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奴隷編
醜女―シコメ―
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「…………ん」
ぐわんぐわんと揺れる部屋。
陽射しの入ってこない一室の片隅に、天馬は木箱と共に転がされていた。
「…………あ、れ……?」
天馬の頭には何かの袋らしき物が被せられている。
しかし、袋にはご丁寧にも視界を確保できるよう、目の部分に二つの穴が開けられていた。
おかげで、視界が遮られているといった心配はない。
だが、
「……ここ、どこ?」
硬い床の感触。触れた材質はザラザラしていて、おそらく木であることが窺える。
何枚も板を合わせたような継ぎ目の床。これはあきらかに人工物だ。
しかし、辺りは真っ暗で何も見えない。
天馬はいまだに意識が朦朧としていたため、顔に袋が被せられていることにも気付いていなかった。
「……俺、どうして……あのあと、何が……」
霞が掛かっているかのように、天馬の頭はふわふわと安定しない。
状況を整理しようと思考するが、頭が働かないのではそれも難し状態だ。
ただ、それでも分かることが一つある。
天馬はウォルシーパイソンの脅威から、何とか助かった、という事実だ。
横になったまま、天馬は自分の体に触れる。
噛み付かれて傷を負った箇所には、布の感触。おそらく傷口からの出血を抑えるために巻かれた物だと判断した。
「誰か、助けてくれたのか……?」
天馬は一瞬そう考えるも、無造作に転がされていることの説明ができない。
怪我人に対して、最低限の応急処置だけしてほっといていると言った方がしっくりくる。
「うんしょ……」
天馬はひとまず、体をゆっくりと起こす。
しかし、
「いつっ――」
デジャブ感満載の体の痛み。
硬い床に寝ていたからとか、そういう類の痛みではない。
「ああ……なるほど、海からは引き上げられたけど、結局、俺はまた死ぬ寸前まで行ったわけだ……」
体に走った痛みにより、意識は完全に覚醒。
ぜぇぜぇと乱れる呼吸を落ち着けようと、天馬は胸に手を当てた。
「毎回これだと、本当にひどいな……」
天馬は海から引き上げられ、血液を徐々に失い、衰弱し、最終的には棺桶へと体半分突っ込んだ状態まで追い詰められた。その間、2日ほど。
再生が始まり、体の状態が回復するまでに、更に半日ほど掛かっていた。
しかし天馬には、ここに詰め込まれてからの正確な時間は把握できていない。
外の様子……昼か夜かも確認できていないこんな状況では、なおさらだ。
「はぁ……しんどい」
と、天馬が口にしたときだった。
『は~あ、何だって俺っちがあんな死に掛けの女の様子見てこねぇといけねぇんだよ……』
『愚痴を言うな……頭に言われたんだから、しかたねぇだろうが』
『つったてよぉ、メシ時にあんな汚ねぇ女を拝み行かせる事ねぇじゃねぇかよ……』
『それは……確かにな』
部屋の外から聞こえてきた、男二人の声。
壁を隔てているというのに、ハッキリと聞き取れる声に、天馬は思わず自分の耳に触れた。
驚きの表情を浮かべる天馬の元へと、声が少しずつ近付いて来るのが分かる。
ドカドカと不機嫌そうな足音がひとつに、それに付いていく静かな足音がひとつ……そのどちらも、天馬の耳は拾っていた。
かなりの地獄耳である。
『それにしても、あの女が引き上げられから、もう3日か……いい加減、死んだんじゃねぇのか?』
『さぁな。昨日確認した時は、まだ辛うじて生きていたからな……案外、まだ生きていたりしてな……』
『かっ! そうしたら俺がバラしてやろうか?』
『やめておけ。頭に殺されるぞ……』
『……それもそうだな』
どうやら、天馬の様子を見に来るようだ。
