んだようだけど、お母様は始終苦い表情をしていた。
「彼女、きっと平民よ。それなのにあんな風に誤魔化して馴れ馴れしく話しかけてくるなんて・・・」
「そうか?あんなに貴賓があるんだ。元々貴族の出というのは嘘じゃないだろう。」
「貴方まで彼女の肩を持つなんて。」
「肩を持っている訳では・・・どちらにしたってせっかく友好的な人なんだし仲良くしておいて損はないだろう。」
そんな両親達の会話を聞き流しつつ私は自室へと戻った。
(あら?なんだか朝と物の配置が変わっているような・・・)
部屋の中にほんの少し違和感がある。物の場所が変わっているようだけど、お母様でも入ってきたのかしら。
そのことが気になりつつも、今のお母様は機嫌が悪いし聞くのはやめておこうと考えた。私は荷物を片付けてベッドにダイブする。
「はぁ、疲れた・・・」
明日も学校だなんて憂鬱だ。でもどんなに嫌がったって絶対に行けと言われるに違いない。
(こんな人生なら、無くても良かったのに・・・)
自然と涙が出てきた私は、倦怠感に任せるように目を閉じた。眠りに落ちる直前に、小さな女の子の笑い声が聞こえた気がする。
その日、妙にリアルな夢を見た。
それというのも、舞台はこの家で、なぜかシンシアさんがいるのだ。
シンシアさんは裕福な子爵家の娘で、政略結婚でこの家に住む伯爵家に嫁いできたようだ。2人の仲は良くも悪くもなく、生活には支障が無さそうに見えた。
でも一つだけ問題があった。それはシンシアさんに子供ができないこと。
シンシアさん自身も子供を強く望み、営み自体はしていたようだけど、一向に子供を授かる気配はなかった。そのことに苛立ち始めた相手の伯爵は、妾を家に連れてきた。
その妾との間に男の子を授かった伯爵は、シンシアさんよりその妾と子供を大事にし始める。いつしかその3人が家族としての絆を深め、シンシアさんの居場所は無くなっていった。
それでも、それを仕方のないことだと受け入れていたシンシアさんは、妾の子供を我が子のように可愛がった。
そんなある日。
「おくしゃま、これ、あげゆ。」
可愛がっていた妾の子がクッキーを持ってきた。舌足らずな様子が可愛いらしい。シンシアさんもそう思ったのか頭を優しく撫でている。
「まあ、私にくれるの?」
「うん!おいしかったから、あげゆの。これおくさまのぶん。」
「ふふ、優しいのね。ありがとう。では頂こうかしら。」
そしてそのクッキーを食べた。だけどそのすぐ後・・・
「ゴホッ、ガハッ・・・」
シンシアさんが血を吐いて床に倒れた。
「おくしゃま!?」
子供はどうして良いのか分からないというようにあたふたしている。
「夫を・・・伯爵様を・・・呼んで・・・っ!」
「う、うん!よんでくゆ!」
子供は慌てて部屋を出て行った。その間にもシンシアさんは血を吐き続けている。
そうしてしばらくした後、伯爵と妾の女性が連れ立って現れた。そのゆったりとした様子に違和感を覚える。
「まだ生きておったのか。」
「っ!?」
冷たい表情でシンシアさんを見下ろす伯爵の言葉に、すでに声は出ないものの驚愕の表情を浮かべる。
「まだ物の区別も付かない子供が持ってきたものを食べるなんて、お馬鹿ね。」
「お前の実家には子供がままごとで持ってきたおもちゃを謝って食べてしまい死んだと報告しておく。」
「どう・・・して・・・?」
「跡継ぎは生まれたし、お前の家の援助が無くてもやっていける。もはやお前は不要だ。むしろお荷物だ。」
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「そんな・・・わたし、は・・・」
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「毒の量が少なかったのかしら?一命を取り留められても困るし追加で飲ませますか?」
「ああ、そうだな。」
そういった2人はシンシアさんを仰向けにして、手に持っていた小瓶の中身を口に注いだ。
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そうして、懇願も虚しく、シンシアさんは息を引き取った。
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