【本編完結】役立たずと言われた「癒し」スキルで幸せになります!

ひなた

文字の大きさ
42 / 58

第四十一話 お揃い

「そんなに似合いませんか?」
「あなた色を選ぶセンスはあるのに、そういうところ残念よね」
 ミレーヌ様は扇子で口を覆ってから呆れたようにため息をついた。
 自分の身体を見下ろすと刺繍が入った黒のジャケットが見える。周囲を見渡してみても特に浮いているということはない。単純に僕が不格好なだけのようだ。

「ジェラルド様とお揃いにしたのに……」
「問題はそこよ」
 ミレーヌ様が扇子を畳み、僕に扇子の先を突きつけた。昔と変わらない感情豊かな扇子の使い方に懐かしさを覚える。

「あなたの服装はすごくシンプルで、年代を問わない洗練されたものだと思う」
「ありがとうございます。僕もそこが気に入っています」
 ミレーヌ様がわずかに眉を寄せる。表情だけだとわかりにくいが、これは気まずい時の顔だ。
「シンプルだからこそ難しいのよ。あなたの旦那様のような、堂々とした体躯なら問題ないのだけど」

 紫の瞳にじっと見つめられる。目線の高さがほぼ同じだからか凄みがある。
「あなたは、その……華奢だから。服に着られている感じがして。率直に言うと野暮ったいわね」
「率直に言わなくても伝わってますよ」
 肩を落としてあからさまにがっかりした感じを出すと、ミレーヌ様は「ごめんなさいね」とからかうように微笑んだ。

「何もかもお揃いにする必要はないと思うわ。もう少しさりげなくお揃いにしなさい」
「難しいことを言いますね」
「夜会に参加するなら興味がなくても王都の流行を学んでおきなさい」
 ミレーヌ様が熱心に教えてくれたので、今回が辺境伯夫人として参加する最初で最後の夜会になるかもとは言い出せなかった。
 説明を聞いてもさりげないお揃いがどういうものなのか全然わからない。

「ミレーヌ様も旦那様とお揃いにされているのですか?」
「私たちには関係ない話だわ」
 彼女の顔が明らかに暗くなった。もしかして最近喧嘩でもしたのかもしれない。
 話題を変えようと口を開いた時、固い表情の男性が声をかけてきた。

「失礼。私の妻とどのような関係か伺っても?」
「ごきげんよう。ギルム侯爵夫人とは学院の同級生で——」
「フロンドル辺境伯夫人で、友人のノアよ。入場した時から注目の的だったのに、あなた本当に人に興味がないのね」
 先ほどの柔らかい声とはうってかわって、冷たい声だった。驚いてミレーヌ様を見たが、口元が扇子で隠されていて表情がよくわからない。

「失礼しました。私はミレーヌの夫でフェリクスと申します。以後お見知りおきを」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
 挨拶を交わすが、ものすごく気まずい。ギルム侯爵も僕もミレーヌ様が気になって会話に集中できない。

「フロンドル辺境伯はどちらに? ぜひご挨拶をさせていただきたい」
「主人は少し席を外しておりまして……もうしばらくしたら戻って来るとは思うのですが、申し訳ありません」
 こちらを侮辱してきた令息と父親を呼び出して謝罪を求めている最中ですとは言いづらい。

「どうせスキルについて聞きたいだけでしょう? ノア、気にすることないわ」
「スキルですか?」
「実は私、スキルの情報を収集することが趣味でして。辺境伯もそうだけど、夫人のスキルも気になるなぁ。少しだけ話を聞かせてもらっても」
「フェリクス」
 ミレーヌ様の鋭い声に、ギルム侯爵が「やってしまった」という顔で姿勢を正す。
「私は同級生と久しぶりに再開できたの。邪魔をしないでちょうだい」
「ごめんね。ミレーヌがあんなに楽しそうに笑っているのを初めて見たから気になって……でもそうだね。邪魔してごめん」
「別に」
 ミレーヌ様が顔を逸らす。二人ともぎこちなくて、夫婦の甘い雰囲気が一切感じられなかった。

 ミレーヌ様と長い付き合いだから、彼女の態度を不思議に思う。
 彼女はギルム侯爵が婚約者だった時から、彼のことが大好きだった。手紙が届くたびに喜び、侯爵と会った次の日には最低でも一時間は拘束されてひたすら惚気を聞かされた。
 卒業後、ギルム侯爵夫人となってからも彼に対する愛情は変わりないように思えた。だからこそ本当に謎だ。

 ミレーヌ様に視線を向けると、彼女は落ち込んでいる様子のギルム侯爵を切なそうに見つめている。
 もしかしてミレーヌ様は恋愛が不器用なタイプなのか。決めつけるのはよくないけど、それなら友人として少しでも背中を押してあげたい。