会話から聞こえてきた、引き上げられた、という内容からして、天馬がいるのは、ディーが話していた船である可能性が高くなった。
『もし死んでたら、今頃ウジでも沸いてたりしてな! はははっ!』
『うぷ……やめろ! マジでメシが食えなくなるだろうが!』
『わりぃわりぃ……さて、女の様子はっと……』
天馬が、あっ、と思ったときには、部屋の扉が開けられ、真っ暗だった部屋に光が差し込んできた。
暗闇に慣れていた視界に、光の刺激が入ってきたため、天馬は思わず目を瞑った。
手で顔に触れようとしたところで、カサリという音と共に、ごわごわとした感触が掌に生じる。
「なんだ、これ……」と天馬が口にするより早く、部屋に入ってきた男の一人が、驚愕の声を上げた。
「なっ、こいつ、起きてやがる?!」
「っ?! マジかよ……あの状態から、どうやって……」
入ってきた二人組は、粗い布で出来たシャツにズボンを着用した、無精髭の男と、髪の毛が抜けきったハゲ頭の男だった。
「おい! 俺は頭にこの事を報告してくる! お前はこいつを見張ってろ!」
無精髭の男が、ハゲ頭の男を残して、何処かに走り去ってしまった。
残された男は、困惑した表情を浮かべたまま、天馬に対して、まるで化け物で見るような視線を向けてくる。
「おい、お前……」
「え? えと、俺のこと?」
「俺? 変わった女だな……自分のことを俺とか言う女なんて……まぁいいか。それより、お前、何もんだ?」
警戒心をバリバリに放出して、入り口で天馬を睨み付ける男。
しかし天馬としても、自分のことをどう伝えていいのか分からず、困惑していた。
「えっと、お……いえ、その、『わたし』は、天馬っていう者です……その、一応、人間ですよ?」
男の時の癖で、自然と出てしまった俺という呼称を訂正し、天馬は自分をわたしと言い直した。
しかし、
「は? にんげん? 何だそりゃ?」
天馬の呼称よりも、人間という単語の方に男は反応した。
「あっ……えっと、ま、間違えましたっ。わ、わたしは……えと、その……」
「そうか、ここでは人間という単語はないのか」と天馬は気付き、言い直そうとしどろもどろになってしまう。
「そ、そう! 人です!」
天馬はディーから聞いたこの世界に生きる種族で、何が自分に当てはまるかを考え、咄嗟に人《ヒューム》だと男に自分を紹介した。
どう考えても、自分の容姿は森精霊や土精霊ではないし、動物的な特徴もないので、獣人でもない、という判断だ。
「……変な奴だな……見た目でそんなことは分かってんだが……まぁ、あの怪我だし、頭が多少イカれててもおかしくはないか……」
「ひ、ひどい言われよで……」
「まぁ、見た目ってことなら、引き上げた時に見せられたお前の顔は……『かなり見れたもんじゃなかった』がな……」
「え?」
天馬の言葉を途中で遮り、男が掛けた言葉。
それに天馬は、思わずキョトンとした顔をする。
袋を被せられているので、外から表情を窺うことはできないが、ポカンとしている事は男も理解できたようだ。
「おいおい……お前、自分の顔がどうなってんのか理解してないのかよ? ひでぇもんだったぜ。まるで醜女だ、し・こ・め」
「あ………………そう、ですよね……わたしなんて……」
「そうだ。自分の顔は、生前の強面が面影として残ってるんだった」と天馬は惰女神の言葉を思い出した。
しかし、実際のところ男と天馬が認識している『ひどい顔』というのものには大きな認識の隔たりがあり、天馬の顔が元からブスというわけではないのだが……
とはいえ、男が見たときの天馬の顔は、なまじ綺麗な顔立ちがぐちゃぐちゃになっているという凄惨なものだったため、顔を顰めるのは仕方がない。
「見れたもんじゃない……はは、当然ですよね、こんなブス」
「……何ぶつくさ言ってんだよ、お前?」
「いえ、何でも、ないです……」
