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番外編③常夏の島
白い砂浜が太陽の光を反射して空がより青く見える。エメラルドグリーンの海は波が穏やかで、見ているだけで心が癒される。
常夏の島と呼ばれているルーサミル島は、話に聞いた以上にのんびりと過ごせそうなところだった。
「綺麗ですね」
「こんなに穏やかな海は初めて見た」
船を降りた直後の僕とジェラルド様は「海が綺麗」と「湿度がすごい」という話題をひたすら繰り返してしまうくらい、初めての景色に圧倒されていた。
宿まで馬車で移動している最中も、色鮮やかな花や南国の街並みに心が躍り、ジェラルド様と二人で「すごい、すごい」と言い合っていた。
「見てくださいジェラルド様! 一面海ですよ!」
「最上階を取って正解だったな」
バルコニーに繋がる扉を開けると視界が海で埋まった。さすがルーサミル島で一二を争う高級宿だ。貴族どころか王族が滞在しても問題ないくらい設備が整っている。
「バルコニーだけで一日過ごせそうです」
「違いない」
「五日間、あっという間に終わりそうですね」
「そうだな」
バルコニーに設置されているベンチに腰掛けて今後の予定を話し合う。波の音を聞きながらの会話はいつもよりテンポが遅くて、時間がゆっくりと過ぎていくのを感じた。
宿屋を出てすぐ近くの海へ行くと、砂浜にぽつりぽつりと人がいた。この周辺は宿泊客にだけ開放されているエリアだからか、静かに日光浴を楽しんでいる人が多い。波打ち際で遊んでいる僕たちは、どことなく浮いていた。
「不思議ですよね」
「何がだ?」
「遠くから見たらエメラルドグリーンなのに、近くで見ると透明だなぁって」
「……そうだな」
「あー! 今『当たり前のことを……』って思いましたね!」
「思ってない、が」
ジェラルド様が急に吹き出した。
「どうかなさいましたか?」
「あまりにも、無邪気すぎて」
耐えられなくなったのか、ジェラルド様は再び声を出して笑った。
「ひどい!」
「わ、やめなさい」
僕が水をかけるとジェラルド様が腕で防ぐ。
「先手必勝です」
得意げに胸を張っていると大量の水しぶきが身体にかかった。
「仕返しだ」
その言葉を合図に、水をかけ合うだけの不毛な争いが始まった。
結局お互いずぶ濡れになり、いい歳して何をやってるんだと笑った。
ジェラルド様はよく笑うようになった。初めて会った時のような、他人を拒絶する冷たさはもうない。それが嬉しくて幸せで、僕もさらに笑うようになった。
この日は遊びすぎたのと移動疲れで、夕食とお風呂を済ませたら二人ともすぐに眠ってしまった。
二日目。朝から市場に行ったり、有名なレストランで食事をしたりと主に観光を楽しんだ。お土産もたくさん買えて大満足だ。
海にも行ったが、今回は周りを見習って日光浴をすることにした。だけど陽に当たりすぎてしまったのか、ルーサミル島の暑さに二人ともバテてしまい、この日も早めに就寝した。
三日目。朝から浜辺を散歩して、今は日光浴の最中だ。昨日の反省を活かし、昼前には一度宿に帰って休憩することにした。
日光浴用の椅子に並んで座っていると、ジェラルド様が「しまった」と呟いた。
「すまない。忘れ物をしたから取りに行ってくる。くれぐれも護衛から離れないように」
「わかりました。いってらっしゃい」
ジェラルド様は「すぐに戻る」と僕に言って、早足で宿に向かった。護衛に取りに行かせるという発想がないのがジェラルド様らしい。慌てて護衛の一人がジェラルド様を追うのを見届ける。少しの間なら威圧の影響もほとんどないし大丈夫だろう。
「隊長。ちょっといい?」
「ノア様、いかがなさいましたか?」
手招きをするとすぐに警護部隊の隊長が駆け寄ってくれた。周囲に聞かれないように声を落とす。
「ちょっとマルク兄様の意見が聞きたくて」
「お前な、ただでさえ弟の新婚旅行を警護するっていうクソ気まずい状況なのに、これ以上俺を追い詰めるなよ」
さすがマルク兄様、切り替えが早い。名前を呼ばれただけで隊長の顔から兄の顔に変わった。
「そんなつもりはないです。僕はただ純粋に相談したいだけです」
気まずいなら任務を代わればいいのに。そんなことを言ったら護身術の指南という名目で何をされるかわからないから黙っておく。
