美月 ~芸能界の物語~

鎌倉結希

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第四章 スカウト(下)

28 東京観光

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美月の家族は沖縄に旅すると近いときに、母と私は上京した。

  予定の通りにそこで来日したヘリーンさんとスヴェン、あとヤンニおばさんの家族の七人も会って、二日間私たちはいろんな観光地に行った。伝統的なところの浅草寺や明治神宮以外東京スカイツリーみたい場所も入って、とても高い建物それは、その日はちょっと霞んだが上から東京のすべてが見られた。そして私たちは川の近くのレストランで昼食を食べているときに、次の行き先は秋葉原だとわかるとスヴェンは意外といきいきとなった。
  多分彼らはデンマーク人の組なので見られていると気づいたが。日本に引っ越してから長くスヴェンと会わない間に、まだ彼は十三歳なのに私より背が高くなっていたのは驚いたし、多分彼は百九十センチになるのではないかとヘリーンさんも言ったことがあった。「……でも日本で高すぎない?」
  まだ東京スカイツリーの近くの吾妻橋にいながらそうスヴェンは言うと、私が答えた。「いいでしょ、格好いいよ。なんで」
  「え、京都にいたとき道を聞こうとしたらさ、人はちょっと急いで逃げたみたい。百九十センチなら彼らはもう悲鳴をあげない?」
  「ただ日本人は外国人が苦手だよね」
  ヘリーンさんたちは関西空港で到着してから、彼女たちは大阪の周辺を旅すると新幹線に乗ってここに来た。数日前スヴェンの送った京都の写真と、今ヘリーンさんがカメラで見せているちゃんと撮ったそこの風景にも、いろんな寺に鮮やかな色の着物の姿で歩いた人もいて、伏見稲荷、あとは金閣寺の場所みたいに見ると、日本と言ったらこんなところじゃないか思った。せめて田んぼしかない私の家の又渡よりも穏やかで、美的にも歴史的にも貴重だから外国人にも称賛されて、観光客がひっきりなしに来日した理由かもしれない。
  一日目は秋葉原に行ったが、スヴェンの頼みで二日目にヘリーンさんはヤンニおばさんたちと別れて来た。もう親戚の女の子たちがいないのでスヴェンは堂々といろんなフィギュアの店に入って見ていた。
  フィギュアと言うと、一般にはただ鑑賞するために家に置く好きな漫画やアニメのキャラクターの像かもしれないが、実は大体の男に対してフィギュアをえらぶときに色気は暗黙の重点だった。一つの点はもしスカートがあったら、パンツをチラッと見られるか、しかもその作りはきれいかどうかって、スヴェンと前に話したことがあった。デンマークでこんな考え方の人はあまりいないらしいが、スヴェンは日本のものごとを摂取しすぎたせいかと思った。
  今までスヴェンの持っているフィギュアはパンチラを見られるのは多いけど、秋葉原の店みたいに足を開いて誘惑するお姉さんのフィギュアほどではなかった。実は多くのこんな風なフィギュアは、見てもいいか迷って数回店をまわるとやっと私はスヴェンと一緒にそのお姉さんのフィギュアを鑑賞しに来た。そうしながら、いつの間にかヘリーンさんは私たちの後ろに立って言った。「え、胸はこんなに大きいのに、まだきれいな形を保ったね」
  「は、はい!」私は答えた。
  ただ胸ならいいけど。
  このフィギュアは知らないアニメの魔女のキャラクターだった。色気のある黒と紫の服装で、彼女のスカートは長いけど箒に乗るときに引っ張っぱられてちょっと横から白色の下着が見えた。しかも箒に乗りすぎたか、彼女は頬を染めて妙に表情が満足そうだった。フィギュアのことをしばらくヘリーンさんと話すと私とスヴェンも沈黙して移動した。
  やっと日本に来れたからかヘリーンさんはフィギュアのことみたいにあまり文句を言わなかった。そのあと私たちは近くのゲーセンをまわってゲームをやっているほかの人を見ながら、スヴェンはメイドカフェに行くかと私を誘った。「え、どこ?」
  「もう昨日ネットで探したんだけど、さっきのお姉さんの店に行ってもいいかな?」
  それはそとの道にカフェの看板を持つメイド姿の女子という意味だった。ただ冗談かと思ったが、急いでまたネットで検索したスヴェンは『おんりーゆーメイド喫茶』という店をえらぶから一時間別行動するとヘリーンさんに伝えて、結局私も同行した。しばらく秋葉原の小道を歩くと私たちはその店に着いた。
  古そうなビルの二階にあってちょっと怪しかったこのカフェは、ドアを開けると笑顔で挨拶していたメイドさんがいた。

