救えなかった男

流誠

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救えなかった男

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今夜もバイト先に向かう駅への道を歩く。
明け方まで降り続いた大雨の影響で道は水浸しで水溜まりを避けながら進んでゆく。
マジでバイト休みてー

俺は澁谷賢一。
今年で三十四になる。人とのコミニュケーションが苦手で仕事を転々とし、今は深夜のビルで清掃のバイトをしてる。
主任と呼ばれる黒田と言う男は俺より5つも年下だが、まぁ偉そうに指示してくるんだ。
毎日チームが別れるので、こいつと別チームになるとほぼ他の連中と喋ることはないので楽だ。ここで働いている連中は所謂コミュ障ってやつで、極力人との関わりを避けてる。俺もそうだが…
大体ひとつの現場に1週間ほど深夜に清掃を行い、また次の現場に向かう。
その繰り返し…

駅に向かう途中のコンビニに寄ってタバコとコーヒーを買う。
決まったルーティンでクソつまらない日々は過ぎていく。
朝仕事から帰り、飯を食べ、シャワーを浴び、DVDを観てから寝る。そして夕方起きて飯を食べTVを見てからバイトに向かう。
まぁこんな繰り返し。
彼女もいない。そりゃそうだ。自分が女だったらこんな男に興味はない。
いつからこんな無気力な奴になっちまったのかな。
20代の頃は地元でバンドを組んでギターを弾いていた。そこそこ人気もあって、東京に上京した。
一年経たずしてメンバーと不仲になり解散…人を嫌いになり、そこから転々とバイトを変えて食いつなげてきた。

早くこんな人生終わればいいのに…

人生は退屈との戦いで、暇つぶしみたいなもの。

いつもの路地を歩いていると、イヤホンしながら音楽聴いて外部の音は無音のはずなのに"チャリーン"と音がした。
いや聞こえた気がした。
イヤホンを取って辺りを見渡す。
ん。。指輪だ!
ハード系のトライバル柄で、中心には黒い石が埋め込まれてある。…凄い。
なんてクールなリングなんだろう。

手に取った瞬間、何処からともなく一匹の黒猫がすごい形相で噛みついてきた!
びっくりして後ろに仰け反った。
シャー、シャーと何かを訴えるようにズボンの裾を噛んで引っ張ってくる。。
俺は怖いのと怒りで黒猫を足から離すために何度も蹴った。
ズボンの裾が口から一瞬離れた隙に俺は駅に駆け出す!
すると黒猫も凄い形相で追いかけてきた。
「うわぁ」
俺は怖くなって大きな道路の信号を無視した。早足で車を避けながら進んで行く…ジェスチャーで車を制すようにしながら強引に進む。クラクションが鳴り響く中、後ろを見渡すと、まだ黒猫が追ってきている。
「俺が何をしたって言うんだよ」
「頼むよ…引き換えしてくれ」
そのまま黒猫は躊躇なく道路を走り込んできた。
そして、はねられた…
後に続く車に何度も押し潰されていく。
車が通る度にヘッドライトから映し出される肉の塊はもはや、原型を留めていなかった。
俺は無理矢理に自分を正当化していく。
早く忘れたいが為に…
俺は何度も追い返したんだ。
それを聞かないで道路に飛び出すからだ。。

ふと瞬間的にポケットに押し込んでいた指輪を取り出した。鈍く光る指輪は神々しくも、不気味に黒く輝いていた…
服装に合わせて付けようとまたポケットに戻した。
駅に着いて愕然とした。
駅の外にまで人で溢れ返っている。
「嘘だろ…」
人を掻き分けながら進むと改札口で車掌が説明している。
2つ前の駅で人身事故があり、運転再開は約1時間後になるという。
「マジかよー」
携帯を手に取り電話する。
「あ、澁谷です…すいません今駅なんですけど、人身事故で1時間以上かかるそうなんです。 はい…この駅各停で振替輸送のバスも30分に1本で違う路線まで行くのに1時間くらいかかってしまいます…あ、はい…わかりました。じゃ状況みてまたかけます。すいません…」

