魅了魔法の効かないあなたと婚約したくありません!〜麗しの侯爵令嬢、空回りする〜

ルーシャオ

文字の大きさ
13 / 22

第十三話

 こうしてはいられない、ブランシュは断りの文句を慌てて考える。

「あのー殿下、それに関しては」
「そうだった! 先日の暗殺者について、城中では巧妙に手引きされていたことと、コシェ王国北部方言を使っていたことしか分かっていない。それだけではトリベール侯爵家を疑うには不十分だ、と言ったんだ!」

 リオネルは声が大きく、張りがあるため主張に割って入りづらい。渋々ブランシュはリオネルが話し終えるまで待つことにした。

 とはいえ、リオネルはトリベール侯爵家に味方してくれている。ブランシュもリオネルを救った甲斐があったというものだ、しかしあらぬ疑いがかけられたところを見るに、何らかの策謀が感じられるとブランシュは察した。

 だが、それだけでは全貌が掴めない。ところが、リオネルの疑問によっておおよそのことが分かることになる。

「あのとき、なぜだか魔法が使いづらくて反応が遅れてしまったんだ。原因がよく分からなくて困っている、何か知らないか?」

 ——リオネルが、魔法が使いづらく?

 ブランシュは驚く。

「リオネル殿下も、魔法の使い手なのですか?」
「ああ! 極秘だが、コシェ王家は力素を操る力魔法の血筋だ、おかげで筋肉もよく発達する! ついでに魔法に対する耐性も常人よりはるかに高い!」

 そこまで聞けば、ブランシュは頷くところばかりだ。

 幼いころから、リオネルには魅了魔法が効かなかった。リオネルが魔法に対する耐性を持っているのなら納得だ、極秘とはいえ周囲も知っていることだろう。しかしそれならばなぜ——ブランシュが魅了魔法を使うことを懸念されなければならない? 懸念したのは誰だ? ——ブランシュは、やっと気付いた。

封魔道具アンチチャーム! あれは、私に対してじゃない! 殿下に対して魔法を使えなくするためだったのね!」
 リオネルは見てのとおり、武芸に長けた立派な青年だ。そんな青年を暗殺するには、まさか大手を振って行うわけにもいかず、さりとてこっそりと暗殺者を送り込んでも返り討ちにしてしまう。城にいる間は人目もあり、毒を仕込むのも何かと面倒だ。ならば、リオネルに弱ってもらうしかない。

 封魔道具アンチチャーム、あれは魔法の使い手であれば近くにいるだけで落ち着かず、違和感を覚えるものだ。加えて、身体機能に大きく関わりのありそうな力魔法を阻害できれば、確実にリオネルは動きづらくなる。そこを狙われたのだ。封魔道具アンチチャームを持ち込まれても自然な形で、なおかつブランシュが持ってくるのであれば暗殺を仕組んだ張本人たちが用意する必要もない。

 ブランシュに魅了魔法を何とかするように、と言ってきたのは、ウスターシュだ。

「おそらく、私が封魔道具アンチチャームを用意できてしまったから、それを知ったウスターシュ様が仕組んだのではないでしょうか」
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

必要とされなくても、私はここにいます

あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。 口出ししない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 ただ静かに、そこにいるだけ。 そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。 張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。 何かを勝ち取る物語ではない。 誰かを打ち負かす物語でもない。 それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。 これは、 声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、 何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。

夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。 真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。 そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。 数量は合っている。 だが、なぜか中身の重量だけが減っている。 違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。 そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。 しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。 それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。 「では、正式な監査をお願いいたします」 やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり―― 隠されていた不正はすべて暴かれる。 そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。 これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、 “正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。

子爵令嬢にとんでもないもの背負わせないでください

ルーシャオ
恋愛
ヘリナス子爵令嬢アリアーヌはもうじき処刑される——生まれつき豊穣の女神の紋章を持つアリアーヌは、異種族から熱烈に求婚されてきた。しかしやがてそれは過激化し、アリアーヌの住むセサニア王国への脅迫という形になってしまう。事態を重く見た宰相によりアリアーヌは偽装処刑となるが、状況がどうにもおかしい。まるで今まで何度も処刑されたかのように——そして何度も助けられ、何度も死んだかのようだった。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

第一王子と見捨てられた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
アナトール公爵令嬢のマリアは婚約者である第一王子のザイツからあしらわれていた。昼間お話することも、夜に身体を重ねることも、なにもなかったのだ。形だけの夫婦生活。ザイツ様の新しい婚約者になってやろうと躍起になるメイドたち。そんな中、ザイツは戦地に赴くと知らせが入った。夫婦関係なんてとっくに終わっていると思っていた矢先、マリアの前にザイツが現れたのだった。 お読みいただきありがとうございます。こちらの話は24話で完結とさせていただきます。この後は「第一王子と愛された公爵令嬢」に続いていきます。こちらもよろしくお願い致します。