Deity

谷山佳与

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第2章 目覚めと、自覚と、狙う者編

琥珀とデート。

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壷装束に着替えた私は玄関で琥珀が来るのを待っていた。
どうせなら西側のエリアに出かけたい。干し桃も欲しいからな~。ちょっと遠いけど西市に行ってから西寺にでも連れていってもらおうかな?
伏見稲荷大社行きたいけれどあそこは南だから、朱桜とかな~。
先日、晴明様経由でお給金を貰ったので、なにかいいものがあれば買う予定だ。
一応青にぃに、いくらあれば大丈夫か聞いたので、残りは若葉様に渡した。
食費とか、そういったものに使って欲しいと。なので、食べたいものもリクエストしている。
是非ともそれに使っていただきたい。

「妃捺、お待たせ。ちょっと手こずった。」

と、やってきた琥珀の色彩が、いつもと違い私自身驚いた。
髪色は黒。瞳の色も黒に近い色彩になっている。

「妃捺?」
「あ、いや、色彩も変えれるだなって思って。」
「あぁ、そうだな。めったにしないけど。似合わないか?」
「ううん。新鮮なだけ。それよりも私市に行ければ、あとは琥珀が好きなところに行こうかと思っているのだけど。」
「あー、なら笠がいるな。」

琥珀の言葉に素直に頷けば、玄武姉ーと言いながら屋敷の奥へと戻っていった。
すぐに戻ってきた琥珀の手には、白い布地のついた笠を持っていた。
近くに行ったら被ったらいいと言われ、琥珀の片腕に抱き上げられると、そのまま屋根伝に市を目指してもらった。
屋敷から西市までは少し距離があるが、琥珀がかけてくれればあっという間だ。
移動中、他の人には強い風が吹いた位の感覚らしく、けして見つかることは無いらしい。
ただし、晴明様や私くらい鬼見の才が強ければ別らしい。

西市の近くの人気の無い路地に下ろしてもらうと、笠をかぶり琥珀と手をつなぐ。
今日は武官姿なので、お供の者のつもりなのだろう。
周りからどう見られているかわからないけど。
ただ、一つ言えるのは確実に女性陣が振り向くだろうなということ。
囲まれなければいいのだけど。
と、考えている内に市の入口に着いた。

「なにを見たいのです?」
「干し桃が欲しいの。後は琥珀の行きたいところに行きましょうか。」
「それならば、先に桃を見つけましょうか。」
「えぇ。」

一応お姫様と護衛武官を装った会話をする。
そのまま市の中を歩き出せば、いろいろな店先に立つ女性人に声をかけられる。
うん、予想通り。
離れる訳ではなく、しっかりと手をつないだままお店の人たちと話す琥珀は楽しいそうだなと、隣から見ていた。
元々琥珀は社交的で、良く周りには人だかりが出来ていたことを思い出す。
もう少し自由に動き回ってもらってもいいのだけれどな。
と思うのは、本音なのだが私の周りにいる神将達は基本私から離れる事を嫌う。
理由は分からないけれど、理由がなければ離れるという選択肢はないくらいにべったりだ。
おかげで、さみしい思いはしないのだがそれでいいのかと思ってしまったりする。
琥珀と朱桜は生まれた時から一緒だから、今更離れられても逆に私がさみしいんだろうな、と思うのでこのままでいいかという結論に至った。

「姫、この桃はいかがでしょうか?」

琥珀が見せた干し桃に視線をやれば、いい状態だ。
ちらりと、店先を見れば他にもいくつかいい桃がある。

「これと、あれとあそこの二つ。まとめっていただいて頂戴。」
「かしこまりました。」

笑を浮かべた琥珀は、そのまま店主に代金を払い私が指定した干し桃を買ってきてくれた。
周りの視線が気になる所だけど、気にせず散策を続ける事にした。
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