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「あの、隊長に何を仰ったのでしょうか…?」
ニコニコと笑いながら戻って来た殿下に畏れ多くも訊ねてしまった。
「気になるの?」
「いえ、そういうわけでは」
「隊長は用事があるそうだよ。…私と二人きりでは嫌?」
少し悲しそうな表情でこっちを見ないでください。
「今回の護衛で一番下が私なので、殿下の護衛として私だけでは不足かと。隊長から指示を受けなければなりません」
「ティアも知ってると思うけど、この時期のこの森に危険はないよ。君を危険に晒すわけないだろう?」
「それは私の台詞なのですが…殿下にもしものことがあれば、私だけでなく隊全体の責任となります。危険はないとしても、絶対ではありません。なので不安なのです。私一人では…」
「不安な思いをさせてごめんね。だけど少しでいいから、君と二人で話したい」
うっ…そんな捨てられた子犬のような目をしても駄目なものは駄目なのです。私は殿下に相応しくありません。一時の未熟なお気持ちで判断してはいけません。贅沢なものばかり食べていて、たまには粗食でも、なんて考えはお捨ていただきたい。
もうハッキリお断りするべきだ。うん、今しかない。婚約者様にバレない内に、私の事などお忘れください。
「殿下、この際ハッキリ申し上げます」
「許さない」
「えっ」
私の言葉に被せるように殿下の厳しい声が飛んできた。
「今、君は私の思いを断ろうとしているだろう?だから発言することを許可しない」
言わせない、だと…?
「ティアから否定の言葉など聞きたくない。せめて、私の想いを全て聞いて、私個人を知ってから判断して欲しい。それまでは王太子の権限を使ってでも、君からの否定的な言葉を許可したくない。…この訓練の間だけでも、君に私を知ってもらう機会を与えてはくれないだろうか。お願い、ティア…?」
「殿下…」
隊長には訓練の間にお断りするように言われています。そもそもお受けする立場でもありませんし、度胸もありません。例え殿下のお気持ちが強くても、私がお相手するわけにはいきません。下級貴族の私には、無理です。実家が滅びます。ですが殿下にお断りの言葉を封じられてはどうすることもできません。
「では訓練終了の後、即座にお返事させていただきます。それでよろしいでしょうか」
「断りの返事以外なら、訓練中でも良いよ」
殿下が眉を下げて言う。
この際、何故殿下が私にお心をお寄せになるのか、知ってからでも遅くはないかもしれない。
明確な理由がなければ諦めてくれないだろうし。
ソルに恋人のフリをしてもらうか…いや、それはソルが殺されてしまう。
婚約者が決まったというのは…昨日の時点でいないとバレてるから無理だ…。
でも殿下には婚約者がいるんだから、結局私とどうこうなれるとは思えない。
一度だけお相手すれば…いやいや、婚約者様の立場から考えると胸糞案件だし、一度でもお手付きになったと知られれば大変なことになるのは見えてる。
別に強請ったりしませんよ。責任取れとか、慰謝料とか。むしろ私の婚期が永遠に消滅するくらいで済めばいいですけどね。
現国王を見るに、おそらく側室や愛人とかは有り得ないのかなぁと思うけど、殿下が国王と同じかと問われればわからない。
住む世界が別次元すぎて、殿下の為人を知る機会が今までなかったことが悔やまれる。
必ず訓練後にはお返事をしないといけないということは、相談が出来ないとうことだ。
殿下に近しい人からお話が訊ければ傷つけずに対処も出来ただろうな…まぁ近しい人から話が訊けるほど私には身分がありませんので結局は現状から変化はなかったでしょうけど。
「一つだけお約束していただけますか」
「うん」
「どういうお返事であれ、受け入れてください。そして殿下のお心に副わなくても引きずらず、全てこの訓練の一環のこととし、完結させてください」
お断りする未来しかありませんが、何が起こっても今後の人生に影響が出ないように予防線を張っておかなければいけない。訓練が終わると同時に全て終わらせる。そうでなければお家滅亡しかねない。
「わかった。受け入れると約束しよう」
殿下はふんわりと微笑んだ。その微笑みはどういう意味でしょうか。とても気になります。
何故か差し出された手に自然と手を重ねてしまって、ハッと気付いた時には手を握られていた。
「今日のノルマを達成すると後は自由時間になるから、早く終わらせようか」
振りほどくことは出来ないので、素直に手を繋いだまま薬草採集を再開することとなった。
殿下は恐ろしいくらいのスピードで本日中の課題をクリアしていく。
殿下はどこに何が自生しているのか分かっているみたいだけど…何で?超能力者?