天馬は、自分の顔に袋が被せられているのは何故なのかと思っていたが、今の男の言葉で、納得してしまった。
ああ。自分はこんなもので隠さねばならないほどに、醜い顔をしているんだな、と……
天馬は袋の端を握り締め、更に自分の顔を隠そうと、下に引っ張った。
「醜女、か。………………うん?」
そうして俯く天馬の耳に、複数人の足音が届いてくる。
走っているわけはないようだが、急ぎ足であることには違いない、カツカツという足音。
「――女が目を覚ましてるってのは、本当なのかい?」
「あ、頭。ええ、ご覧の通りでさ」
「どれ……ほぉ、話に聞いたときはまさかと思ったけど、本当に起きてるとはねぇ……」
部屋に現れたのは、赤い髪を後ろで無造作に束ねた、天馬と同い年くらいの女性だった。
後ろにはガラの悪そうな男を数人連れてきており、彼らよりも頭一つ分背が低いというのに、放たれる圧迫感は相当なものであった。
頭、と呼ばれていることからも、彼女が彼らのリーダー的存在なのは間違いない。
「あの、あなたがわたしを助けてくれたんですか? その、この治療も?」
そう問いかける天馬に、女はキョトンとした表情を浮かべたのち、呆れたような笑みを浮かべた。
「治療、ねぇ……そんなぼろ切れを傷に巻いただけの行為が治療なら、まぁそうだよ。あんたを海から引き上げるように指示したのも、あたしさ。つまりは、命の恩人ってわけだ」
「それは、本当にありがとうございます」
天馬は、彼女の言葉に何か違和感を覚えながらも、深々と頭を下げた。
「礼には及ばないさ。むしろあたしとしては、こっちが礼を言いたいくらいでねぇ……」
すると、赤髪の女性はそんなことを口にしながら、口角を上げて、ひどく凶悪な笑みを浮かべた。
後ろに控えている男連中も、どことなく下卑た薄ら笑いを浮かべている。
「何せ、『売れる商品』が増えたんだからねぇ……こっちとしても、あんたを引き上げた甲斐があったってもんだよ」
「え?」
聞き間違いだろうか? 今、彼女はなんと言ったのだろう。
『売れる、商品』?
いったい彼女が何を言っているのか理解できず、天馬の頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。
「状況を理解できてないみたいだから言っておくよ。あんたは、これからとある領地に、『奴隷』として売られるのさ」
「っ?!」
奴隷という、元の世界ではほとんど聞くことのない単語に、天馬の身体がビクリと反応した。
「最初は、どうせ死ぬんだろうと思っていたんだけどねぇ……こうして起き上がれるまでに回復したなら、無事に売ることができるよ。いやぁ、本当に感謝するよ」
「ま、待って下さい! お……わたしが奴隷って、どいうことですか?! あなたは、わたしを親切で助けてくれたんじゃ!」
「親切? はははははっ! これは傑作だねぇ。普通、親切で海から引き上げられたんなら、そんな雑な治療はしないし、こんな暗い倉庫に放り込んでおくわけないって、気付かないのかねぇ?」
「な……」
唖然とする天馬をよそに、女はずかずかと部屋に入ってくると、天馬の前に膝を折り、彼女が被った袋に手を掛けた。
「っ! やめてください!」
咄嗟に手を払い除け、後ろに下がる。
女はニタリと嫌味を含んだ笑みを張り付かせ、天馬の姿をまじまじと観察した。
「その袋を取られるのは嫌かい……どうやら自分が醜い面をしていることは理解してるんだねぇ……」
「はい……それで誰かの目を汚したくはありません。ですから、これを取るのは、やめてください……」
天馬は、ぎゅうっと袋を握って、取られたくない意思を表した。
小さく俯くその姿に、女は何かを刺激されたのか、更にその酷薄な笑みを深くした。
「く、くくく……安心しなよ。あたしだってあんたの醜い顔は見たくないからねぇ……お望み通り、袋はそのままにしておいてやるよ。でも……」
