昔の話

中臣鎌足の助

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1.懐かしい夢

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昔昔、あるところに、おじいさんとおばあさんが幸せに暮らしていました。
老後は、田舎に引越し、ほぼ自給自足で暮らしていました。

ある夜のこと、おばあさんは夢を見ました。
それは、とても懐かしく、楽しく、悲しく、美しく、残酷な夢でした。
そしてそれは、おばあさんとおじいさん、また、その仲間だった者達が旅をしていた頃の夢でした。

翌朝、おばあさんはその夢をおじいさんに話そうと思いました。
しかし、朝ごはんを用意していると忘れてしまいました。

その夜、おじいさんは過去の夢を見ました。
昨夜おばあさんが見た夢とほぼ同じような夢でした。
ひとつ違うかったのは、おばあさんと出会う前の夢もあったことくらいです。

翌朝、おじいさんは、朝食の時におばあさんに、夢のことを話しました。
すると、おばあさんも同じ夢を見たと言ってきました。

二人とも懐かしさに思いを馳せました。

「ばあさんや、懐かしいなぁ」

「ええ、そうですね。とても懐かしく、もうそんなに時が経ったのかと思うと。」

おばあさんは泣き出してしまいました。
でも、おばあさんは泣く気はありませんでした。
勝手に涙が出てしまったのです。

おじいさんはおばあさんを慰めることはしませんでした。
むかしむかしの、旅の辛さや楽しさ、それを知っていたからです。

そして、おじいさんも泣きました。

友や家族、様々なことを思い、どちらも泣きました。

そしてその夜、二人とも亡くなってしまいました。

とても、笑顔で亡くなっていました。


今からするお話は、むかしむかしの旅の話。
友との出会いや別れの話。
おばあさんとおじいさんの子供の話。

そんなお話。
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