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第3章 絡まった糸をたぐり寄せれば編
心は儚い、コワレモノ6。
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大内裏を反時計回りで、超特急で回り、清涼殿についた頃には、陽が傾きかけていた。
「・・・・疲れた・・・。」
グテっとしたいところを、かろうじで繋ぎ止め、時計回りで回ってきた章平様と合流する。
お互い、さほど傷はないもののそれでも、私は、今更ながら自身の傷に気がつく。
どうりで、回っている時から、蒼月の機嫌がすこぶる悪いわけだ。
「章平様、有難うございます。助かりました。」
「いや、俺はそこまで何かをやったわけでは無いけど、朱雀殿が容赦無くて。」
「何となく理由が私の様な気がしますので、ご迷惑をお掛け致しました。」
と、誤っておく。
これは確実にお説教コースだ。
「一先、白虎の話だとお上と、宮様と、晴明様だけのようですので、上がりましょうか。」
と、簡単に砂埃を落とし、髪の毛も綺麗に整える。
着替えたいところではあるけれども、束帯の半分返り血、半分自身の血。
冷静に考えると私はどこぞの殺人現場でも行ってきたのだろうかという、出立ちである。
章平様も、出血に関しては少ないものの、多少の破れはある。
「青龍着替えると言う、選択肢はないよね?」
「玄武にひん剥かれて、泣かれたいのであれば、ある。」
「あ、いや遠慮いたします。」
「姫さん、俺もいいのか?」
「いい何も協力者な訳で、大丈夫。」
緊張した面持ちの章平様の隣に立つと、清涼殿へと入室する。
室内に入れば、まぁ予想通りの反応が表情を見て分かる。
「お待たせいたしました。」
用意された場所に座り、頭を下げる。
「時平こたびの状況を教えよ。」
「はい。大内裏に施されていたものは、”呪いの壺”を使ったモノで、それに伴い妖がおりましたが、私と章平殿の二人で調伏済みでございます。今回の首謀者は捉え、後ほど事情を聞こうかと存じております。普通に捉えていては逃げるでしょうから、配下のものを付けます。大内裏全体に埋められていた壺も全て破壊済みです。後日日を改めて、四角祭を行えばよろしいかと。」
「して、こたびの狙いはなんだったのだ?」
「藤の長です。何となく事情も分かりますが、一族の問題は一族内で解決するよう仕向ければ良いかと。因果応報ですね。」
ふふっと、笑を浮かべる。
「今回の件で気になる事もございましたので、後ほど晴明様にもご相談したいことがございます。ご報告は以上でございます。」
「二人ともご苦労であった。」
「「有難うございます。」」
お上と春宮様が退出され、私と章平様、晴明様の三人となった。
春宮様は何か言いたげだったけれども。
菊華は嫁だけど、時平の時は専属の陰陽師見習いみたいなものですもの。
「晴明様、こちら見られたことございますか?」
差し出したのは、絢音の胸に埋め込まれていた石の破片だ。
色を失ってはいるものの、赤黒さはそのままである。
「それは?」
「今回の主防犯の鎖骨下に埋まっておりました。以前見たときは違う色だったのですが、埋め込まれたのか、埋め込んだのか定かではありませんが、左京区の妖が消えていた件に関わりがある石かと。あと、人格に多少少なからず影響が出るみたいみたいです。」
石を晴明様に差し出す。
石を受け取りじっと観察する晴明様の様子を見つつ、章平様が気づいた様に尋ねてくる。
「それ、先日奪われたやつだよな?」
「そうですね。色んなものが凝固された感じの。あまりいいものでは無いですし、力自体はもうないので大丈夫ですけれど。」
「ということは、街の方は問題ないということだな。」
「原因は排除したから。問題ないですね。」
「じゃあ、あいつらにも言っておく。」
「それがいいですね。大内裏の方はもうそろそろ戻ってくるんじゃないですか?」
街の妖達も逞しいが、大内裏の妖達も逞しい。
なにせ、私の結界張りなどモノともしないのだからある意味強い。
「時平、これはわしが預かっても良いかの?」
「もとよりそのつもりです。よろしくお願いいたします。私はそろそろ梨壺に戻ります。宮様言いたいことが多そうでしたし、青龍も朱雀もみんないい笑顔すぎて怖いんですもの。」
「それがよかろう。」
「あ、章平様、これ上げます。私特性の傷薬です。ある程度の傷であればすぐ治ります。まぁあまりに酷いと自身の霊力を吸収しますが。重症じゃなければ平気です。」
小さな四角い箱の容器に入れた塗り薬を手渡す。
ちなみにこれまだ在庫は大量にある。
暇すぎて作りすぎたのだ。
「なくなったら言ってくださいね。まだ大量に在庫ありますので。」
「ありがとう。」
「いえ。それでは、晴明様、章平様本日は失礼いたします。ご協力ありがとうございました。」
「わしらもそろそろ帰ろうかの。弘徽殿の方は、主上から説明が合ってるだろうから問題無いじゃろう。」
「ありがとうございます。」
「あ、俺一度陰陽寮に戻らねぇと。」
「章平様、父様・・・・、じゃなかった陰陽頭にもお礼伝えてください。」
「父様?」
「陰陽頭、私の父様に瓜二つなんですもの。陰陽寮にでお会いした時、血筋って凄いなって思っちゃいました。」
