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殿下の口吻を受けた後、駆け付けた侍女さん方々に引っ張られて部屋に案内された。
外観では分からなかったけど、奥行きがあって思ってた以上に屋敷の中が広い。これで限りなく小さくしただと?嘘でしょ?
しかもこの案内された広い部屋は、私の為に用意された個室だとか。寝室は別で。
いや、もう全て一部屋にまとめてもらっても余るくらいの広さですよ。
言ってはなんですが、居心地悪いです。
そして今、私は侍女さんたちと睨み合っている状態です。
「どうか、湯浴みのお手伝いと衣服を整えさせてください!!」
「いや、確かに野営訓練からの直行ですけど、お風呂くらい自分で入ります」
「しかし私達が怒られてしまいます」
「服も自分で着ます。しかもドレスはちょっと…」
「殿下がお嬢様の為にご用意された物です!!どうか、どうかお召になってください!!」
二人の侍女と部屋に入ってからずっとこの状態…
「わかりました。私が殿下に直接訊いてきます。殿下はどちらにいらっしゃいますか?」
「そんな…私共がお伺いに参ります。どうかこの部屋でおくつろぎいただけないでしょうか?」
「いえ、私と殿下の問題なので、私が直接行きます。もし着替えるとしても、より殿下の好みの方が良いでしょ?」
こう言えば引き下がってくれるはず。侍女さんはハッとした表情をしてから、諦めた様に言う。
「すぐにお戻りくださいませ。準備しておきます。外に何名か侍女がおりますので、殿下の所在をお訊きください。必ず、必ずすぐにお戻りください。晩餐の時間も迫っております」
「…わかりました。行ってきます」
私はそう言うと部屋の扉を開け、連行されてきた道を戻った。
確かに野営訓練の服のままではお屋敷を汚してしまうかもしれないけど、ドレスはどうにか拒否したい。
学園の卒業式以来公の場でドレスを着ていない。ずっとパンツスタイルだ。
楽で良いのよね。重くないし身軽に動けるし。
ドレスは性に合ってないというか、気恥ずかしくて発狂するかもしれない。出来ることならシャツにパンツの騎士スタイルで乗り越えたい。
でも結婚かぁ…あの美しい殿下と?いやいや、まさか。正直まだ夢だと思ってる。
自分の頬をつねってみるけど、痛いだけで夢から醒める様子がない。
「痛いわね…」
ほんと、どうなってるのかしら。
しかし人気がない気がする。王太子殿下のお屋敷だと城内であれ警備とかもっと厳重だと思ってた。
人員も少なくしてるって言っていた気もするし、私なんかに割く予算なんてないってことかしら。
まぁ殿下の護衛は出来ますし、私自身騎士の端くれ、自分の身は自分で守れます。身支度も自分で出来ます。
「あ、すみません、そこの侍女さん」
忙しそうに早足で廊下を歩く若い侍女を見つけ声を掛けた。
「はい、どうかなさいましたか?」
「殿下がどちらにいらっしゃるか分かる?」
「はい、もちろんです。今は2階の書斎でジェット様とお話をされているかと思います」
「ジェット様?」
「はい、ジェット様は殿下の幼少期からのご友人とうかがっております。書斎の場所はおわかりですか?」
「ごめんなさい、教えてもらえる?」
「この中央の階段を上って右側の一番端のお部屋です」
侍女の指す方へ視線をやる。場所はわかったわ。
「ありがとう。足を止めさせてごめんなさいね」
「いえ、お嬢様のお役に立てて光栄です。お部屋までご案内出来ず申し訳ございません。では仕事に戻りますので失礼します」
若い侍女さんは一礼し、ニコッと笑って仕事に戻っていった。か、可愛い!!
