Sprint・High!(スプリント・ハイ!)

成瀬リヅ

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北城市地区予選 準備編

第36走 望まない再会

 結城のスパイク選びが終わり、5人は共に店を後にしようとしていた。

「市予選は次の土曜からでしょ?休みだし、応援しに行ってあげるわよ!」

 一二三は1階に降りていく5人に向かって、右手を大きく挙げながら伝えた。
 それに対し由佳と愛は大きく頭を下げ、男3人は軽く会釈をしている。



「でもまさか、結城が一二三さんと知り合いだったとはな。今日はそれが一番衝撃だったな」

 康太は階段を降りた後、これまでに起こった事を振り返り始めた。
 結城も”たまたま知り合っただけ”と言いながら歩いているが、それでも周りの人間の興味は尽きない。
 由佳も時間が経つごとに結城への嫉妬心が芽生え始めているほどだった。

 だがそんな様々な感情を抱える一行が、とうとう店を出て大通りに入ろうとした……その時だった。

【スタスタ・・・】

 結城達の前から、1人の中年男性が歩いて来た。
 その男性はいくつか靴の箱を持っており、HOPの店内に運んでいくようだ。

 それを見た5人も当然道を空け、お互いが通れるだけの距離を空ける。
 だが何故か、結城だけはその場に立ち止まっていた。

「結城?」

 康太は結城がジャマになっている事に気付き、スグに声をかける。
 だが名前を呼ばれた結城はというと、横切ろうとした男の顔を見つめている。
 そしてどうやら”男の方も”結城に気付き、ハッとして立ち止まるのだった。

「……もしかして早馬、知り合いか?」

 何かを察した一縷が問いかける。
 だがそれに対して反応したのは、まさかの中年の男の方だった。

「早馬……か?」

 男はポカンとした表情で、ただ一言だけ呟いた。
 そして男の表情を見た結城も、体の底から湧き上がる”何か”を感じ取っていた。
 そしてスグに”何か”の正体を結城は理解する。

 【怒り】だ。

 腹の底から湧き上がる、赤黒くドロッとした芯からの【怒り】だった。

「どうしたんだ結城?」

「…………」

 康太の気遣いに一言も返さず、結城は男から逃げるようにその場を後にした。
 そして信じられないスピードで商店街を歩き始めていたのだ。

「おおい早馬!?あの人ほっといていいのか?なんか話したそうにしてたぞ?」

 一縷は早足で結城に追いつき、彼の左肩を掴みながら引き留める。
 そのタイミングでようやく他の3人も結城に追いついた。

「ハァ、ハァ……全く、急に逃げ出さないでよ。で、さっきの人は誰?」

 追い付いて早々、由佳はみんなが聞きたかった事を直球で聞いた。
 そしてその当然の疑問に対し、結城も少し我に帰った様子で口を開く。

「あ……ゴメンみんな、完全にボーッとしてた。アイツは……」

 そして結城は大きく息を吸い、そして言い切った。


「中学時代の顧問だ」


 キタ高の部員達は、結城が中学時代に受けていた顧問からのキツイ指導は入部前に聞いていた。
 ”そのせいでケガをしてしまった事”も含めてである。

「なんでアイツがここに……」

 結城は考えたくも無い、思い出したくも無い人間と鉢合わせてしまった事で、完全に脳がパニックを起こしていたのだ。
 何度も髪や顔を触っては、大きなため息を付いている。

(こりゃ結城にとって相当なトラウマみたいだな。とにかく気をそらさせないと……!)

 そう考えた康太は、まるで何もなかったかのように声のトーンを上げ、そして4人にある提案を投げかけた。

「なんか珍しい事もあるんだな!それよりさ、せっかく都会来たんだしラウワン行かね?ボーリングしようぜ!!嫌なら他の所でもOK」

 そして康太は一縷に目線を送る。

「そ、そうだな。俺はラウワンでも買い物でもなんでも良いよ!」

「私もボーリングやりたい」
「わ、私も!!」

 気付けば女子2人も何かを察したのか、結城の気をそらす努力をし始めていた。
 そして結城も、ここでようやく雰囲気が悪くなりかけていた事に気付く。

「あ!なんかゴメン!そ、そうだな、遊びに行こう!!マジでゴメン」

 そして5人は商店街を抜け、残された時間を娯楽に使うのだった。

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