くすくすと笑いながら、清涼殿を出ると、そこで二人と別れた。
私はというと、青龍に抱きかかえられ、梨壺の裏側まで、一気に移動した。
「・・・・疲れた・・・。」
グテっとしたいところを、かろうじで繋ぎ止め、時計回りで回ってきた章平様と合流する。
お互い、さほど傷はないもののそれでも、私は、今更ながら自身の傷に気がつく。
どうりで、回っている時から、蒼月の機嫌がすこぶる悪いわけだ。
「章平様、有難うございます。助かりました。」
「いや、俺はそこまで何かをやったわけでは無いけど、朱雀殿が容赦無くて。」
「何となく理由が私の様な気がしますので、ご迷惑をお掛け致しました。」
と、誤っておく。
これは確実にお説教コースだ。
「一先、白虎の話だとお上と、宮様と、晴明様だけのようですので、上がりましょうか。」
と、簡単に砂埃を落とし、髪の毛も綺麗に整える。
着替えたいところではあるけれども、束帯の半分返り血、半分自身の血。
冷静に考えると私はどこぞの殺人現場でも行ってきたのだろうかという、出立ちである。
章平様も、出血に関しては少ないものの、多少の破れはある。
「青龍着替えると言う、選択肢はないよね?」
「玄武にひん剥かれて、泣かれたいのであれば、ある。」
「あ、いや遠慮いたします。」
「姫さん、俺もいいのか?」
「いい何も協力者な訳で、大丈夫。」
緊張した面持ちの章平様の隣に立つと、清涼殿へと入室する。
室内に入れば、まぁ予想通りの反応が表情を見て分かる。
「お待たせいたしました。」
用意された場所に座り、頭を下げる。
「時平こたびの状況を教えよ。」
「はい。大内裏に施されていたものは、”呪いの壺”を使ったモノで、それに伴い妖がおりましたが、私と章平殿の二人で調伏済みでございます。今回の首謀者は捉え、後ほど事情を聞こうかと存じております。普通に捉えていては逃げるでしょうから、配下のものを付けます。大内裏全体に埋められていた壺も全て破壊済みです。後日日を改めて、四角祭を行えばよろしいかと。」
「して、こたびの狙いはなんだったのだ?」
「藤の長です。何となく事情も分かりますが、一族の問題は一族内で解決するよう仕向ければ良いかと。因果応報ですね。」
ふふっと、笑を浮かべる。
「今回の件で気になる事もございましたので、後ほど晴明様にもご相談したいことがございます。ご報告は以上でございます。」
「二人ともご苦労であった。」
「「有難うございます。」」
お上と春宮様が退出され、私と章平様、晴明様の三人となった。
春宮様は何か言いたげだったけれども。
菊華は嫁だけど、時平の時は専属の陰陽師見習いみたいなものですもの。
「晴明様、こちら見られたことございますか?」
差し出したのは、絢音の胸に埋め込まれていた石の破片だ。
色を失ってはいるものの、赤黒さはそのままである。
「それは?」
「今回の主防犯の鎖骨下に埋まっておりました。以前見たときは違う色だったのですが、埋め込まれたのか、埋め込んだのか定かではありませんが、左京区の妖が消えていた件に関わりがある石かと。あと、人格に多少少なからず影響が出るみたいみたいです。」
石を晴明様に差し出す。
石を受け取りじっと観察する晴明様の様子を見つつ、章平様が気づいた様に尋ねてくる。
「それ、先日奪われたやつだよな?」
「そうですね。色んなものが凝固された感じの。あまりいいものでは無いですし、力自体はもうないので大丈夫ですけれど。」
「ということは、街の方は問題ないということだな。」
「原因は排除したから。問題ないですね。」
「じゃあ、あいつらにも言っておく。」
「それがいいですね。大内裏の方はもうそろそろ戻ってくるんじゃないですか?」
街の妖達も逞しいが、大内裏の妖達も逞しい。
なにせ、私の結界張りなどモノともしないのだからある意味強い。
「時平、これはわしが預かっても良いかの?」
「もとよりそのつもりです。よろしくお願いいたします。私はそろそろ梨壺に戻ります。宮様言いたいことが多そうでしたし、青龍も朱雀もみんないい笑顔すぎて怖いんですもの。」
「それがよかろう。」
「あ、章平様、これ上げます。私特性の傷薬です。ある程度の傷であればすぐ治ります。まぁあまりに酷いと自身の霊力を吸収しますが。重症じゃなければ平気です。」
小さな四角い箱の容器に入れた塗り薬を手渡す。
ちなみにこれまだ在庫は大量にある。
暇すぎて作りすぎたのだ。
「なくなったら言ってくださいね。まだ大量に在庫ありますので。」
「ありがとう。」
「いえ。それでは、晴明様、章平様本日は失礼いたします。ご協力ありがとうございました。」
「わしらもそろそろ帰ろうかの。弘徽殿の方は、主上から説明が合ってるだろうから問題無いじゃろう。」
「ありがとうございます。」
「あ、俺一度陰陽寮に戻らねぇと。」
「章平様、父様・・・・、じゃなかった陰陽頭にもお礼伝えてください。」
「父様?」
「陰陽頭、私の父様に瓜二つなんですもの。陰陽寮にでお会いした時、血筋って凄いなって思っちゃいました。」
くすくすと笑いながら、清涼殿を出ると、そこで二人と別れた。
私はというと、青龍に抱きかかえられ、梨壺の裏側まで、一気に移動した。
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