「あの、薬草の場所、殿下は初見でわかるのですか?私は結構勉強した方ですが、未だにサンプルや図鑑を見なければ薬草の見分けがつきません。ですが殿下は躊躇うことなく採集されていますし、探す素振りすら感じられません。とてもお勉強なさったのですか?」
「こう見えても、王太子だからね。薬草くらい目を瞑ってても採集できるよ」
「殿下は凄いお方なのですね!薬草に関しては成績優秀者でも経験を積まなければ図鑑を手放せないと言われております。流石殿下ですね!」
本当に凄いことなのでお世辞ではなく心から殿下を褒めちぎっていると、殿下の表情が段々と暗くなっていくのですが。
「…ごめん、私が間違っていた」
「どうかされましたか?」
「いや、全てが間違いということではないんだ。確かにここ一年は頑張っていたんだよ。でもね、そうじゃないんだ。」
「殿下?」
「本当にごめん、野営訓練は2度目なんだ。だから君に褒められるほど優秀じゃなくてごめん…」
「ど、どういうことですか?二度目?今回が初めてだときいておりますが」
殿下がガシガシと頭を掻いてから、私に頭を下げる。
本当におやめください。私が殺さるので、不用意に頭を下げたりするのはおやめください。
「君との時間が欲しくて、一週間前に聖騎士達と訓練は終わらせている。だが不正を行ったわけではないから!」
えっ…えぇーーー??!!じゃあこの訓練は?何のための訓練ですか?え?えっ??
ニコニコと笑いながら戻って来た殿下に畏れ多くも訊ねてしまった。
「気になるの?」
「いえ、そういうわけでは」
「隊長は用事があるそうだよ。…私と二人きりでは嫌?」
少し悲しそうな表情でこっちを見ないでください。
「今回の護衛で一番下が私なので、殿下の護衛として私だけでは不足かと。隊長から指示を受けなければなりません」
「ティアも知ってると思うけど、この時期のこの森に危険はないよ。君を危険に晒すわけないだろう?」
「それは私の台詞なのですが…殿下にもしものことがあれば、私だけでなく隊全体の責任となります。危険はないとしても、絶対ではありません。なので不安なのです。私一人では…」
「不安な思いをさせてごめんね。だけど少しでいいから、君と二人で話したい」
うっ…そんな捨てられた子犬のような目をしても駄目なものは駄目なのです。私は殿下に相応しくありません。一時の未熟なお気持ちで判断してはいけません。贅沢なものばかり食べていて、たまには粗食でも、なんて考えはお捨ていただきたい。
もうハッキリお断りするべきだ。うん、今しかない。婚約者様にバレない内に、私の事などお忘れください。
「殿下、この際ハッキリ申し上げます」
「許さない」
「えっ」
私の言葉に被せるように殿下の厳しい声が飛んできた。
「今、君は私の思いを断ろうとしているだろう?だから発言することを許可しない」
言わせない、だと…?