ひと呼吸分の間が空き、女は笑みを絶やさずに、言葉を続けた。
「奴隷風情の願いを聞き届けるからには、それなりの『対価』を要求するよ。お前たち、性交渉以外なら許してやるから、好きに遊んでおやり」
「「へい」」
「へ?」
その一言を最後に、女は部屋の外、扉の前に陣取った。
すると、代わりに男連中が中に入ってきて、こう呟く。
「へへ。ずっと船の上で退屈してたんだよ。頭の許しも出たし、俺達としばらく付き合ってもらうぜ」
「ひひ、どうせならその体にぶちこんでやりたいとも思ってんだがぁ……」
「やめておけ、ヤッてもし性病でも貰ったら、洒落にならねぇぞ」
「それに、あんな気味の悪い女を抱いたら、呪われそうだぜ」
「ああ、なるほど。頭はむしろ、俺達を気遣ってくれたわけだ」
「おい、いい加減始めようぜ」
「「おう」」
「ひっ!」
好き勝手言っている男達を前に、天馬の口から小さく悲鳴が上がった。
「そんじゃ、鬱憤晴らしの始まりだ」
そこから始まったのは、天馬をサンドバックにした、壮絶なリンチであった。
殴る、蹴るは当たり前。時には首を絞められ、壁に向かって投げつけられることも。
天馬が怪我人だという認識が彼らにはあったはずなのに、今の彼らにはそんなことどうでもようだ。
海の上で娯楽も少ない彼らには、今こうして、天馬に暴行を加えていることこそが、最大の娯楽になっていたのだ。
天馬への暴行は、その苛烈さとは裏腹に、10分足らずで終了した。
部屋でぼろ雑巾のように捨てられた天馬を尻目に、男達の顔には、なぜか『苦痛の表情』が浮かんでいた。
「なんだい。随分と早く切り上げたんだねぇ? 興が乗らなかったのかい?」
「い、いえ! そんなことは、決して……」
「そ、そうですよ! 今回は、たまたま短かっただけですって!」
「はは! 頭のお陰で、俺達だいぶすっきりできましたよ! なぁ皆!」
最後の男の言葉に、その場にいた全員が頷く。
しかし、その顔には何故か焦りが見られ、女はそんな部下たちの表情に首を傾げた。
「……まぁ、あんたらがそう言うなら別にいいんだけどねぇ……それと、その女は『人外』共と同じ部屋に突っ込んでおきな。気味の悪い女だからねぇ、畜生共と同じ場所に入れておいてやった方が、『親切』ってもんだろ?」
「わかりやした。おい、もう一人は俺と一緒に、この女を運ぶぞ!」
女の部下二人が、天馬の傍に近付き、その体を持ち上げた。
「ん……」
その際に、天馬の口から声が漏れた。
実はこの時、天馬の意識ははっきりとしていたのである。
あれだけの暴行を受けたにも関わらず、天馬の体には痣ひとつ付いていなかった。
それと、天馬は最初の一発を貰ったときから、体を丸めて、痛がる素振りを見せつつも、内心ではこう思っていた。
「……あれ? 全然痛くない」と。
一番痛覚を刺激されたのは、壁に投げつけられた時だったが、それだって大して苦痛を感じなかった。
そして男達の息が上がり、リンチが終了したのを見計らい、天馬は気絶したふりを実行。今に至る。
「ちっ! どうなってんだよ、この女……まるで、木の丸太でも殴ってるみてぇだったぞ……」
華奢な見た目と、表面の柔らかい感触とは裏腹に、皮膚の下に生木でも入っているのかと疑いたくなるほど、殴った瞬間に返ってきた衝撃は鈍かった。
結果として、男達は、手や足を痛めていたのである。
さすがに、こんな細身の女に自分たちの方が体を壊した事実を頭に知られるわけにはいかず、あの場では誤魔化したが。
それにしても、この女の異常な頑丈さは何なんだ? という疑問を孕んだ視線を天馬に向けながら、男二人は部屋を後にした。
「たっくよ……あの怪我からの回復といい、やたら硬い体といい、本当に気味の悪い女だぜ……」