学園を卒業したばかりかしら?私とそんなに年が変わらないようだけど、所作が綺麗。
そして部屋に居た侍女さんも今の侍女さんも、皆さん顔面偏差値がとてつもなく高い。
我がアヤナスピネル家には若い人は皆無だし、年配の侍女一人が母についてるだけで、他は自分のことは自分でするスタイルというか金銭面的に辛いというか、余裕がない。
殿下の婚約者とか…私でつとまると思えない…
重い足を引きずりながら、殿下のいらっしゃる書斎の前までやってきた。
ノックをしようとすると殿下とジェット様(?)のお話が聞こえてきた。
『……野営訓練に入る前……王太子妃の間に滞在してもらっている……』
『……聖騎士の護衛を……どうせあの部屋は今後彼女の住まい……慣れてもらわなければな。私は彼女の幸せを保障するし、必ず幸せにする……』
………え?
ノックしようとした手をギリギリで止めると、呆然と立ち尽くした。
私の聞き間違いでなければ、殿下は隣国の婚約者を王太子妃の間に滞在させておられ、彼女を必ず幸せにするとおっしゃったような……
考えること3秒。私は踵を返し、音を立てないように屋敷の玄関に向かった。
間違いでした、冗談でしたと、今分かって良かった。
ファーストキスについては、事故のようなもの。
うん、家に帰ろう。
もし案内された部屋に居座って、『まだ居たの?』なんて言われたら絶望しかない。
というか明日の説明会も、私は全く関係ないじゃない。
殿下は婚約者様とご結婚されるのだから、関係のない私が居たら誤解も解けないわ。
私は可能な限り早足で玄関の扉まで向かった。
みんな忙しそうにバタバタ動き回っていたので、気配を消すだけで難なく外に出ることに成功した。
まぁ招かれざる客なわけだから、居なくなっても気にしないわよね。
私は大きく深呼吸すると、王宮の客間に向かった。
勘違いで巻き込まれた父と兄を連れて一緒に帰らなきゃ、アヤナスピネル男爵家が恥をかいてしまう。
でも本当、どういうつもりだったのかしら。私を挟む意味があったの?
父に言った言葉も、私への言葉も、その場をおさめるための嘘?
もう巻き込まれないようにしないためにも、早急に誰かと縁を結ぶしかないか…お兄様が誰か紹介してくれると良いのだけど。
あ、部屋にいた侍女さんに何も言わずに出てきてしまったわ。
まぁどうにかなるか。まずは自分と家のことを考えなきゃね。
外観では分からなかったけど、奥行きがあって思ってた以上に屋敷の中が広い。これで限りなく小さくしただと?嘘でしょ?
しかもこの案内された広い部屋は、私の為に用意された個室だとか。寝室は別で。
いや、もう全て一部屋にまとめてもらっても余るくらいの広さですよ。
言ってはなんですが、居心地悪いです。
そして今、私は侍女さんたちと睨み合っている状態です。
「どうか、湯浴みのお手伝いと衣服を整えさせてください!!」
「いや、確かに野営訓練からの直行ですけど、お風呂くらい自分で入ります」
「しかし私達が怒られてしまいます」
「服も自分で着ます。しかもドレスはちょっと…」
「殿下がお嬢様の為にご用意された物です!!どうか、どうかお召になってください!!」
二人の侍女と部屋に入ってからずっとこの状態…
「わかりました。私が殿下に直接訊いてきます。殿下はどちらにいらっしゃいますか?」
「そんな…私共がお伺いに参ります。どうかこの部屋でおくつろぎいただけないでしょうか?」
「いえ、私と殿下の問題なので、私が直接行きます。もし着替えるとしても、より殿下の好みの方が良いでしょ?」
こう言えば引き下がってくれるはず。侍女さんはハッとした表情をしてから、諦めた様に言う。
「すぐにお戻りくださいませ。準備しておきます。外に何名か侍女がおりますので、殿下の所在をお訊きください。必ず、必ずすぐにお戻りください。晩餐の時間も迫っております」
「…わかりました。行ってきます」
私はそう言うと部屋の扉を開け、連行されてきた道を戻った。
確かに野営訓練の服のままではお屋敷を汚してしまうかもしれないけど、ドレスはどうにか拒否したい。
学園の卒業式以来公の場でドレスを着ていない。ずっとパンツスタイルだ。
