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北城市記録会 1年編

第19走 ミーティング

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 日が沈むのも遅くなって来た。

 いよいよ明日に北城市記録会を控えるキタ高陸上部は、練習終わりの全体ミーティングを行なっていた。
 記録会や大会に向けての注意事項や目的意識を共有するための、大切な時間である。

 グラウンドの長イスに座る吉田先生を真ん中にして、両サイドに主将の隼人と美月が座る。
 そしてその3人と向かい合うようにして、残りの部員は体育座りをしながら話を聞くのだ。

「じゃあ、明日の北城市記録会のミーティングを始めます」

 隼人の言葉に、全員が”はい!”と返事をする。
 ここからは明日の記録会の概要や開場時間、集合時間などについて確認していく時間だ。

 慣れた2、3年にとっては再確認の退屈な時間だが、初ミーティングを受ける1年生にはまだ緊張感も残っている。
 そのせいかいつもよりピンと背筋も伸びているように見えた。

「……以上です。じゃあ如月から荷物の説明お願いします」

 そして隼人からバトンを受けた美月は、明日学校から持っていく荷物についての説明と、その荷物を持っていく人の役割分担を始めた。
 ちなみにキタ高陸上は、他の学校と同様に1年生が荷物運びになるのが伝統だ。
 人数の少ない2年生からは、ようやく荷物運びの苦しみから解放された嬉しさが伝わってくる。

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 そして荷物の件が終わると、最後に隼人と美月が明日に向けての意気込みを語り始めた。

 3年生にとっては、インハイ予選前の大事な調整記録会だ。
 緊張感もある中、隼人は堂々と語り始める。

「いよいよ明日は市予選前の最後の記録会です。特に3年にとっては高校最後の記録会になると思います。だけど変な緊張感は持たず、楽しむことを忘れず記録を出せる様に頑張りましょう!
 逆に1年生にとっては高校生活最初の記録会になります。自分の力をアピールできる絶好のチャンスだから、頑張ってください!そして全員ケガだけはしないように!楽しみながら市予選に繋げましょう。以上です!」

 そして隼人が話し終わったのを確認したのち、美月もゆっくりと口を開く。

「今日の練習お疲れ様でした。新しい部員達が入ってきて初めての試合ですね。とてもフレッシュな気持ちで臨めるので、みんなも良い記録を出すことができれば嬉しいです。1年生も分からない事があればいつでも先輩に確認して下さいね。以上です。では先生お願いします」

 そう言って美月は顧問の吉田先生に頭を下げる。

「えー、みなさんお疲れさんですねっ。練習見てましたが、明るい中にもしっかりとした団結感を感じました。さて、あくまで来週の市予選からが本番だからね。明日の記録会で、不安を全て無くせるようにしとくようにね。えー、そして1年生は失うものは無いから。緊張せず、大きくやりなさい。良い記録期待してますね、以上」

(大きくやりなさい……?)
(大きくやるってどう言う事だろう)
(今日は5回語尾に”ね”て言ったな。いや、6回かも)

 先輩部員達は、心の中で様々な感想を思い浮かべている……。

 それはそれとして、ミーティングの最後はお決まりの”円陣”だ。
 いつも通りの声出しで、今日という日を締めくくるのだ。

「キタコーーーーーファイ!!!!!」
「「「オオォ!!!!!!!!」」」

 オレンジ色に染まるグラウンドに、キタ高陸上部の声が力強く響いていた。

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