「で、何? 相談って」
「あの……新婚旅行感が足りないのって何が原因だと思いますか?」
ルーサミル島で過ごした二日間は本当に楽しかった。ジェラルド様も僕もいつも以上に笑顔だった。だけど何か物足りないと感じているのも事実だ。
「新婚旅行感ってどういう意味だ?」
「なんか、こう……初々しさ? すっごい楽しいし、自分でもはしゃいでいる自覚がありますが違和感もあって」
僕とジェラルド様は結婚七年目の夫夫で、新婚ではないとわかっている。でも、結婚して初めての旅行だから新婚旅行という空気に浸りたいのだ。
「あー、こっちが恥ずかしくなるくらいはしゃいでるな」
「やっぱりそうですか?」
「でも確かにイチャつきは足りない」
「ですよね」
僕が肩を落とすと兄様が腕を組んで考え込む。
「非日常感が足りないのかもしれない」
「どういう意味ですか?」
「旅行を楽しむというのに注力しすぎて、欲望を解放できていない気がする」
「欲望を解放……」
兄様の言葉が難しくて悩んでいたら「あっちを見てみろ」と指差される。
「えっ! あ……情熱的ですね」
「だろ? お前らに足りないのはあれだ。世界の中心にいるのは二人だけで、それ以外のことは目に入らないって感じの」
兄様が指差す方向には、薄着で密着して口付けを交わしている男女がいた。彼らも新婚旅行で来たのだろうか。確かに僕たちに足りない要素だ。
上品に日光浴をしていると思っていたが、よく見るとイチャイチャしているカップルがそれなりにいる。
「兄様ありがとうございます。参考になりました」
「アドバイスしておいてあれだけど、俺の前でやるのは控えてくれると助かる。本当、本当にお願いします」
「わかってますよ。僕も普通に気まずいですし」
兄様が「じゃあ俺はこれで」と僕の警護に戻りかけた時、宿の方から男性の悲鳴が聞こえた。
「いったい何が」
「ノア様、私の後ろに」
すかさず警護隊長の顔に切り替わった兄様が僕を後ろ手で庇う。状況を把握するため護衛の一人が宿に向かうと、程なくして戻ってきた。
「ジェラルド様が騒動に巻き込まれました」
「どういうこと?」
とりあえず宿に向かいながら護衛から詳細を聞くことになった。歩きながら平穏な新婚旅行とはいかなかったなと心の中で苦笑した。
常夏の島と呼ばれているルーサミル島は、話に聞いた以上にのんびりと過ごせそうなところだった。
「綺麗ですね」
「こんなに穏やかな海は初めて見た」
船を降りた直後の僕とジェラルド様は「海が綺麗」と「湿度がすごい」という話題をひたすら繰り返してしまうくらい、初めての景色に圧倒されていた。
宿まで馬車で移動している最中も、色鮮やかな花や南国の街並みに心が躍り、ジェラルド様と二人で「すごい、すごい」と言い合っていた。
「見てくださいジェラルド様! 一面海ですよ!」
「最上階を取って正解だったな」
バルコニーに繋がる扉を開けると視界が海で埋まった。さすがルーサミル島で一二を争う高級宿だ。貴族どころか王族が滞在しても問題ないくらい設備が整っている。
「バルコニーだけで一日過ごせそうです」
「違いない」
「五日間、あっという間に終わりそうですね」
「そうだな」
バルコニーに設置されているベンチに腰掛けて今後の予定を話し合う。波の音を聞きながらの会話はいつもよりテンポが遅くて、時間がゆっくりと過ぎていくのを感じた。
宿屋を出てすぐ近くの海へ行くと、砂浜にぽつりぽつりと人がいた。この周辺は宿泊客にだけ開放されているエリアだからか、静かに日光浴を楽しんでいる人が多い。波打ち際で遊んでいる僕たちは、どことなく浮いていた。
「不思議ですよね」
「何がだ?」
「遠くから見たらエメラルドグリーンなのに、近くで見ると透明だなぁって」
「……そうだな」
「あー! 今『当たり前のことを……』って思いましたね!」
「思ってない、が」
ジェラルド様が急に吹き出した。
「どうかなさいましたか?」
「あまりにも、無邪気すぎて」
耐えられなくなったのか、ジェラルド様は再び声を出して笑った。
「ひどい!」
「わ、やめなさい」
僕が水をかけるとジェラルド様が腕で防ぐ。
「先手必勝です」
得意げに胸を張っていると大量の水しぶきが身体にかかった。