男が口にした言葉に、負け惜しみのようなものを感じつつ、天馬は運ばれている間、ずっと気絶したふりを続けたのだった。
ぐわんぐわんと揺れる部屋。
陽射しの入ってこない一室の片隅に、天馬は木箱と共に転がされていた。
「…………あ、れ……?」
天馬の頭には何かの袋らしき物が被せられている。
しかし、袋にはご丁寧にも視界を確保できるよう、目の部分に二つの穴が開けられていた。
おかげで、視界が遮られているといった心配はない。
だが、
「……ここ、どこ?」
硬い床の感触。触れた材質はザラザラしていて、おそらく木であることが窺える。
何枚も板を合わせたような継ぎ目の床。これはあきらかに人工物だ。
しかし、辺りは真っ暗で何も見えない。
天馬はいまだに意識が朦朧としていたため、顔に袋が被せられていることにも気付いていなかった。
「……俺、どうして……あのあと、何が……」
霞が掛かっているかのように、天馬の頭はふわふわと安定しない。
状況を整理しようと思考するが、頭が働かないのではそれも難し状態だ。
ただ、それでも分かることが一つある。
天馬はウォルシーパイソンの脅威から、何とか助かった、という事実だ。
横になったまま、天馬は自分の体に触れる。
噛み付かれて傷を負った箇所には、布の感触。おそらく傷口からの出血を抑えるために巻かれた物だと判断した。
「誰か、助けてくれたのか……?」
天馬は一瞬そう考えるも、無造作に転がされていることの説明ができない。
怪我人に対して、最低限の応急処置だけしてほっといていると言った方がしっくりくる。
「うんしょ……」
天馬はひとまず、体をゆっくりと起こす。
しかし、
「いつっ――」
デジャブ感満載の体の痛み。
硬い床に寝ていたからとか、そういう類の痛みではない。
「ああ……なるほど、海からは引き上げられたけど、結局、俺はまた死ぬ寸前まで行ったわけだ……」
体に走った痛みにより、意識は完全に覚醒。
ぜぇぜぇと乱れる呼吸を落ち着けようと、天馬は胸に手を当てた。
「毎回これだと、本当にひどいな……」
天馬は海から引き上げられ、血液を徐々に失い、衰弱し、最終的には棺桶へと体半分突っ込んだ状態まで追い詰められた。その間、2日ほど。
再生が始まり、体の状態が回復するまでに、更に半日ほど掛かっていた。
しかし天馬には、ここに詰め込まれてからの正確な時間は把握できていない。
外の様子……昼か夜かも確認できていないこんな状況では、なおさらだ。
「はぁ……しんどい」
と、天馬が口にしたときだった。
『は~あ、何だって俺っちがあんな死に掛けの女の様子見てこねぇといけねぇんだよ……』
『愚痴を言うな……頭に言われたんだから、しかたねぇだろうが』
『つったてよぉ、メシ時にあんな汚ねぇ女を拝み行かせる事ねぇじゃねぇかよ……』
『それは……確かにな』
部屋の外から聞こえてきた、男二人の声。
壁を隔てているというのに、ハッキリと聞き取れる声に、天馬は思わず自分の耳に触れた。
驚きの表情を浮かべる天馬の元へと、声が少しずつ近付いて来るのが分かる。
ドカドカと不機嫌そうな足音がひとつに、それに付いていく静かな足音がひとつ……そのどちらも、天馬の耳は拾っていた。
かなりの地獄耳である。
『それにしても、あの女が引き上げられから、もう3日か……いい加減、死んだんじゃねぇのか?』
『さぁな。昨日確認した時は、まだ辛うじて生きていたからな……案外、まだ生きていたりしてな……』
『かっ! そうしたら俺がバラしてやろうか?』
『やめておけ。頭に殺されるぞ……』
『……それもそうだな』
どうやら、天馬の様子を見に来るようだ。
会話から聞こえてきた、引き上げられた、という内容からして、天馬がいるのは、ディーが話していた船である可能性が高くなった。
『もし死んでたら、今頃ウジでも沸いてたりしてな! はははっ!』
