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第十三話
こうしてはいられない、ブランシュは断りの文句を慌てて考える。
「あのー殿下、それに関しては」
「そうだった! 先日の暗殺者について、城中では巧妙に手引きされていたことと、コシェ王国北部方言を使っていたことしか分かっていない。それだけではトリベール侯爵家を疑うには不十分だ、と言ったんだ!」
リオネルは声が大きく、張りがあるため主張に割って入りづらい。渋々ブランシュはリオネルが話し終えるまで待つことにした。
とはいえ、リオネルはトリベール侯爵家に味方してくれている。ブランシュもリオネルを救った甲斐があったというものだ、しかしあらぬ疑いがかけられたところを見るに、何らかの策謀が感じられるとブランシュは察した。
だが、それだけでは全貌が掴めない。ところが、リオネルの疑問によっておおよそのことが分かることになる。
「あのとき、なぜだか魔法が使いづらくて反応が遅れてしまったんだ。原因がよく分からなくて困っている、何か知らないか?」
——リオネルが、魔法が使いづらく?
ブランシュは驚く。
「リオネル殿下も、魔法の使い手なのですか?」
「ああ! 極秘だが、コシェ王家は力素を操る力魔法の血筋だ、おかげで筋肉もよく発達する! ついでに魔法に対する耐性も常人よりはるかに高い!」
そこまで聞けば、ブランシュは頷くところばかりだ。
幼いころから、リオネルには魅了魔法が効かなかった。リオネルが魔法に対する耐性を持っているのなら納得だ、極秘とはいえ周囲も知っていることだろう。しかしそれならばなぜ——ブランシュが魅了魔法を使うことを懸念されなければならない? 懸念したのは誰だ? ——ブランシュは、やっと気付いた。
「封魔道具! あれは、私に対してじゃない! 殿下に対して魔法を使えなくするためだったのね!」
リオネルは見てのとおり、武芸に長けた立派な青年だ。そんな青年を暗殺するには、まさか大手を振って行うわけにもいかず、さりとてこっそりと暗殺者を送り込んでも返り討ちにしてしまう。城にいる間は人目もあり、毒を仕込むのも何かと面倒だ。ならば、リオネルに弱ってもらうしかない。
封魔道具、あれは魔法の使い手であれば近くにいるだけで落ち着かず、違和感を覚えるものだ。加えて、身体機能に大きく関わりのありそうな力魔法を阻害できれば、確実にリオネルは動きづらくなる。そこを狙われたのだ。封魔道具を持ち込まれても自然な形で、なおかつブランシュが持ってくるのであれば暗殺を仕組んだ張本人たちが用意する必要もない。
ブランシュに魅了魔法を何とかするように、と言ってきたのは、ウスターシュだ。
「おそらく、私が封魔道具を用意できてしまったから、それを知ったウスターシュ様が仕組んだのではないでしょうか」
「あのー殿下、それに関しては」
「そうだった! 先日の暗殺者について、城中では巧妙に手引きされていたことと、コシェ王国北部方言を使っていたことしか分かっていない。それだけではトリベール侯爵家を疑うには不十分だ、と言ったんだ!」
リオネルは声が大きく、張りがあるため主張に割って入りづらい。渋々ブランシュはリオネルが話し終えるまで待つことにした。
とはいえ、リオネルはトリベール侯爵家に味方してくれている。ブランシュもリオネルを救った甲斐があったというものだ、しかしあらぬ疑いがかけられたところを見るに、何らかの策謀が感じられるとブランシュは察した。
だが、それだけでは全貌が掴めない。ところが、リオネルの疑問によっておおよそのことが分かることになる。
「あのとき、なぜだか魔法が使いづらくて反応が遅れてしまったんだ。原因がよく分からなくて困っている、何か知らないか?」
——リオネルが、魔法が使いづらく?
ブランシュは驚く。
「リオネル殿下も、魔法の使い手なのですか?」
「ああ! 極秘だが、コシェ王家は力素を操る力魔法の血筋だ、おかげで筋肉もよく発達する! ついでに魔法に対する耐性も常人よりはるかに高い!」
そこまで聞けば、ブランシュは頷くところばかりだ。
幼いころから、リオネルには魅了魔法が効かなかった。リオネルが魔法に対する耐性を持っているのなら納得だ、極秘とはいえ周囲も知っていることだろう。しかしそれならばなぜ——ブランシュが魅了魔法を使うことを懸念されなければならない? 懸念したのは誰だ? ——ブランシュは、やっと気付いた。
「封魔道具! あれは、私に対してじゃない! 殿下に対して魔法を使えなくするためだったのね!」
リオネルは見てのとおり、武芸に長けた立派な青年だ。そんな青年を暗殺するには、まさか大手を振って行うわけにもいかず、さりとてこっそりと暗殺者を送り込んでも返り討ちにしてしまう。城にいる間は人目もあり、毒を仕込むのも何かと面倒だ。ならば、リオネルに弱ってもらうしかない。
封魔道具、あれは魔法の使い手であれば近くにいるだけで落ち着かず、違和感を覚えるものだ。加えて、身体機能に大きく関わりのありそうな力魔法を阻害できれば、確実にリオネルは動きづらくなる。そこを狙われたのだ。封魔道具を持ち込まれても自然な形で、なおかつブランシュが持ってくるのであれば暗殺を仕組んだ張本人たちが用意する必要もない。
ブランシュに魅了魔法を何とかするように、と言ってきたのは、ウスターシュだ。
「おそらく、私が封魔道具を用意できてしまったから、それを知ったウスターシュ様が仕組んだのではないでしょうか」
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