「仕返しだ」
その言葉を合図に、水をかけ合うだけの不毛な争いが始まった。
結局お互いずぶ濡れになり、いい歳して何をやってるんだと笑った。
ジェラルド様はよく笑うようになった。初めて会った時のような、他人を拒絶する冷たさはもうない。それが嬉しくて幸せで、僕もさらに笑うようになった。
この日は遊びすぎたのと移動疲れで、夕食とお風呂を済ませたら二人ともすぐに眠ってしまった。
二日目。朝から市場に行ったり、有名なレストランで食事をしたりと主に観光を楽しんだ。お土産もたくさん買えて大満足だ。
海にも行ったが、今回は周りを見習って日光浴をすることにした。だけど陽に当たりすぎてしまったのか、ルーサミル島の暑さに二人ともバテてしまい、この日も早めに就寝した。
三日目。朝から浜辺を散歩して、今は日光浴の最中だ。昨日の反省を活かし、昼前には一度宿に帰って休憩することにした。
日光浴用の椅子に並んで座っていると、ジェラルド様が「しまった」と呟いた。
「すまない。忘れ物をしたから取りに行ってくる。くれぐれも護衛から離れないように」
「わかりました。いってらっしゃい」
ジェラルド様は「すぐに戻る」と僕に言って、早足で宿に向かった。護衛に取りに行かせるという発想がないのがジェラルド様らしい。慌てて護衛の一人がジェラルド様を追うのを見届ける。少しの間なら威圧の影響もほとんどないし大丈夫だろう。
「隊長。ちょっといい?」
「ノア様、いかがなさいましたか?」
手招きをするとすぐに警護部隊の隊長が駆け寄ってくれた。周囲に聞かれないように声を落とす。
「ちょっとマルク兄様の意見が聞きたくて」
「お前な、ただでさえ弟の新婚旅行を警護するっていうクソ気まずい状況なのに、これ以上俺を追い詰めるなよ」
さすがマルク兄様、切り替えが早い。名前を呼ばれただけで隊長の顔から兄の顔に変わった。
「そんなつもりはないです。僕はただ純粋に相談したいだけです」
気まずいなら任務を代わればいいのに。そんなことを言ったら護身術の指南という名目で何をされるかわからないから黙っておく。
「で、何? 相談って」
「あの……新婚旅行感が足りないのって何が原因だと思いますか?」
ルーサミル島で過ごした二日間は本当に楽しかった。ジェラルド様も僕もいつも以上に笑顔だった。だけど何か物足りないと感じているのも事実だ。
「新婚旅行感ってどういう意味だ?」
「なんか、こう……初々しさ? すっごい楽しいし、自分でもはしゃいでいる自覚がありますが違和感もあって」
僕とジェラルド様は結婚七年目の夫夫で、新婚ではないとわかっている。でも、結婚して初めての旅行だから新婚旅行という空気に浸りたいのだ。
「あー、こっちが恥ずかしくなるくらいはしゃいでるな」
「やっぱりそうですか?」
「でも確かにイチャつきは足りない」
「ですよね」
僕が肩を落とすと兄様が腕を組んで考え込む。
「非日常感が足りないのかもしれない」
「どういう意味ですか?」
「旅行を楽しむというのに注力しすぎて、欲望を解放できていない気がする」
「欲望を解放……」
兄様の言葉が難しくて悩んでいたら「あっちを見てみろ」と指差される。
「えっ! あ……情熱的ですね」
「だろ? お前らに足りないのはあれだ。世界の中心にいるのは二人だけで、それ以外のことは目に入らないって感じの」
兄様が指差す方向には、薄着で密着して口付けを交わしている男女がいた。彼らも新婚旅行で来たのだろうか。確かに僕たちに足りない要素だ。
上品に日光浴をしていると思っていたが、よく見るとイチャイチャしているカップルがそれなりにいる。
「兄様ありがとうございます。参考になりました」
「アドバイスしておいてあれだけど、俺の前でやるのは控えてくれると助かる。本当、本当にお願いします」
「わかってますよ。僕も普通に気まずいですし」
兄様が「じゃあ俺はこれで」と僕の警護に戻りかけた時、宿の方から男性の悲鳴が聞こえた。
「いったい何が」
「ノア様、私の後ろに」
すかさず警護隊長の顔に切り替わった兄様が僕を後ろ手で庇う。状況を把握するため護衛の一人が宿に向かうと、程なくして戻ってきた。
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