クソ!黒田め、電車が来ないんだからしょうがねぇだろ。

仕方なくどこが最後尾だかわからない人の列に並ぶ。皆がイラついていて今にも喧嘩になりそうな雰囲気だ。
30分過ぎた辺りで復旧再開のアナウンスが流れた。
おっ、助かった。
復旧1本目の電車が来たが、ホームも人で溢れ返っていてとても乗れる状況ではなかった…駅員が総出で対応をしているが、みんな早く乗りたくてホームに詰め寄ってくる…
押されながらも乗車口の最前列を確保した。。
ふと気配を感じて隣の列を見ると、派手な婆さんが俺を見てる…目を逸らさず真っ直ぐに。。なんだか心の中まても見透かされてるような眼光で気味が悪くなり、目を逸らした。
次は特急でこの駅はスルーだ。 
各停の悲しい所。
特急が来た。乗務員が溢れかえる人を制しながら黄色い線まで下がってくださいと大声で叫んでいた。
そして特急が目の前を通過する一瞬の出来事だった…

急に後ろの列から人が前に押し寄せられて、俺の斜め後ろにいた女性が勢いに押され、よろめきながらホームに転落した…同時に電車が突っ込んだ。
「ドン!!」

「きゃー」という悲鳴が響く。
一瞬何が起こったのか分からなかった。

電車は急停車して、しばらくドアも開かないまま乗務員たちが慌てて反対側の線路に降りて安否の確認を行なっている…
周りは騒然となり、
「うわー俺目の前で見ちゃったよー」「当分肉食べれねーよ」
「飛び込んだの?」
「いやぁ怖ーい」
そのうちに反対側の線路にブルーシートで囲われて警察も作業に加わり、駅には救急車も待機して騒々しくなった。一旦後ろのほうに下げられて、電車の人々も本来の乗車位置ではない場所で降ろされた。

警察や乗務員の対応を見て女性は生きていないと推測された。

まだ震えが止まらない。
彼女が落下する時に俺と目が合った…
あの悲しそうな表情が目に焼き付いて離れない。

さすがに電車はあきらめてバスでバイトに向かった。とても仕事が出来る状態ではなかったけど無言で没頭出来るし、何かして紛らわせたかったんだ。

朝になってバイトの帰り際に、例のホームを見た。定刻の時間からずれ込んでいるみたいだったが、何事も無かったように日常の時間は足早に進んでゆく…
昨日の夜から色々あって疲れた。
今日は早く寝よう。

夕方に目覚めて、まずタバコに火を付ける。またいつもの繰り返しが待ってる…
まだ昨夜の記憶が鮮明に焼き付いてる。
身支度して家を出ると、また道が濡れていた。
「あれっ」
寝てる間にまた雨が降ったのか。

いつものようにコンビニに寄り、タバコとコーヒーを買う。
水溜まりを交わしながら昨夜のことを思い出していた。
そうだっ!
昨日この辺りで音がして指輪を拾ったんだ。ポケットに入っ……
「あれっ、ないっ」
昨日と同じパーカーのポケットに入れていたのに、落としたか…おそらく部屋の何処かに落ちてるはず。。
考えながら歩いていると
「チャリーン」
「えっ」
嘘だろ……足下に指輪が。
まったく同じ指輪だ。。
拾い上げてまじまじと見た。まさか……
シャーっと言う声が聞こえたかと思った瞬間にズボンの裾を黒猫が噛んできた!
「うわぁ……」
驚いて鼓動が張り裂けそうなほどに脈打っていた。
「嘘だろ」たしかに昨日、車に何度も轢かれて…
いや、もしかしたら生きていたのか。
けど肉片のようなものが散らばっていたような。
とにかく現実に目の前でシャーシャーと噛み付いている。。
2日続けてこんな偶然なんかはない!生きてたんだ。。
安堵感と共に恐怖も襲ってきた。
足を振り蹴落とすように振り払いながら黒猫を無理矢理引き離した。
人生で初めて猫に恐怖を感じた…
霊的な存在にも感じて怖かった。
本当に恨みを買ったような、黒猫の尋常ではない禍々しさを感じたからだ。

怖くて怖くてまた全速力で走った。

昨夜と同じように、車の行き交う道路を
ジェスチャーでクラクションを制しながら強引に渡り切った。
「ハァ、ハァ…」
どうだーみたか黒猫!
黒猫は躊躇なく真っ直ぐに走り込んで来る…昨夜より進めている。
だが見ていられなかった。いや見たくなかった…中央分離帯を過ぎた辺りでやはりタイヤに押し潰された…
後続車も踏み付けていく。
「うぅ……」
だから何故追いかけてくるんだよ。
何故…