『うぷ……やめろ! マジでメシが食えなくなるだろうが!』
『わりぃわりぃ……さて、女の様子はっと……』
天馬が、あっ、と思ったときには、部屋の扉が開けられ、真っ暗だった部屋に光が差し込んできた。
暗闇に慣れていた視界に、光の刺激が入ってきたため、天馬は思わず目を瞑った。
手で顔に触れようとしたところで、カサリという音と共に、ごわごわとした感触が掌に生じる。
「なんだ、これ……」と天馬が口にするより早く、部屋に入ってきた男の一人が、驚愕の声を上げた。
「なっ、こいつ、起きてやがる?!」
「っ?! マジかよ……あの状態から、どうやって……」
入ってきた二人組は、粗い布で出来たシャツにズボンを着用した、無精髭の男と、髪の毛が抜けきったハゲ頭の男だった。
「おい! 俺は頭にこの事を報告してくる! お前はこいつを見張ってろ!」
無精髭の男が、ハゲ頭の男を残して、何処かに走り去ってしまった。
残された男は、困惑した表情を浮かべたまま、天馬に対して、まるで化け物で見るような視線を向けてくる。
「おい、お前……」
「え? えと、俺のこと?」
「俺? 変わった女だな……自分のことを俺とか言う女なんて……まぁいいか。それより、お前、何もんだ?」
警戒心をバリバリに放出して、入り口で天馬を睨み付ける男。
しかし天馬としても、自分のことをどう伝えていいのか分からず、困惑していた。
「えっと、お……いえ、その、『わたし』は、天馬っていう者です……その、一応、人間ですよ?」
男の時の癖で、自然と出てしまった俺という呼称を訂正し、天馬は自分をわたしと言い直した。
しかし、
「は? にんげん? 何だそりゃ?」
天馬の呼称よりも、人間という単語の方に男は反応した。
「あっ……えっと、ま、間違えましたっ。わ、わたしは……えと、その……」
「そうか、ここでは人間という単語はないのか」と天馬は気付き、言い直そうとしどろもどろになってしまう。
「そ、そう! 人です!」
天馬はディーから聞いたこの世界に生きる種族で、何が自分に当てはまるかを考え、咄嗟に人《ヒューム》だと男に自分を紹介した。
どう考えても、自分の容姿は森精霊や土精霊ではないし、動物的な特徴もないので、獣人でもない、という判断だ。
「……変な奴だな……見た目でそんなことは分かってんだが……まぁ、あの怪我だし、頭が多少イカれててもおかしくはないか……」
「ひ、ひどい言われよで……」
「まぁ、見た目ってことなら、引き上げた時に見せられたお前の顔は……『かなり見れたもんじゃなかった』がな……」
「え?」
天馬の言葉を途中で遮り、男が掛けた言葉。
それに天馬は、思わずキョトンとした顔をする。
袋を被せられているので、外から表情を窺うことはできないが、ポカンとしている事は男も理解できたようだ。
「おいおい……お前、自分の顔がどうなってんのか理解してないのかよ? ひでぇもんだったぜ。まるで醜女だ、し・こ・め」
「あ………………そう、ですよね……わたしなんて……」
「そうだ。自分の顔は、生前の強面が面影として残ってるんだった」と天馬は惰女神の言葉を思い出した。
しかし、実際のところ男と天馬が認識している『ひどい顔』というのものには大きな認識の隔たりがあり、天馬の顔が元からブスというわけではないのだが……
とはいえ、男が見たときの天馬の顔は、なまじ綺麗な顔立ちがぐちゃぐちゃになっているという凄惨なものだったため、顔を顰めるのは仕方がない。
「見れたもんじゃない……はは、当然ですよね、こんなブス」
「……何ぶつくさ言ってんだよ、お前?」
「いえ、何でも、ないです……」
天馬は、自分の顔に袋が被せられているのは何故なのかと思っていたが、今の男の言葉で、納得してしまった。
ああ。自分はこんなもので隠さねばならないほどに、醜い顔をしているんだな、と……
