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第5話 リハビリ
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「アルマ、君は生きたいか?」
最初は俺の質問を理解できていない様子のアルマだったが、俺は彼女の右目から流れた落ちた涙を答えとして受け取った。
「未練の無い人間に、涙は似合わないよ」
そして俺はアルマの横に立てかけてあった刀を手に取り、ゆっくりと部屋を後にするのだった。
◇
「は、ははぁ……さすがは”天恵のロードライツ”と呼ばれるだけありますね。10年も戦闘から遠ざかっていると聞いていましたが、たった数秒で感覚を取り戻しているように見える」
「天恵か。俺にとってはただの災いみたいなモノだよ」
俺は久しぶりに握った愛刀の感触を確かめつつ、家の外に吹き飛ばした男との距離を詰めていく。
やはり俺の予想通り刃物の毒は効いておらず、記憶忘却系の魔法も発動はしていないようだ。まあ自分の武器で死ぬようなマヌケが、あの名門暗殺家にいるはずもないか。
「すまないが、君のアルマ暗殺は止めさせてもらう。ここまで巻き込まれた以上、部外者ではいられないんでね」
「ふん、一体あの女に何を吹き込まれたんでしょうねぇ……。まさか偉大な勇者様が、あんな出来損ないを守るなんて予想外ですよ」
男はそう言いつつも、既に回復魔法によって肩の傷も治しきっていた。
そもそも回復魔法だって、誰でも使えるような簡単な代物では無い。やはり相当に恵まれた才能の持ち主のようだ。
「もうここまでの状況になってしまっては、暗殺の痕跡もクソもありませんね。相手があのロードライツとなれば尚更……本気で戦うしかありませんからっ!」
そう言うと男は血の染みついた黒いジャケットを脱ぎ捨て、白いカッターシャツに無数に仕込まれた刃物を露わにしていた。
だが俺は刃物よりも、彼の”スピード”と”脚力”に警戒している。
あんな狭い部屋の中でも、繊細かつ大胆な高速移動ができる強靭な足。アレを警戒しない方がバカだ。
「行きますよ……?まぁもう行ってるんですけど」
刹那、俺は背後から突然の殺気を感じる。
早い。俺の見ていた正面の男は既に残像だったようで、彼の蹴りは俺の頭部へ目がけて向かってきていたのだ。
そもそも気配を消せる訓練を受けている上に、火属性魔法を上手く変化させた高速の移動歩法。
魔王軍幹部にも引けを取らないほどの実力は、1秒ごとに俺の神経を興奮させていた。
【ガキィイン!!】
俺は何とか刀で蹴りを防ぐ。
だがそこで攻撃は止まることはなく、刀に乗せた足を軸にして、さらに反対の足で再び強力な蹴りを繰り出してきた!
【ガキィイイイイン!!】
先ほどよりも強力な蹴りは、俺の体を数メートル後ろへ弾き飛ばすには十分だった。刀で防いだとは言え、久しぶりの衝撃はシッカリと手を痺れさせている。
「全く、理解できませんねロードライツさん。それほどの力がありながら、なぜあんな矮小な存在を守ろうとするのですか!?」
「……アルマのことか?」
「えぇ。アナタほどの実力があれば、もっと大きなことに目を向けるべきでしょう!?捨てるべき社会のゴミに気を使っている時間など、果てしなくムダだと言うことが理解できないのですか!?」
そして男は刃物5本を宙に投げ、そのまま足に魔力を込め始めた。
「紅魔の息吹!!」
そして足に纏った火属性の攻撃魔法で、刃物を勢いよく蹴り飛ばしてきた!
