母の黒いブーツ 〜熟女AV女優・彩子 その淫らな誇り〜

MisakiNonagase

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エピローグ:刻印

麻紀がこの世を去ってから、一年が経とうとしていた。

​都内のマンションの一室は、かつてと変わらぬ清潔さと静寂を保っている。京介は変わらず会社員として働き、周囲からは「若くして母親を亡くした、親孝行で独り身の男」として、同情と信頼を寄せられていた。​だが、彼の部屋の奥にある、生前は麻紀が使っていた寝室だけは、時間が凍りついたかのように当時のまま残されている。

​京介は仕事から帰ると、その部屋のクローゼットを開けるのが日課だった。

そこには、麻紀が人生の最期まで手入れを欠かさなかった、数々のロングブーツが並んでいる。還暦ツアーで履いた白、日常で愛用したキャメル、そして無人島で泥にまみれたあの漆黒。

​彼はその中の一足を手に取り、滑らかな革の質感を指先でなぞる。耳を澄ませば、今でも聞こえてくる。

あの夜、自分の腕の中で「幸せね」と囁き、絶頂の果てに魂を解き放った母の、細い吐息が。

​世間では、いまだに「中村彩子」の不在を惜しむ声が絶えない。

動画サイトのコメント欄には、彼女の復帰を待ち望む言葉や、どこかで静かに暮らしていることを願うマニアたちの書き込みが、今この瞬間も増え続けている。

だが、その渇望の声が大きければ大きいほど、京介の心には暗い悦びが満ちていく。

​「……誰も、知らないんだ」

​世界中の男たちが画面の中の残像を追いかけている間、彼はその「本物」の最期を独占し、その温もりが冷え切るまで抱きしめ続けていた。

彼女が流した最後の涙も、最後に漏らした喘ぎも、そして最後にその胎内に受け入れた「種」も。すべては、京介という器の中にだけ永久に保管されている。

​京介は、麻紀の形見であるブーツを抱いたまま、窓の外の夜景を眺める。

都会の喧騒の中、誰にも気づかれぬまま、母子相姦を超えた「究極の事実婚」は、死という境界線さえも越えて完成された。

​彼が死ぬその日まで、柿木麻紀は彼の中で生き続ける。誰にも共有されない、一滴の不純物もない、完璧な孤独と愛の記録として。

​クローゼットを閉じる音が、静かな部屋に小さく響いた。

それは、一人の伝説を永遠に封印する、静かな葬列の終わりのようだった。
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