  「お帰りなさいご主人さまー!」

  こじんまりとしてきれいだったこの店は、検索したときにかわいい女の子が多いというレビューがあったのでスヴェンがえらんだ。多分私たちは若いからか妙にかわいがってくれると感じて、定番のメニューのオムライスとパスタをオーダーすると、ここは日本だよねとスヴェンは言った。「メイドのこと?」
  「そうだよ、もし家にメイドさんがいたらいいね。朝、起こしにくるとか」
  私は笑った。「お母さんがしてるでしょ」
  「彼女は全然もえじゃないよ」
  本当にメイドの服装より、日本の漫画の影響らしくて膝までのスカートとヘッドドレスでかわいい姿だったこのメイドたちは、多くの女の子はバイトをしているだけと説明しながら、スヴェンはちょっと離れたテーブルに指差してそれはオタクじゃないかと言った。「シッ!」
  スヴェンはそのまま『オタク』と言ったが、多分私たちはずっとデンマーク語でしゃべっていたのでその男は気づかなさそうだった。
  『オタク』の言葉は意味は多いけど、一般の定義はアニメと漫画に耽る人のことで、それはよくモテない、ダサい人と言うイメージがあった。フィギュアの店にいた人たちより、メイドカフェの近いテーブルの男はアニメから出たオタクのようで、ただ普通のシャツとズボンの姿だけどなぜそう見えるか私はわからなかった。そしてスヴェンは聞いた。「僕もオタクだと思う?」
  「でしょ、そんなに毎日アニメを見たら」
  スヴェンはまたこの人に一瞥すると言った。「そろそろ僕はこうなるかな……あ、セブ、さっきまたあのお姉さんは見てたんだ」
  「だれ?」
  「あの金髪の」
  「え、君は外国人だし」
  スヴェンは端正な顔立ちの男子だと言えた。彼はヘリーンさんと同じ明るい色の髪の毛を持って、微笑むときにヘリーンさんと似ていると私はいつも思ったが、そう言うと彼はあまり気に入らなさそうだった。でも……「いえいえ、僕じゃない。セブへだ、あの目線」
  「は?」
  「いいよ、セブはナンパして。電話番号を聞いて」
  「なに言ってんの?」
  「簡単でしょ。そしてセブの彼女を家にメイドとして働かせる」
  マジで?「バカ!自分でやりな」
  「じゃあ、僕はやる」
  「待ってよ!」

  その夜ホテルに戻って母と会うと、今日の出来事を伝えた方がいいかと思ったが、結局黙っていても母はメイドカフェに行ったことなどは疑わなさそうだった。
  私たちは同じ部屋にいた。母はまだ出かけた時のロングスカートの姿でベッドのヘッドボードに背をもたれて本を読んでいた。私は先にシャワーを浴びるか思ったとき、携帯が鳴った。見ると『あの客さんですね。今日本当にありがとうございました』というメッセージだった。
  SNSの通知だから、いつものチャットアプリと違った音だけど、母は気づかなかったらしい。プロフィール写真を見るとこの女子は『おんりーゆー』のメイド姿より普通の大学生に見えて、私はベッドにすわると返信した。『こっちらこそ。明日も頑張ってくださいね』
  『明日は休みですね』そして少しやり取りするとこのメッセージが来た、『ちょっと予定はないですけど』
  「お、お母さん」
  「うん?」
  母が振り向くと、私は続けた。「明日何時ですか?お母さんのお友だちと会うって」
  「一時ね、お昼も食べるでしょ」
  「そのあとは空いてますか」
  「うん、国立新美術館に行くつもりだけど、彰くんは予定がある?」
  「……なんでもないです」




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ノート

彰はもしかして、メイドさんの連絡先をゲットした…???

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