その火も引火した5本の刃物は、とてつもないスピードで俺に向かってきている。
「なぜ、なぜアルマを助けるのだ!?」
それと同時に質問を投げかけてくる男。
攻撃するのか質問するのか、どちらかに統一して欲しいところだが……。
【キィンキィンキィイン!!】
とりあえず刀で攻撃を全て弾いた俺は、彼の質問に答えることにした。
「彼女が……アルマが、勇者のことをカッコいいって言ってくれたからかもしれないな」
「少女の言葉を真に受けるなんて、気色が悪いですね」
「あぁ、同感だ」
俺は魔力を刀に込め、久しぶりの感触を思い出していた。
————————
最初は俺の質問を理解できていない様子のアルマだったが、俺は彼女の右目から流れた落ちた涙を答えとして受け取った。
「未練の無い人間に、涙は似合わないよ」
そして俺はアルマの横に立てかけてあった刀を手に取り、ゆっくりと部屋を後にするのだった。
◇
「は、ははぁ……さすがは”天恵のロードライツ”と呼ばれるだけありますね。10年も戦闘から遠ざかっていると聞いていましたが、たった数秒で感覚を取り戻しているように見える」
「天恵か。俺にとってはただの災いみたいなモノだよ」
俺は久しぶりに握った愛刀の感触を確かめつつ、家の外に吹き飛ばした男との距離を詰めていく。
やはり俺の予想通り刃物の毒は効いておらず、記憶忘却系の魔法も発動はしていないようだ。まあ自分の武器で死ぬようなマヌケが、あの名門暗殺家にいるはずもないか。
「すまないが、君のアルマ暗殺は止めさせてもらう。ここまで巻き込まれた以上、部外者ではいられないんでね」
「ふん、一体あの女に何を吹き込まれたんでしょうねぇ……。まさか偉大な勇者様が、あんな出来損ないを守るなんて予想外ですよ」
男はそう言いつつも、既に回復魔法によって肩の傷も治しきっていた。
そもそも回復魔法だって、誰でも使えるような簡単な代物では無い。やはり相当に恵まれた才能の持ち主のようだ。
「もうここまでの状況になってしまっては、暗殺の痕跡もクソもありませんね。相手があのロードライツとなれば尚更……本気で戦うしかありませんからっ!」
そう言うと男は血の染みついた黒いジャケットを脱ぎ捨て、白いカッターシャツに無数に仕込まれた刃物を露わにしていた。
だが俺は刃物よりも、彼の”スピード”と”脚力”に警戒している。
あんな狭い部屋の中でも、繊細かつ大胆な高速移動ができる強靭な足。アレを警戒しない方がバカだ。
「行きますよ……?まぁもう行ってるんですけど」
刹那、俺は背後から突然の殺気を感じる。
早い。俺の見ていた正面の男は既に残像だったようで、彼の蹴りは俺の頭部へ目がけて向かってきていたのだ。
そもそも気配を消せる訓練を受けている上に、火属性魔法を上手く変化させた高速の移動歩法。
魔王軍幹部にも引けを取らないほどの実力は、1秒ごとに俺の神経を興奮させていた。
【ガキィイン!!】
俺は何とか刀で蹴りを防ぐ。
だがそこで攻撃は止まることはなく、刀に乗せた足を軸にして、さらに反対の足で再び強力な蹴りを繰り出してきた!
【ガキィイイイイン!!】
先ほどよりも強力な蹴りは、俺の体を数メートル後ろへ弾き飛ばすには十分だった。刀で防いだとは言え、久しぶりの衝撃はシッカリと手を痺れさせている。
「全く、理解できませんねロードライツさん。それほどの力がありながら、なぜあんな矮小な存在を守ろうとするのですか!?」
「……アルマのことか?」
「えぇ。アナタほどの実力があれば、もっと大きなことに目を向けるべきでしょう!?捨てるべき社会のゴミに気を使っている時間など、果てしなくムダだと言うことが理解できないのですか!?」
そして男は刃物5本を宙に投げ、そのまま足に魔力を込め始めた。
「紅魔の息吹!!」
そして足に纏った火属性の攻撃魔法で、刃物を勢いよく蹴り飛ばしてきた!
その火も引火した5本の刃物は、とてつもないスピードで俺に向かってきている。
「なぜ、なぜアルマを助けるのだ!?」
それと同時に質問を投げかけてくる男。
攻撃するのか質問するのか、どちらかに統一して欲しいところだが……。
【キィンキィンキィイン!!】
とりあえず刀で攻撃を全て弾いた俺は、彼の質問に答えることにした。
「彼女が……アルマが、勇者のことをカッコいいって言ってくれたからかもしれないな」
「少女の言葉を真に受けるなんて、気色が悪いですね」
「あぁ、同感だ」
俺は魔力を刀に込め、久しぶりの感触を思い出していた。
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