心の底から嫌な気持ちに苛まれながら、駅に着いて驚愕した!
「えっ!」「嘘だろ」
「マジ最悪だ」
こんなついてないことあるか。
2日連続で猫に襲われて、2日連続で人身事故…しかも同じ2つ前の駅。
この人の多さにイラついてくる。
また黒田に電話するのかよ…。

「あ、もしもし澁谷ですけど連続で申し訳ないんですけど、また今日も人身事故で1時間くらい遅れそうです。すみませ…えっ!何って昨日もだったんで…
えっ?いやいや昨日も人身事故で遅れたじゃないっすか?えっ、あ、いや。
わ…かりました…はい、お願いします。
電話を切った後、震えが止まらなかった。携帯の日付を見る
6月9日…昨日だ。。
「まさか……嘘だろ」
人の列に並びながらじっくり考えてみる。あの指輪も、あの黒猫も、この人身事故も昨日の…
「いやいや有り得ないだろ」
まてよ!…だったら。だったらこの後に女性の転落事故が起きる。。
ゆっくりと少しずつに進むホームへの階段。女性の顔と服装を思い出してみる。
たしか肩までのセミロングに、白いワンピースだった。最後に見たあの悲しそうな目が鮮明に甦る…
周りを白いワンピースの女性を探して見る。似た格好の女性が何人かいるが、違う。彼女ではない。
そしてホームにたどり着いた。

たしか、すぐ来た電車には乗り切れずに
1本遅らせたんだ。
人でごった返しているホームに電車がゆっくりと滑り込んできた。ドアが開くとどっと人の群れがなだれ込んで行く…

乗り切れない人たちが次の電車を待つ為にかろうじて列を作る。
その列に俺も並んだ。
そう。。たしか次の特急で彼女は押されて転落死したんだ。
なんだか手の平が汗ばんでくる。。
これから起きる事に身体が反応して緊張
を隠せない。
そもそも本当に起きるのか…
昨夜の記憶は夢じゃないだろうかと何度も自分を疑ったけど、こんなリアルな記憶など今まで一度もない。

けど後ろを見渡しても白いワンピースの女性はいない。
やっぱり日にちを勘違いしていて、デジャブのような偶然が重なったのかな…
無理矢理にでもあり得ない理由で納得させたかった。
横の列に視線を感じ斜め後ろを見た。
「あっ…」
昨夜もいた派手な婆さん…
鋭い眼光でやっぱり俺を見てる。。
足まで震えている。
これは…これはやはり昨日なのだ…
だったら彼女は確実に事故に巻き込まれる。
探すんだ。。

緊張する…
そして特急のアナウンスが流れた…
「きたっ!」
ホームの端に先頭車両が見えた。
その時だった…
後ろから人の波が押し寄せ少し前に押される。
「あっ」
ワンピースの彼女が押し出されないか周りを見渡す。
「いない」
少しの安堵感は覆された!!

「えっ……」

かなり後方から列の横をすり抜け小走りで駆け出す女性がいる。
ワンピースの彼女だった。
押されるどころか、自ら電車に向かって
飛び込んだ…
瞬間、また俺と目が合った。
「ドスン」

衝突音の後、きゃーという悲鳴が響き渡った!
「飛び込んだぞ!!」
電車は急ブレーキをかける。
俺は一歩も動けなかった。
地面には事故の生々しさを物語るように血痕が飛び散っていた…
その場にしゃがみ込んで吐き気を抑えた。

彼女は…自殺だったんだ……

もはや何も手に付かなかったが、バスでバイトに向かう。
この現実が怖くて怖くて誰か知ってる人の側に居たかったからだ。

忘れることなど出来なかったけど、仕事に没頭し、気を紛らわせるようにした。
とてもじゃないけど駅に近寄りたくもなく、バスで家路についた。
疲れ切っていて、そのままベッドに寝転がった。眠るのが怖い。
また今日と同じだったらどうしよう…
何故こうなったんだ。
助けられなかった罰なのか。
「あ、指輪…」
ポケットを弄り指輪を取り出した。
仰々しいまでに美しく、触れてはいけないような呪物なのかも知れない…
だから付けるのを躊躇ってしまう。。
単純に怖かったんだ…

