名器と呼ばれて…

MisakiNonagase

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第23章:三日間の陥落、従順な果実

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謙介が仕事へ出かけてから、康助が二階の自室から下りてくるまでのわずかな時間。それが、加代子にとっての「猶予」だった。しかし、階段を軋ませる足音が聞こえるたび、彼女の心臓は跳ね、脚の付け根が熱く疼くのを止められなかった。

 「おはよう、母さん。……いや、『加代子』って呼んだ方がいいかな。今は二人きりだし」

 ダイニングテーブルに座る康助の目は、昨日の余韻を愉しむように加代子の全身をなめる。加代子は俯き、震える手でコーヒーを淹れた。昨日、息子にその「名器」の深淵を暴かれてから、彼女の中の母親としての矜持は、砂の城のように崩れ去っていた。

「……康助、お願い。そんなふうに呼ばないで」 「いいじゃないか。あいつらもそう呼んでるんだろ? 和文とか、あのガキとか。彼らが味わったものを、俺が知らないのは不公平だ」

 康助は立ち上がり、背後から加代子の腰を抱き寄せた。エプロン越しに伝わる息子の体温。それは昨日よりも力強く、支配的だった。

「あと三日。俺はあんたを、誰にも渡したくないほどに壊したい。……あいつらに『授ける』前に、俺の刻印をしっかり焼き付けておかないとな」

 それからの三日間、家の中は密やかな、しかし凄惨なまでの情愛に満たされた。  リビングのソファ、昼下がりの寝室、そして謙介の面影が残る書斎。康助は、母が隠し持っていた「名器」としてのあらゆる反応を、貪るように引き出していった。加代子は最初こそ抵抗し、涙を流したが、康助が自分との「血の繋がり」を武器に攻め立てるたび、他の男たちでは決して到達できなかった絶頂の果てへと連れて行かれた。

 「ダメ……ダメよ……っ、康助……」  「口ではそう言っても、ここはこんなに俺を欲しがってる。……あいつらには、こんな顔見せてないんだろ?」

 康助は執拗だった。彼は加代子のスマホを取り上げ、目の前で男たちからのメッセージを確認させ、それに対する「感想」や「拒絶」を自分の指示通りに送らせた。  和文には「もっと激しくされたい」と、大輝には「お姉さんを忘れないで」と。康助の筋書き通りに踊らされる加代子は、自分が息子の手の中で、最高級の「玩具」へと作り替えられていく恐怖と快感に溺れていった。

 三日目の夜、再赴任前夜の夕食。  謙介は、目の前で甲斐甲斐しく立ち働く妻の変化に、微かな違和感を覚えていた。

「加代子、なんだか最近、雰囲気が変わったな。……いや、若返ったというか、毒気が抜けたというか」

 謙介の言葉に、加代子の手が止まる。康助は平然とステーキを口に運び、父に微笑みかけた。

「きっと、俺がしばらく帰ってこないから、父さんに甘えたいんじゃない? なあ、母さん」

 康助の足が、テーブルの下で加代子の太ももをゆっくりと撫で上げる。加代子は顔を赤らめ、必死に平静を装いながら「そうね」とだけ答えた。  自分の腹を痛めて産んだ息子に、夫の目の前で蹂躙されている。その事実が、加代子の名器をさらに熱く、硬く締め付けた。

 (……私は、もう戻れない)

 半年後の再会を約束させられ、魂まで奪われた三日間。  加代子は、明日から再び始まる「男たちとの日常」が、もはや康助への献上品を育てるための時間でしかないことを、深く、絶望的に理解していた。
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