Deity

谷山佳与

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第2章 目覚めと、自覚と、狙う者編

五節舞2.

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『』→の会話はテレパシーの様なものとお考えください。



五節舞はそんなに早い舞いではない。どちらかというとゆっくりとした動作で舞っていく。
私自身のオリジナルの舞いのテンポが、ただただ早すぎるだけということだ。
それぞれの舞姫には春夏秋冬のそれぞれの季節の名前で呼ばれる。
春の舞姫、夏の舞姫とか。
あれ?そういえば、五節舞に偉らばれる姫君たちって、次期帝つまりは宮様の奥さん候補になるんじゃなかったかな?
教育の一貫でそんな話を聞いた気があった気もするけど、、、もしそれが正解だったとしたら、今、宮様の正妻が本来座る場所にいる私は、もれなくドロっとした後宮の争いに参加をしたのだろうか?
私にそんなつもりはなくとも、周りは勝手にそう勘違いするだろう。
それは勘弁していただきたい。
状況を九割受け止めた私は、小さくため息をついた。
まぁ直接ね、陛下達に話しちゃったしね。陛下っていってもむこうの癖で親戚の叔父さん的感覚なのだ。

『姫様、あまりため息つきませんと、春宮様がご心配そうにこちらを振り返っるえ?』

と、雪ねぇに言われた。
そもそも心配するような事があるのだろうか色々今更な気がするのですがね。

「うん、そうだね。それよりも今は舞いを楽しむわ。ありがとう」

雪ねぇの言葉に春宮様を見れば、ぱっちり視線が合った。相手からどの位見えているのかわからないけれども、とりあえず笑を浮かべてみた。
暫くして楽の音が聞こえ、舞いが始まった。火桶も近くに置いてあり、暖かさは十分だ。
四人の舞姫達は優雅に舞いを舞う。
衣装も豪華で、華やかだ。心地よい楽の音に耳を傾けながらも、のんびりとした気持ちで舞いを眺めていた。
舞いはつつがなく終え、この後は宴へと切り替わる。
私は宴よりも、舞いが終わってしまえば梨壺の状態が気がかりだ。
そろそろ朱桜も帰ってくる頃だろう。
帝が四人の舞姫に労いの言葉をかけ、そして、宴への準備が始まる。
私は雪ねぇに、目配せをすると同時に姿を消した状態の朱桜が帰ってきた。

『妃捺、梨壺の殿舎に異常物はなかった。が、確かにあそこだけ空気が淀んでいる。呪い系では無いな。まるで妃捺が居るであろう事が前提のモノだ。』
『というと?』
『直接かが、宮が居ないときにあの殿舎に来ている。』
『元は辿れるかしら?』
『それは俺でも難しい。きれいに消されているからな。』
『ありがとう朱桜。そのまま傍に控えていてくれるかしら?』
『あぁ。』

さて、問題はこの場所からどう退出するか。そしてどうやって梨壺へ向かうか。
の二つだ。
やっぱり時平で来るべきだった様な気がして仕方がない。
自由に話しかけれないのも、動けないのももどかしい。
すると、宮様が御簾の前まで移動してきた。

「菊華の君、少し抜け出さぬか?」
「えぇ。よろこんで。」

小声で話しかけ、御簾の下から手を握ってる状態で私は返事する。
両陛下は事前に把握ずみだったのか、なにも言わずに、笑顔で送り出してくれた。

渡殿にでる。
扇で顔を隠しながらも、宮様に手へを引かれながら内裏内、つまりは後宮の妃達と宮様達しか入れない場所へと向かう。
今日昇殿が許されているのは紫宸殿のみだ。その後ろの殿舎へは誰も入れない。
警護をしている武官なら問題ないだろうが、それ以外は女であろうと入れない。
その領域までは顔を隠し、恥じらいを見せながら歩いた。
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