目覚めたらこのまま時が過ぎててくれ。
祈るように眠りについた。。

目覚めると握りしめていた指輪が消えていた。絶望感しかなかった。

もう決意したことを実行するしかないんだな…

支度をして家を出た。

真っ直ぐに例の場所に向かう。
チャリーン…
「やはりきた」
足下の指輪を拾って、

はめた。

「痛っ」
なんだこれ
指輪の内側が返しになっていて抜けないようにようになってる。
思い切り引き抜こうと引っ張っても身にくい込むだけだった。。
「痛ぇ……」
血が流れ指輪が吸い取るように、細かな隙間に流れ込む。

異様な気配が纏わり付いたような悪寒を感じた。。
そこへすごい形相の黒猫が走り込んで来た。
予測はしていたので、噛みつかれる前に
猛ダッシュで振り切った。

走りながら考えていた…
何故この日に戻されるのか。
きっと何か意味があって、俺は何かをクリア出来ていないんだって…
思い当たる事といえばワンピースの彼女を救えなかったこと。

そしてこの不気味な指輪。
付けることが答えとしか思えない不自然なまでのシチュエーション…
彼女を救う力になると信じてる。。

駅前の大きな幹線道路を信号を無視して駆け抜ける。
勿論クラクションの嵐だ。

半端強引に渡り切って、後ろを振り返った。
「あれっ」
黒猫は道路を渡る前にうずくまりこちらを見ている…
鳴いているのか、ここからは聞こえなかった。。
しばらくうずくまっていたが、一気に走り出した…
偶然にも走る車の僅かな隙間を真っ直ぐ駆け抜ける。。
道路を渡り切る直前に跳ね飛ばされた………
「あーーっ」
かなり離れた場所まで飛ばされた黒猫は、それでも這いずりながらまだこちらに来ようとしている…
俺は怖くなってその場を逃げ出した。
何故そこまで俺を追ってくるんだよ……

今までとは状況が少しだけ変わってきている!
彼女ももしかしたら、何かを変えれるかもしれない。

溢れる人の列に押されながら少しずつ歩を進めていく。
黒猫どうなったかな…
今は彼女を救い出すことだけを考えるんだ。

ついにホームに辿り着いてしまった。
まだ各停の電車は着いていない。
列の後ろのほうに白いワンピースが見えた…彼女だ!
この各停には乗り切れないで、次の特急に突発的に飛び込んだのか…
たしか2度目は、かなり後ろの方から列を無視して駆けてきて飛び込んだ。

そして各停の電車のアナウンスが流れた。人が詰め寄って押し出すように前へ前へと突き進む。
俺は列の先端にいて、後ろの彼女の様子を伺っていた。各停電車の扉が開いて数人が降りたかと思うと大きな波に飲まれるように前へ前へと、ただ彼女は流れに身を任している。
やはり乗り切れずに諦めて次を待つようだ…周りの人はまだ乗り込もうと殺気に満ちている。
俺もすぐ横に避けて、彼女を見張っていた。電車が発車した後、殺気にも似た視線を感じて横を見た。
「うぉっ」
すぐ横にあの派手な婆さんがじっと見つめて
「指輪付けちまったのかい…」
言葉の意味を理解するまで何秒かかっただろうか…
冷や汗が出てきて、その婆さんの微動だにしない強い視線に震えが止まらない。
一瞬視線が少し上に動いた。
「後ろにいるよ……」
そう言い放ってすぐに後ろを向いて、歩いて行ってしまった。
「えっ、何…?」
後ろを振り返った。。
横の列に並ぶ人がなんなんだ。
何がいるんだ…
すぐ後ろにいたのはしょぼくれた爺さんと年配サラリーマン
こいつらが何なんだ。。
もう派手な婆さんの姿もない。
その時、特急通過のアナウンスが流れ出した。
ハッとして彼女を見る!
初めて彼女の顔をマジマジと見た。
なんて悲しい目をしてるんだ…
まるで悲しみに取り憑かれ、この世に絶望したような。
特急の先頭が見えた。
彼女が前へ前へと突き出されるように一歩一歩進み、急に飛ばされるように線路に吸い込まれそうになった。その時、
俺は瞬間的に彼女の手をとった!!
しっかりと引き寄せ転落を防いだ…
「よし、止めた!!」
「えっ」
彼女は驚いたまま俺を見る…
ふと握った手を見下ろして驚愕した!
同じ指輪を付けてる…
それが幻影のように消えてい……
「ドン!!」