天馬は袋の端を握り締め、更に自分の顔を隠そうと、下に引っ張った。
「醜女、か。………………うん?」
そうして俯く天馬の耳に、複数人の足音が届いてくる。
走っているわけはないようだが、急ぎ足であることには違いない、カツカツという足音。
「――女が目を覚ましてるってのは、本当なのかい?」
「あ、頭。ええ、ご覧の通りでさ」
「どれ……ほぉ、話に聞いたときはまさかと思ったけど、本当に起きてるとはねぇ……」
部屋に現れたのは、赤い髪を後ろで無造作に束ねた、天馬と同い年くらいの女性だった。
後ろにはガラの悪そうな男を数人連れてきており、彼らよりも頭一つ分背が低いというのに、放たれる圧迫感は相当なものであった。
頭、と呼ばれていることからも、彼女が彼らのリーダー的存在なのは間違いない。
「あの、あなたがわたしを助けてくれたんですか? その、この治療も?」
そう問いかける天馬に、女はキョトンとした表情を浮かべたのち、呆れたような笑みを浮かべた。
「治療、ねぇ……そんなぼろ切れを傷に巻いただけの行為が治療なら、まぁそうだよ。あんたを海から引き上げるように指示したのも、あたしさ。つまりは、命の恩人ってわけだ」
「それは、本当にありがとうございます」
天馬は、彼女の言葉に何か違和感を覚えながらも、深々と頭を下げた。
「礼には及ばないさ。むしろあたしとしては、こっちが礼を言いたいくらいでねぇ……」
すると、赤髪の女性はそんなことを口にしながら、口角を上げて、ひどく凶悪な笑みを浮かべた。
後ろに控えている男連中も、どことなく下卑た薄ら笑いを浮かべている。
「何せ、『売れる商品』が増えたんだからねぇ……こっちとしても、あんたを引き上げた甲斐があったってもんだよ」
「え?」
聞き間違いだろうか? 今、彼女はなんと言ったのだろう。
『売れる、商品』?
いったい彼女が何を言っているのか理解できず、天馬の頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。
「状況を理解できてないみたいだから言っておくよ。あんたは、これからとある領地に、『奴隷』として売られるのさ」
「っ?!」
奴隷という、元の世界ではほとんど聞くことのない単語に、天馬の身体がビクリと反応した。
「最初は、どうせ死ぬんだろうと思っていたんだけどねぇ……こうして起き上がれるまでに回復したなら、無事に売ることができるよ。いやぁ、本当に感謝するよ」
「ま、待って下さい! お……わたしが奴隷って、どいうことですか?! あなたは、わたしを親切で助けてくれたんじゃ!」
「親切? はははははっ! これは傑作だねぇ。普通、親切で海から引き上げられたんなら、そんな雑な治療はしないし、こんな暗い倉庫に放り込んでおくわけないって、気付かないのかねぇ?」
「な……」
唖然とする天馬をよそに、女はずかずかと部屋に入ってくると、天馬の前に膝を折り、彼女が被った袋に手を掛けた。
「っ! やめてください!」
咄嗟に手を払い除け、後ろに下がる。
女はニタリと嫌味を含んだ笑みを張り付かせ、天馬の姿をまじまじと観察した。
「その袋を取られるのは嫌かい……どうやら自分が醜い面をしていることは理解してるんだねぇ……」
「はい……それで誰かの目を汚したくはありません。ですから、これを取るのは、やめてください……」
天馬は、ぎゅうっと袋を握って、取られたくない意思を表した。
小さく俯くその姿に、女は何かを刺激されたのか、更にその酷薄な笑みを深くした。
「く、くくく……安心しなよ。あたしだってあんたの醜い顔は見たくないからねぇ……お望み通り、袋はそのままにしておいてやるよ。でも……」
ひと呼吸分の間が空き、女は笑みを絶やさずに、言葉を続けた。
「奴隷風情の願いを聞き届けるからには、それなりの『対価』を要求するよ。お前たち、性交渉以外なら許してやるから、好きに遊んでおやり」
