母の黒いブーツ 〜熟女AV女優・彩子 その淫らな誇り〜

MisakiNonagase

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第41章:福岡、狂乱のフィナーレ

福岡、中洲。劇場の入り口には「録音・録画、一切のメモ書き禁止」という古びた看板が立っているだけだった。

現代的な金属探知機などない。だが、場内を巡回する黒服たちの威圧的な視線が、観客にスマートフォンの電源を切らせ、鞄の奥底へと押し込めさせていた。記録に残せない、外へは一歩も漏らさない。その閉塞的な静寂が、男たちの理性をじわじわと摩耗させていく。

​麻紀は楽屋で、最後の一足——雪のように眩い、新品の白いロングブーツを履き終えた。

​「彩子さん、今日の『まな板』は、お客様への感謝を形にする究極の演出です。あなたはただ、まな板の上の鯉のように、身を委ねていればいい」

​主催者の言葉に、麻紀は穏やかに微笑んだ。

「ええ。皆様の熱意に、私のすべてでお応えしますわ」

​彼女は知らない。今から行われることが、数十年前に撲滅された「本番ショー」という名の違法行為であることを。多くのAV出演を経て、彼女の境界線はすでに、虚構と現実の区別がつかないほどに溶け落ちていた。

​幕が上がる。ステージ中央には、一畳ほどの真っ白なマットが敷かれていた。

麻紀は白いブーツの踵を高く鳴らして登場し、真紅のドレスを静かに脱ぎ捨てた。スポットライトを浴びた還暦の肉体は、神々しいまでの気品を保ちながら、白いマットの上に横たわる。

​「……さあ、こちらへ」

​彼女が優しく手を差し伸べると、主催者の合図で、最前列の男たちが次々と壇上へ吸い寄せられていった。

​そこからは、阿鼻叫喚の狂乱だった。本来、舞台と客席を隔てるはずの境界線が消失する。記録する手段を持たない男たちは、後顧の憂いなく本能を剥き出しにした。男たちの手が、口が、還暦を迎えた「聖母」の肉体に群がる。麻紀は、それが「特別な演出」だと信じ込み、男たちの欲望を、我が子を慈しむような表情で受け入れていた。

​「(……ああ、私、今……みんなの母親になっているのね……)」

​白いブーツだけを履いた脚が、見知らぬ男たちの腰に絡みつく。AVの撮影現場とは違う、生々しい獣の匂いと、観客たちの地鳴りのような咆哮。それは、人間の本能だけを抽出した「まな板ショー」の再臨だった。

​客席の最後列で、京介はその光景を網膜に焼き付けていた。カメラもスマホも使えないこの闇の中で、母が、大勢の男たちに文字通り貪り尽くされている。

その絶頂の最中に、劇場の四方の扉が、凄まじい音を立てて蹴破られた。

​「動かないでください! 福岡県警です! 全員そのまま動かないでください!」

​静まり返った場内に、冷徹な敬語の怒号が響き渡った。同時に、眩いばかりの作業灯が点灯し、劇場を白日の下に晒した。逃げ場のない密室。男たちの悲鳴。

ステージの上では、白いブーツを履いたまま、数人の男たちに組み敷かれた無防備な麻紀が、暴力的な光の中に放り出されていた。

​「……え? これも……演出なの……?」

​警察官たちは真っ先に主催者の男を取り押さえる。「公然わいせつ罪の組織的加担の疑いがあります。署までご同行願います」という事務的な声が響く中、一人の刑事が、震える麻紀の肩に警察の支給した毛布を無造作に掛けた。

​「あなた、名前は。……中村彩子、いや、本名は柿木麻紀さんですね。主催者の強要があったのではありませんか? 署で詳しくお話を伺います。立ってください」

​「柿木麻紀」という、本名で呼ばれた瞬間、彼女は魔法が解けたように我に返った。

足元に残ったのは、汚れ一つないはずだったのに、今は男たちの脂で薄汚れた白いロングブーツ。​呆然とする麻紀の視界に、こちらを真っ直ぐに見つめる京介の姿が映った。

京介は動かない。助けにも来ない。ただ、悲しげで、それでいて陶酔しきったような瞳で、警察官に誘導される母を見つめていた。

​還暦のレジェンド、中村彩子。還暦熟女のツアー舞台は、警察車両のサイレンが鳴り響く中で、幕を閉じた。
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