「あの、主人が戻って来るまで三人でお話しませんか?」
「ノア、あなたね」
「ありがとうございます。ぜひ」
 余計なことをと呆れた表情を見せるがちょっと嬉しそうなミレーヌ様と、ミレーヌ様のそばにいられることが嬉しいと顔に出ているギルム侯爵。側から見るとお似合いな夫婦だ。
 僕は応援の意味を込めてミレーヌ様に視線を送り、さっそく話を始めた。


 しばらく僕を中心に会話を回していたが、とても難しい。普段鍛えていない技術が磨かれている気がする。
 無難な話題を出し終わってしまいどうしようかと悩んでいると、ジェラルド様が帰ってきた。
「ノア、こちらの方々は?」
 僕が答える前にギルム侯爵が挨拶を始めた。改めて夫婦で挨拶をする。
 紹介を終えるとギルム侯爵はさっそく、ジェラルド様にスキルのことを質問攻めした。あまりの勢いにジェラルド様は引き気味だ。

「すごい勢いですね」
「でしょう? 彼はスキルのことしか興味がないの。私のことなんてどうせ……」
 話によるとギルム侯爵はスキルに関する研究本を出版しようとして、教会からお叱りを受けるほどのスキルマニアらしい。
 スキルは主に教会の管轄だからなぁ。高位貴族じゃなかったら研究すらできなかった可能性がある。

 なんとなくギルム侯爵夫妻と話していてわかってきた。お互いに相手のことを想っているのに、二人とも不器用すぎて関係が進展していない。
 僕もきっかけがなかったらジェラルド様とぎこちない関係だったかもと思うと切なくなった。

 ギルム侯爵は身振り手振りでスキルの素晴らしさを語っている。
 何となしに袖口のカフスボタンに目がいった。シャンデリアの光を受けて輝く宝石は実に高貴だ。
 ギルム侯爵がまた長い語りを始め、腕を振った。ふとカフスボタンの光り方が変わったことに気づく。

「ああ! さりげないお揃いってそういうことですね!」
 三人の視線が僕に注がれる。やってしまった。声が大きかったみたいだ。
「あの、話の邪魔をして申し訳ありません。どうぞ続きを」
「教えてください。何がお揃いなのでしょうか?」
 好きなものについて語る熱のある声から一転、ギルム侯爵は絶対に聞き逃さないという強い意志のこもった声で問いかけた。

「えっと、あの」
 ミレーヌ様が扇子で顔を覆い目だけを出して、こちらに強い眼差しを向けた。
 その目は「絶対に言うな」と物語っていて、彼女のためにも黙っていたほうがよさそうだ。
「ごめんなさい。やっぱり何も」
「教えてください。お叱りならあなたの分まで俺が受けます」
 真剣すぎてギルム侯爵の素の一人称が出ている。僕はその気迫に負けて話すことにした。

「そのカフスボタンとギルム侯爵夫人のドレスが同じ色で……つい」
「同じ色、ですか?」
 ギルム侯爵が不思議そうにカフスボタンとミレーヌ様のドレスを見比べる。
 カフスボタンの色は赤で、ミレーヌ様は青い清楚な印象のドレスを着ている。知識がなければ意味がわからないだろう。

「カフスボタンについているその石は、光によって色が変わります。魔石の魔力が宝石に馴染むことで起こる現象で、とても珍しい石なんです」
「なるほど……この石はいつ青くなるのですか?」
「えっと、すみません。質問で返しますが、このカフスボタンはいつ受け取られたものですか?」
「本日です。王宮に向かう途中の馬車の中で彼女から手渡されました」
「ああ、それで。この石は日の光に当たると綺麗な青色になるんですよ。ちょうど夫人のドレスのような」

 僕とギルム侯爵がミレーヌ様に視線を送ると、彼女は扇子で顔を覆い隠していた。よく見ると微かに手が震えている。
「ミレーヌ、顔を見せて」
「いやよ。だって私……」
 これは、僕たちが見守って良いものなのか。複雑な心境でいると、ジェラルド様が僕のそばに寄り添ってくれた。

「俺はずっと勘違いをしていた。十歳も年上の男に嫁いで、不満に思っているのだろうと」
「そんなこと、私は一言も」
「そうだね。俺は自分に自信がなさすぎてそう思い込んでしまった。君から誕生日プレゼントだとカフスボタンを手渡された時どんなに嬉しかったか……もっときちんと言葉にすればよかった」
 ギルム侯爵がミレーヌ様の肩にそっと手を置いた。ミレーヌ様は扇子を顔から外し、真っ赤な顔でギルム侯爵を見上げている。

「ミレーヌ、夜会が終わったら君の気持ちを聞かせてほしい。俺もちゃんと伝えるから」
「はい。でも一晩では足りないかもしれません」
「いくらでも付き合うさ。この石みたいに真っ赤になってる……可愛い」
「馬鹿っ!」
 ミレーヌ様が扇子を折りたたみギルム侯爵の手を叩いた。けっこう痛そうな音だ。