「「へい」」
「へ?」
その一言を最後に、女は部屋の外、扉の前に陣取った。
すると、代わりに男連中が中に入ってきて、こう呟く。
「へへ。ずっと船の上で退屈してたんだよ。頭の許しも出たし、俺達としばらく付き合ってもらうぜ」
「ひひ、どうせならその体にぶちこんでやりたいとも思ってんだがぁ……」
「やめておけ、ヤッてもし性病でも貰ったら、洒落にならねぇぞ」
「それに、あんな気味の悪い女を抱いたら、呪われそうだぜ」
「ああ、なるほど。頭はむしろ、俺達を気遣ってくれたわけだ」
「おい、いい加減始めようぜ」
「「おう」」
「ひっ!」
好き勝手言っている男達を前に、天馬の口から小さく悲鳴が上がった。
「そんじゃ、鬱憤晴らしの始まりだ」
そこから始まったのは、天馬をサンドバックにした、壮絶なリンチであった。
殴る、蹴るは当たり前。時には首を絞められ、壁に向かって投げつけられることも。
天馬が怪我人だという認識が彼らにはあったはずなのに、今の彼らにはそんなことどうでもようだ。
海の上で娯楽も少ない彼らには、今こうして、天馬に暴行を加えていることこそが、最大の娯楽になっていたのだ。
天馬への暴行は、その苛烈さとは裏腹に、10分足らずで終了した。
部屋でぼろ雑巾のように捨てられた天馬を尻目に、男達の顔には、なぜか『苦痛の表情』が浮かんでいた。
「なんだい。随分と早く切り上げたんだねぇ? 興が乗らなかったのかい?」
「い、いえ! そんなことは、決して……」
「そ、そうですよ! 今回は、たまたま短かっただけですって!」
「はは! 頭のお陰で、俺達だいぶすっきりできましたよ! なぁ皆!」
最後の男の言葉に、その場にいた全員が頷く。
しかし、その顔には何故か焦りが見られ、女はそんな部下たちの表情に首を傾げた。
「……まぁ、あんたらがそう言うなら別にいいんだけどねぇ……それと、その女は『人外』共と同じ部屋に突っ込んでおきな。気味の悪い女だからねぇ、畜生共と同じ場所に入れておいてやった方が、『親切』ってもんだろ?」
「わかりやした。おい、もう一人は俺と一緒に、この女を運ぶぞ!」
女の部下二人が、天馬の傍に近付き、その体を持ち上げた。
「ん……」
その際に、天馬の口から声が漏れた。
実はこの時、天馬の意識ははっきりとしていたのである。
あれだけの暴行を受けたにも関わらず、天馬の体には痣ひとつ付いていなかった。
それと、天馬は最初の一発を貰ったときから、体を丸めて、痛がる素振りを見せつつも、内心ではこう思っていた。
「……あれ? 全然痛くない」と。
一番痛覚を刺激されたのは、壁に投げつけられた時だったが、それだって大して苦痛を感じなかった。
そして男達の息が上がり、リンチが終了したのを見計らい、天馬は気絶したふりを実行。今に至る。
「ちっ! どうなってんだよ、この女……まるで、木の丸太でも殴ってるみてぇだったぞ……」
華奢な見た目と、表面の柔らかい感触とは裏腹に、皮膚の下に生木でも入っているのかと疑いたくなるほど、殴った瞬間に返ってきた衝撃は鈍かった。
結果として、男達は、手や足を痛めていたのである。
さすがに、こんな細身の女に自分たちの方が体を壊した事実を頭に知られるわけにはいかず、あの場では誤魔化したが。
それにしても、この女の異常な頑丈さは何なんだ? という疑問を孕んだ視線を天馬に向けながら、男二人は部屋を後にした。
「たっくよ……あの怪我からの回復といい、やたら硬い体といい、本当に気味の悪い女だぜ……」
男が口にした言葉に、負け惜しみのようなものを感じつつ、天馬は運ばれている間、ずっと気絶したふりを続けたのだった。
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