楽で良いのよね。重くないし身軽に動けるし。
ドレスは性に合ってないというか、気恥ずかしくて発狂するかもしれない。出来ることならシャツにパンツの騎士スタイルで乗り越えたい。
でも結婚かぁ…あの美しい殿下と?いやいや、まさか。正直まだ夢だと思ってる。
自分の頬をつねってみるけど、痛いだけで夢から醒める様子がない。
「痛いわね…」
ほんと、どうなってるのかしら。
しかし人気がない気がする。王太子殿下のお屋敷だと城内であれ警備とかもっと厳重だと思ってた。
人員も少なくしてるって言っていた気もするし、私なんかに割く予算なんてないってことかしら。
まぁ殿下の護衛は出来ますし、私自身騎士の端くれ、自分の身は自分で守れます。身支度も自分で出来ます。
「あ、すみません、そこの侍女さん」
忙しそうに早足で廊下を歩く若い侍女を見つけ声を掛けた。
「はい、どうかなさいましたか?」
「殿下がどちらにいらっしゃるか分かる?」
「はい、もちろんです。今は2階の書斎でジェット様とお話をされているかと思います」
「ジェット様?」
「はい、ジェット様は殿下の幼少期からのご友人とうかがっております。書斎の場所はおわかりですか?」
「ごめんなさい、教えてもらえる?」
「この中央の階段を上って右側の一番端のお部屋です」
侍女の指す方へ視線をやる。場所はわかったわ。
「ありがとう。足を止めさせてごめんなさいね」
「いえ、お嬢様のお役に立てて光栄です。お部屋までご案内出来ず申し訳ございません。では仕事に戻りますので失礼します」
若い侍女さんは一礼し、ニコッと笑って仕事に戻っていった。か、可愛い!!
学園を卒業したばかりかしら?私とそんなに年が変わらないようだけど、所作が綺麗。
そして部屋に居た侍女さんも今の侍女さんも、皆さん顔面偏差値がとてつもなく高い。
我がアヤナスピネル家には若い人は皆無だし、年配の侍女一人が母についてるだけで、他は自分のことは自分でするスタイルというか金銭面的に辛いというか、余裕がない。
殿下の婚約者とか…私でつとまると思えない…
重い足を引きずりながら、殿下のいらっしゃる書斎の前までやってきた。
ノックをしようとすると殿下とジェット様(?)のお話が聞こえてきた。
『……野営訓練に入る前……王太子妃の間に滞在してもらっている……』
『……聖騎士の護衛を……どうせあの部屋は今後彼女の住まい……慣れてもらわなければな。私は彼女の幸せを保障するし、必ず幸せにする……』
………え?
ノックしようとした手をギリギリで止めると、呆然と立ち尽くした。
私の聞き間違いでなければ、殿下は隣国の婚約者を王太子妃の間に滞在させておられ、彼女を必ず幸せにするとおっしゃったような……
考えること3秒。私は踵を返し、音を立てないように屋敷の玄関に向かった。
間違いでした、冗談でしたと、今分かって良かった。
ファーストキスについては、事故のようなもの。
うん、家に帰ろう。
もし案内された部屋に居座って、『まだ居たの?』なんて言われたら絶望しかない。
というか明日の説明会も、私は全く関係ないじゃない。
殿下は婚約者様とご結婚されるのだから、関係のない私が居たら誤解も解けないわ。
私は可能な限り早足で玄関の扉まで向かった。
みんな忙しそうにバタバタ動き回っていたので、気配を消すだけで難なく外に出ることに成功した。
まぁ招かれざる客なわけだから、居なくなっても気にしないわよね。
私は大きく深呼吸すると、王宮の客間に向かった。
勘違いで巻き込まれた父と兄を連れて一緒に帰らなきゃ、アヤナスピネル男爵家が恥をかいてしまう。
でも本当、どういうつもりだったのかしら。私を挟む意味があったの?
父に言った言葉も、私への言葉も、その場をおさめるための嘘?
もう巻き込まれないようにしないためにも、早急に誰かと縁を結ぶしかないか…お兄様が誰か紹介してくれると良いのだけど。
あ、部屋にいた侍女さんに何も言わずに出てきてしまったわ。
まぁどうにかなるか。まずは自分と家のことを考えなきゃね。
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