「ティアから否定の言葉など聞きたくない。せめて、私の想いを全て聞いて、私個人を知ってから判断して欲しい。それまでは王太子の権限を使ってでも、君からの否定的な言葉を許可したくない。…この訓練の間だけでも、君に私を知ってもらう機会を与えてはくれないだろうか。お願い、ティア…?」
「殿下…」
隊長には訓練の間にお断りするように言われています。そもそもお受けする立場でもありませんし、度胸もありません。例え殿下のお気持ちが強くても、私がお相手するわけにはいきません。下級貴族の私には、無理です。実家が滅びます。ですが殿下にお断りの言葉を封じられてはどうすることもできません。
「では訓練終了の後、即座にお返事させていただきます。それでよろしいでしょうか」
「断りの返事以外なら、訓練中でも良いよ」
殿下が眉を下げて言う。
この際、何故殿下が私にお心をお寄せになるのか、知ってからでも遅くはないかもしれない。
明確な理由がなければ諦めてくれないだろうし。
ソルに恋人のフリをしてもらうか…いや、それはソルが殺されてしまう。
婚約者が決まったというのは…昨日の時点でいないとバレてるから無理だ…。
でも殿下には婚約者がいるんだから、結局私とどうこうなれるとは思えない。
一度だけお相手すれば…いやいや、婚約者様の立場から考えると胸糞案件だし、一度でもお手付きになったと知られれば大変なことになるのは見えてる。
別に強請ったりしませんよ。責任取れとか、慰謝料とか。むしろ私の婚期が永遠に消滅するくらいで済めばいいですけどね。
現国王を見るに、おそらく側室や愛人とかは有り得ないのかなぁと思うけど、殿下が国王と同じかと問われればわからない。
住む世界が別次元すぎて、殿下の為人を知る機会が今までなかったことが悔やまれる。
必ず訓練後にはお返事をしないといけないということは、相談が出来ないとうことだ。
殿下に近しい人からお話が訊ければ傷つけずに対処も出来ただろうな…まぁ近しい人から話が訊けるほど私には身分がありませんので結局は現状から変化はなかったでしょうけど。
「一つだけお約束していただけますか」
「うん」
「どういうお返事であれ、受け入れてください。そして殿下のお心に副わなくても引きずらず、全てこの訓練の一環のこととし、完結させてください」
お断りする未来しかありませんが、何が起こっても今後の人生に影響が出ないように予防線を張っておかなければいけない。訓練が終わると同時に全て終わらせる。そうでなければお家滅亡しかねない。
「わかった。受け入れると約束しよう」
殿下はふんわりと微笑んだ。その微笑みはどういう意味でしょうか。とても気になります。
何故か差し出された手に自然と手を重ねてしまって、ハッと気付いた時には手を握られていた。
「今日のノルマを達成すると後は自由時間になるから、早く終わらせようか」
振りほどくことは出来ないので、素直に手を繋いだまま薬草採集を再開することとなった。
殿下は恐ろしいくらいのスピードで本日中の課題をクリアしていく。
殿下はどこに何が自生しているのか分かっているみたいだけど…何で?超能力者?
「あの、薬草の場所、殿下は初見でわかるのですか?私は結構勉強した方ですが、未だにサンプルや図鑑を見なければ薬草の見分けがつきません。ですが殿下は躊躇うことなく採集されていますし、探す素振りすら感じられません。とてもお勉強なさったのですか?」
「こう見えても、王太子だからね。薬草くらい目を瞑ってても採集できるよ」
「殿下は凄いお方なのですね!薬草に関しては成績優秀者でも経験を積まなければ図鑑を手放せないと言われております。流石殿下ですね!」
本当に凄いことなのでお世辞ではなく心から殿下を褒めちぎっていると、殿下の表情が段々と暗くなっていくのですが。
「…ごめん、私が間違っていた」
「どうかされましたか?」
「いや、全てが間違いということではないんだ。確かにここ一年は頑張っていたんだよ。でもね、そうじゃないんだ。」
「殿下?」
「本当にごめん、野営訓練は2度目なんだ。だから君に褒められるほど優秀じゃなくてごめん…」
「ど、どういうことですか?二度目?今回が初めてだときいておりますが」
殿下がガシガシと頭を掻いてから、私に頭を下げる。
本当におやめください。私が殺さるので、不用意に頭を下げたりするのはおやめください。
「君との時間が欲しくて、一週間前に聖騎士達と訓練は終わらせている。だが不正を行ったわけではないから!」
えっ…えぇーーー??!!じゃあこの訓練は?何のための訓練ですか?え?えっ??
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