淫魔王と堕ちた聖女 あなたの肉の棒をください

空廻ロジカ

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第一章 淫魔の王と淫夢《ゆめ》みる聖女

╰U╯Ⅱ.淫魔の王と淫夢《ゆめ》見る聖女(1)

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 地下通路は下水道へと繋がっていた。追ってくる気配はもう感じられないし、おそらくは追手をけたのだろう。

 地上の様子を探りたいが、別の兵士が少女を捜しているかもしれない。ウォルフスは少女に尋ねた。

「おい。この水道はどこまで繋がってんだ?」
「チェレステ=ラクイアの……、聖都の郊外までと聞いたわ」
「ならそこまで行ったほうがいいな。……もう歩けるだろう、降ろすぞ」

 少女を地面に降ろす際、ウォルフスの手がスカートに引っかかった。
 暗い地下道に、仄白く輝く太腿が露わになる。

「わりぃ……ん? この痣……」

 小さな真珠粒が縫い付けられたスカートを直してやりながら、ウォルフスは確信する。

 先ほど、通路を駆けながら思い出したのだ。少女はウォルフスの名前を知っていたし、ウォルフスの記憶の中にある子供の姿も、淡い金髪に水色の瞳だった。

 ――彼女は間違いなく、ウォルフスの『契約者』だ。

「お前、あの時の……えーと、何年前だ? やしろで泣いてた嬢ちゃんか」

 ウォルフスが尋ねると、少女はぱっと表情を明るくした。

「思い出してくれた?」
「ああ。確か……ミ、ミオ……」
「ミオリ」
「そうだったな。……でかくなったなぁ」

 ウォルフスは懐かしさに破顔一笑する。

 ウォルフスが少女――ミオリと出逢った頃、彼女はまだほんの子供だった。それからゆうに、十年は経っているのだろう。
 しかしミオリは頬を赤らめて反論した。

「もう、子供ではありません」

 その口ぶりにはわずかに不満がにじみ出ている。子供は、子供だと指摘されると決まってそう言うものだ。

「お前、聖女になったんだよな。どうしてこんな地下道を逃げてるんだ」

 ウォルフスはミオリの不平を軽く流して、疑問を口にした。

「それは……わたしが下着を濡らしてしまったから」
「は? ……ああ、おねしょか?」
「違います!」

 ミオリは頬を紅潮させて抗議する。

「淫夢を見て、下着が濡れてしまうんです!」

 ウォルフスの表情が固まった。
 彼はそっと息をき、気を取り直す。とりあえず、問題発言は無視することに決めた。

「それで、どうして兵士に追われることになるんだ」
「下着を濡らしたことがカサハに……女官長に知られて、神殿内で騒ぎになったの。誰か、男の人を招き入れてると思われたみたい」
「……それで?」

 ウォルフスは努めて表情を変えないようにしながら、ミオリに先を促した。

「反神殿派に騒ぎを聞きつけられて、今朝、彼らが神殿に攻めて来たの」
「えーと……つまり、お前の失態を口実に、反神殿派とやらは神殿に弓引いた、そういうことか?」
「たぶん、そう……」

 サウラ=ウルは政教一致の宗教国家だ。神殿に攻め入るということは、すなわち王権への叛逆となる。
 なんとも話が大きくなってきたものだ。

「それで俺をんだのか」
「ええ。兵士に追いかけられて、転んでしまったの。その時、太腿の痣が光って……」
「なるほどな」

 やっと得心がいった。

 ウォルフスは過去、ミオリと契約を交わしている。ウォルフスがどこに居ても、ミオリが呼べば駆け付ける――そういう術の込められた契約だ。

「わたし、あなたが現れて確信したの」
「何をだ?」

 ミオリは瞳を輝かせ、ウォルフスを見上げた。そして、満面の笑みを浮かべて言ったのだ。

「あなたこそが、わたしの夢見ていた肉の棒の持ち主だって……!!」
「……」

 ウォルフスは脱力すべきか、それとも怒るべきなのか判断がつかずに沈黙した。
 それをどう受け取ったのか、ミオリはさらに言い募る。

「ねぇ、ずっと欲しかったの。あなたの肉の棒……」
「おい、それ以上やめろ」
「え?」

 気まぐれではあるが、契約まで交わした相手だ。その相手が口をつけば肉の棒だの、そんな現実は御免蒙りたい。

「聖女ってのは世間知らずだよな。何を勘違いしてるのか知らねぇが、はそんなにいいモンじゃねぇぞ」
「嘘。カサハがあんなに恐れてるんだもの。リュート様が言ってたわ、カサハが肉の棒を恐れるのは、本当は肉の棒が好きで堪らないからだって……」

 カサハというのは女官長か。だがリュートとは何者だ。

「リュートって誰だ」
「サウラ=ウル第一王子。以前、神殿騎士をしていたの」

 ウォルフスは頭を抱えたくなった。

「とんでもねえ王子だな……」
「そんなことないわ。リュート様はとても物知りなの。わたしが淫夢を見るのも、肉の棒を求めているからだって教えてくれて……」

 ……頭痛がしてきそうだ。だが、引っかかることがある。

「そいつはお前に手を出したのか?」
「手?」

 ミオリは意味がわからないというように、自らの手を見つめた。

「あー……、肉の棒……を、お前にくれたのか?」
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