急にスローモーションになった。
俺は強い力に押されて線路に落ちていく。もう電車がすぐそこにいて逃げられない。。
ホームに目を向けると彼女は少し微笑んでいた………


「ドンッ グシャ……」

キィーーー。。
……「キャーー」「うわーー」「キャー」「人が落ちたぞ」。。

「只今人身事故が発生した為、急停車致しました…乗務員は直ちに……     」



一瞬死ぬほど痛かった気がしたが、
ここは真っ暗だな。
そうか、俺は死んだのか………





ん…
この暗闇にどれくらいいるのか…
束の間なのかな、いや何年もいるようにも感じる。もうどうでもいいか……

目を開いた。
暗闇らしいが見えるぞ。
狭い場所に俺はいる。
一際明るい場所に歩いて行った…
外に出て見ると人の住んで居なさそうな家の床下の崩れたコンクリートの穴から出てきたようだ。
身体が軽い。
軽快に小走りで進んでいく…

今更だが、色んな能力に不思議と違和感は感じなかったんだ。
暗闇でも仄かな光りがあればスコープのように見える視覚や、遠くの音や匂いに敏感になり、異様なまでの反射神経と運動能力。
そして第六感……

道端の水溜まりを覗き込んだ。
「えーっっ!」
「嘘だろ…」
あの時の黒猫……
俺は電車に轢かれて死んだんだよな。

そしてさっきから異様な気配を感じ取っていて、その正体がわかった。
あいつだ!!
警戒しながら近づいてみる。

人??
なんだか全体が黒くボヤけていて、
これは、これは近づいたらいけないものだ…身体が危険に反応してる。

人の形はしているのに輪郭が霞んでいる…目はあるのか…目玉をくり抜いたように真っ黒だ。。

悪魔か死神か……
恐怖と共に運命に導かれるように、後に続いた…

10メートルほど先を行く死神は、青年の後を付けるように歩いていた。
そして青年を追い越した際に、黒い指輪をそっと足下に落とした……
「……………」

これは!!
この男は俺だっ!
「嘘だろ……まだこの日から抜け出せていなかった……」
猫の小さい体になっていつもの景色が違って見えていた……

「まだ間に合う!!」
全速力で駆けていく…

「おいっ!その指輪を絶対に付けちゃ駄目だ!そいつは死を吸い取るんだ!
お前は死ぬことになるんだぞっ」

「頼むから、駅には行くなっ!
引き返してくれっ」

ズボンの裾を噛んで引っ張る…

「頼む…気付いてくれ!
その指輪を持ってる限り、お前の側には死神が付き纏うんだぞ…」

くそっ、せめて引っ掻いて怪我をさせて病院に行かせたい…

噛み付いたズボンから足を引っ掻こうとした時、何度も何度も蹴られ、遂に引き離された…

「待てっ!!
駅に行っちゃ駄目なんだー!!」

死神も青年にピッタリ張り付き駆けていく。

「頼むから待ってくれーー!」

逃げる「俺」だけを見ながら全速力で追いかける!


「ドスン………グシャ…………グシャ…………」



       END










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みんなの感想(2件)

1941rondo
2024.01.04 1941rondo

気味悪いけど謎が多い分、ハッキリさせたくて一気に読みたくなってしまう(笑)
なさそうであるかもしれない少しまったりしたリアル感がクセになりました…!

流誠
2024.01.06 流誠

お時間割いてくれてありがとう😊
世にも奇妙な物語風に書きました。
一度タイムループ物を作りたくて^_^
過去を変えてしまうと未来に影響を与えてしまうような…

解除
かふるん
2023.08.25 かふるん

面白い!2回ほど「えっ!」という場面があり、最後の展開が予想を超えたものでした。
世にも奇妙な…ですね。

流誠
2023.08.27 流誠

ありがとうございます😊
まさに「世にも奇妙な…」オマージュされてます笑
物語書いてて映像が頭に浮かんでました☺️
いつも時間割いていただき本当に嬉しく思っています。
ありがとうございました…

解除

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