湖に刻まれた記憶 失われた叡智を求めて-生成AIと綴る物語-

Kai

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- 1 - ニュース発表の裏側と新規アシスタント

- 1 - ニュース発表の裏側と新規アシスタント 4話

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不躾な物言いに一言で、室内の空気が鈍く重たくなる。




日常、機嫌を取られることに慣れた彼女たちには耐えがたい無礼だったに違いない。 だが、レンは一切意に介さず資料を机に置くと投影機を発動させ、続けた。





「君たちはここでアシスタント業務に就くにあたり、契約書に署名したはずだ。 ――内容はもちろん読んだ上で、だろうな?」





小さく誰かの喉が鳴る音がした。 レンは冷ややかな目を向けた。






「まあ、立場ある人間が内容も確認せず、しかも神聖契約――



一度結べば決して解除できず、その誓いは直接魔力に刻まれる――そんな絶対的な契約に同意するなどあるはずはないだろう。 



ああこちらに来て忙しさにかまけて忘れたか? 



なら、今日この場で改めて思い出してもらおう。」






レンは投影機に映す内容を契約書の内容の隣に古代語のテキストも投射する。






「課題は単純だ。 



この古代語のテキスト、これを1ヶ月以内に解読するように。 


条件未達なら、当然アシスタント失格だ。」





さらに声のトーンを下げる。






「加えて。 


記憶の湖に関わる情報の流出、違法薬物の使用、既成事実の捏造、他者への危害―― これら違反行為に対しては、誓いを破った者の魔力そのものを封印するだけでなく、出身国との外交問題、場合によっては国際条約に基づく制裁すら視野に入っている。 




その覚悟でここに来た事を思い出し、改めて確認して欲しい。」







室内は沈黙に包まれたままだった。




漂う香水の臭気だけが、頭痛を誘う。 




レンは資料を指で弾きながら、締めくくった。








「では、1ヶ月後、今日と同じ時間にここで課題提出だ。 



資料はここに置いていく。




各自自分の名前があるものを持っていくように。



 質問があれば自国の大使を通して、我が国の王室設置の翻訳チーム対応室に申し出ろ。




 ――以上。」






レンの一方的な発言を終わらせ投影機の発動を止める。





鼻しらんでいた娘たちも映されていた契約書の内容に、顔色が悪くなっている者もいる。





言い捨てるようにしてレンは踵を返した。





怒りを含んだ呼吸、乾いた衣擦れの音が背後で交錯する。





だが振り返るつもりはない。 レンは、ただドアへ向かって歩く。







あと数歩で出られる、その瞬間。






甲高い叫び声に似た声が、背後から飛んで来た。



レンは一度だけ、深く息を吐いた。









「待ってください!


 この長文を1人で1ヶ月で解読するとはどういうことですか?! 


 王子様と一緒に研究室で作業するのではないのですか!


 それに違反した場合の条約変更はあまりに酷い措置です! 