「私たちは何を見せられているんだ?」
「さあ?」
 ジェラルド様な疑問はもっともだけど、それは僕にもわからない。
「それに十歳差で自信を失くされたら私たちなんて……」
「ジェラルド様、しっ!」
 それは僕も思ったけど口に出すのはだめだ。僕たちは十二歳差だもんなぁ。そこまで意識したことはないけど気にする人は気にするのかもしれない。

 ギルム侯爵が手を押さえながら僕たちに向き合う。
「ありがとうございます。あなたのおかげでミレーヌと向き合うことができました。何かお礼をさせていただけませんか?」
 お礼かぁ。少しの間悩んでいると、隣領の伯爵が視界に入った。
「あの、実は——」
 僕はフロンドル領の秘酒を王都に広めたいこと、そのためにまず隣領の街道を整備する必要があること、侯爵に交渉の仲介役をお願いできないかを話した。

「へぇ、そんな事情が。俺の親友が寄親だから頼んでみるよ」
「えっと、それはさすがに申し訳ないというか」
「大丈夫、大丈夫。遠慮しないで」
 遠慮というより伯爵が可哀想だ。寄親からのお願いって、それは実質的な命令だ。

「ああ、そのことだが」
 ジェラルド様が話に入ってきた。先ほど失礼な発言をした令息と、その父親に話をつけた際、王国北部周辺の領主で会合をすることが決まったらしい。
「ちょうどいい。じゃあ伯爵に話をつけて会合に参加させよう。ついでに街道の話もしておくよ。それよりも」
 ギルム侯爵がにやりと笑う。
「秘酒を広めるって面白い話だね。俺も一枚噛みたいけど現物がないと判断が」
「フェリクス!」
 ミレーヌ様が叱るように名前を呼ぶと、ギルム侯爵は縮こまった。

「あの、お贈りしますよ」
 僕が言うとギルム侯爵は嬉しそうに笑った。
「そうか! ありがとう! フロンドル卿、別室で詳しい話を」
 ギルム侯爵がジェラルド様を誘おうと手を差し伸べた瞬間、王弟殿下の従者が声をかけてきた。
「殿下がお呼びです」
「私だけか?」
「はい。そのように仰せつかっております」

 ジェラルド様が僕の手に触れる。
「すぐ戻るから、義父上か信頼できる者のところにいてほしい」
「わかりました。お待ちしていますね」
 僕が笑いかけると、ジェラルド様も笑顔を返してくれた。王弟殿下がなぜジェラルド様だけ呼んだのか気になるけど、あの従者は絶対答えてくれないので後でジェラルド様に聞いてみよう。

 ジェラルド様の背中を見送る。ギルム侯爵も「親友に話をつけてくる」と言って離れていった。
 残された僕とミレーヌ様は、気まずくて少し黙り込んでしまった。

「ノア、あなたね!」
「わー! ごめんなさい、ごめんなさい。思わず大きな声が出ちゃって」
「まあ、いいけど。お詫びに夫婦円満の秘訣を教えなさい」
「えー。大したこと教えられないですよ」
「あんな甘い雰囲気出しといて何言ってるのよ!」

 自分では自覚がないからわからないよ。どうしようかなぁと困っていたら、懐かしい声に名前を呼ばれた。
「ノア、久しぶりだな」
「ショズナール伯爵子息。お久しぶりです」
 ロジェだ。久しぶりに会った元婚約者は、昔と違って騎士の風格があった。でもその顔は以前のように自信に満ちたものではない。

「伯爵家の三男が辺境伯夫人に軽々しく声をかけるなんて、何を考えていらっしゃるのかしら?」
 ミレーヌ様が庇うように僕の前に立ってくれた。
「申し訳ございません…‥俺は、どうしてもフロンドル辺境伯夫人と話がしたくて」
「身勝手な話だわ。自分が何をしたのか、剣で叩かれすぎて忘れてしまったのね」
 ミレーヌ様とロジェの間に険悪な空気が流れる。これは原因である僕がなんとかしなければ。
 
「ミレーヌ様、お気遣いありがとうございます! 僕は平気ですから!」
 ミレーヌ様が少し怒ったような、心配そうな顔で僕を見る。
「えーっと、別室で旦那様と一緒でいいなら聞くよ! 今回だけね!」
 ロジェは一瞬だけ泣きそうな顔になって、それから「感謝申し上げます」と言った。
 ミレーヌ様は怒りながら「ノアが決めたことだから」と最終的に納得してくれた。

 ロジェは僕にどんな話がしたいのだろう。僕の方は特に話すことはないけど、時間が余ったら昔の話をしてもいいかもしれない。
 ジェラルド様の帰りを待ちながら、ロジェをちらりと見る。なぜか目が合って穏やかに微笑まれた。
 その表情は仲が良かった時の面影があって、少しだけ昔に戻ったような気がした。
感想 5

あなたにおすすめの小説

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。 途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。