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第6章:喫茶店での対話
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近くの落ち着いた喫茶店の奥の席。コーヒーの湯気がゆらゆらと立ち上る。
母はコーヒーカップに手を添えたまま、ほとんど動かない。
顔は蒼白で、視線はテーブルの木目を必死に追っている。
これまでアプリで軽妙にやり取りしてきた「ケイコ」の面影はない。
そこにいるのは、重大な過ちを犯し、息子に現場を押さえられた、ただの母親だった。
長い沈黙の後、僕が口を開いた。
「びっくりしたよ。まさか、マッチングしたのが母さんだなんて…偶然って、あるんだね。」
母はゆっくりと顔を上げた。目には涙が光っていた。
「…なんで、そんなアプリを?」声はかすれていた。
「彼女がいるのに、ふとした拍子に登録しちゃってさ。でも、母さんとメッセージ交換するうちに、これって本当にやばいことだって、すごく反省してるんだ。」
僕はわざとらしくないように、そっと息をついた。
「このアプリで出会う人って、みんなそうらしいよ。複数の人とやり取りして、その中から気が合う人を選んで…。客観的に見れば、母さんだって、他に気になる人がいてもおかしくないよね。」
母の目が大きく見開かれた。否定したいが、否定できない真実を突きつけられたようだった。
「でも」僕はまっすぐに母の目を見た。
「もし、ほかに誰かがいたとしても、やめてほしい。僕も、今日をきっかけにこのアプリはやめる。母さんも、一緒にやめよう。父さんも、妹も、何も知らない。このまま、秘密にしよう。」
「良妻賢母」という仮面の下で、寂しさや承認欲求に苛まれ、危険なゲームに手を出してしまった女性。そして、その母親を、手段を選ばずに止めようとする息子。
「…ごめんなさい」
母の声は崩れ、大粒の涙がテーブルを伝った。
「ただ…ただ、褒められたいだけだったの。誰かに、女として見られたいだけだった…」
彼女は嗚咽を漏らした。
その姿は、もはや「ケイコ」ではなく、ただ弱く、傷ついた「君枝」そのものだった。
(続く)
母はコーヒーカップに手を添えたまま、ほとんど動かない。
顔は蒼白で、視線はテーブルの木目を必死に追っている。
これまでアプリで軽妙にやり取りしてきた「ケイコ」の面影はない。
そこにいるのは、重大な過ちを犯し、息子に現場を押さえられた、ただの母親だった。
長い沈黙の後、僕が口を開いた。
「びっくりしたよ。まさか、マッチングしたのが母さんだなんて…偶然って、あるんだね。」
母はゆっくりと顔を上げた。目には涙が光っていた。
「…なんで、そんなアプリを?」声はかすれていた。
「彼女がいるのに、ふとした拍子に登録しちゃってさ。でも、母さんとメッセージ交換するうちに、これって本当にやばいことだって、すごく反省してるんだ。」
僕はわざとらしくないように、そっと息をついた。
「このアプリで出会う人って、みんなそうらしいよ。複数の人とやり取りして、その中から気が合う人を選んで…。客観的に見れば、母さんだって、他に気になる人がいてもおかしくないよね。」
母の目が大きく見開かれた。否定したいが、否定できない真実を突きつけられたようだった。
「でも」僕はまっすぐに母の目を見た。
「もし、ほかに誰かがいたとしても、やめてほしい。僕も、今日をきっかけにこのアプリはやめる。母さんも、一緒にやめよう。父さんも、妹も、何も知らない。このまま、秘密にしよう。」
「良妻賢母」という仮面の下で、寂しさや承認欲求に苛まれ、危険なゲームに手を出してしまった女性。そして、その母親を、手段を選ばずに止めようとする息子。
「…ごめんなさい」
母の声は崩れ、大粒の涙がテーブルを伝った。
「ただ…ただ、褒められたいだけだったの。誰かに、女として見られたいだけだった…」
彼女は嗚咽を漏らした。
その姿は、もはや「ケイコ」ではなく、ただ弱く、傷ついた「君枝」そのものだった。
(続く)
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