 我が国に対してこのような振る舞いが許されるとお思いですか!」






貴意の高い小国の令嬢が、怒りとも嘆きともつかない声を上げた。






レンは、心の中で冷めた吐息をつく。






──ああ、やっぱり契約書、読んでなかったか…。





呆れを通り越し、別世界の人間を相手にしているかのような疲労感に襲われる。


一人が声をあげたことで他の娘たちも、次々と不平不満を口にしはじめた。


内心で各国の重役たちを罵倒しながら、レンは感情を一切排した声で告げた。







「まず、3点だけ明確にしておこう。」




「一、 あなた方の国から、嘘偽りが書けない神聖紙で、事前説明を受けたと正式報告されている。 知らないという主張は認められない。」




「二、 古代語の翻訳は、1人1課題。 アシスタントは各研究者に個別に配属される。 共同作業は、契約上、存在しない。」




「三、 私は先ほど、質問は自国の大使経由で行うように指示した。 なぜここで直接問う?」




さらに、無表情のまま追い打ちをかける。




「この契約内容は我が国だけが定めたものではない。




小国に対して振る舞いを許す、許さないだが、それに関しても契約書にある通りだ。





また、ここは君たちの国ではない。





君たちより爵位が上の研究者たちに、自国と同じ振る舞いを期待しないことだ。




聞いていると思うが、この研究所は王族の傍系でありながら、代々この叡智の湖研究に人生を捧げ、王家と研究所を繋いできた専門家筋が主体で運営している。




その立場と知識は、単なる爵位では測れない重みを持つ。




甘く見ないことだな。」







そして鋭く突き刺すように、最後の一撃を。






「なお、王子以外に鞍替えを試みようにも無駄だ。 



ここにいる職員は全員既婚者かつ神聖契約済みだ。



 無理に離縁させて嫁いでくる算段など、最初から成立しないと理解しておけ。 




では、1ヶ月後に」







冷ややかな沈黙が部屋を満たした。





レンは唖然とする娘たちが正気に戻り何か言い返す前に、静かに、しかし迅速に部屋を後にした。


















疲労が顔ににじみ出たまま資料室へ逃げ帰ったレンに、オリバーが苦笑いを浮かべながらコーヒーを手渡した。




「おかえり。 1時間も経ってないのに、生気抜けてるぞ。」




コーヒーを一口飲んで、レンはぼそりとこぼした。





「笑い事じゃない、本当に疲れた。 



彼女たちの国どうなってるんだ? 




古代語でもあれは、教科書にも載ってるような初歩的なものだったんだぞ



流石に最初から複雑なものを出して、国同士が揉めないように配慮して段階を踏んだのにありえないだろ。




副所長は『簡易契約』だったから情報が漏れたが、あれだけの騒ぎになった以上、今回のアシスタントはもちろん、全ての新規研究者には『神聖契約』が絶対条件だ。




魔力に誓いを刻むことの重みを理解していないなら、そもそも席に座る資格もない。」







彼女たちとのやりとりを話すと、オリバーは腹を抱えて笑いながら言った。




「研究者を出したくないから、王子に嫁がせて同盟強化でおこぼれを狙ったんだろ。


特にギリトの孫娘なんて、研究より王子の隣が目的だろうしな。


他の令嬢たちも、自国の権力争いの駒として、あるいはレオントポディウムの叡智の分け前にあずかろうという魂胆で送り込まれてきたようなもんだ。」





あまりにも現実的な分析に、レンは頭痛を覚えながらも頷く。




今回の取り決めでは、優秀な人材を送れば名誉は得られるが、


権利分配を考えると自国で研究を続けた方が得策だと考える国がほとんどだった。



が、しかし復元が自国でうまく行かず、我が国の翻訳が進んだ場合、格差が大きくなる為に何かしらの保険をかけておきたいというのが本音だろう。





ただ、アシスタントの件は権力争いや政治的判断で見送った国もなんらかの形で加わろうとしている状態だからこそ、甘い前例は絶対に作れない。






「とにかく今日は早く上がって、塊肉のチリトマト煮とビールだ。 


もう、上がっていいか? 


王家の傍系とはいえ、ウチは代々この叡智の湖研究と、それに関わる王家の務めを専門に支えてきた家系だ。


こんな政治的な茶番に付き合わされるために研究者になったわけじゃない。」





レンの悲痛な願いに、オリバーは苦笑しながら答えた。





「気持ちはわかるがダメだ。まずはこれを見てくれ。」



手渡されたのは、薄い平形の水盤2つ。 


そこには、復元された古代語が刻まれていた。




「この騒動で本館に隔離されている奴らから、新たに復元が出来たと送られてきたんだが、前回のと魔力の波形が異なるみたいなんだ」




オリバーから2つの復元された古代語を写した薄い平形の水盤を渡される。



疲れきったレンは、再びコーヒーに口をつけながら、水盤を覗き込んだ。









――――――――――








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